最強無双黒歴史全盛り転生!?~俺が作った主人公たちの設定を全部持った状態で転生しただと!?~

三国洋田

第1話 目が覚めたら異常事態

「……ダァンサービオ、ダァンサービオ!」


 聞き覚えのない声が聞こえる。


「ダァンサービオ! 起きなさい! 朝よっ!」


 朝?

 なら、起きるとしようか。


 俺は目を開けた。



 すると、目の前に変態がいた。


 顔の部分に『母』という白い文字が書いてある、人間の肝臓を模したと思われるマスクをかぶっている。

 頭部が被り物で完全に覆われているため、顔がまったく見えない。

 中央に『玉』という黒い文字が書いてあるピンクのエプロン、グレーのスウェット、ブラックのロングパンツを身に着けている。

 体型は中肉中背、平均的な日本の成人女性といった感じ。


 このような姿をしている。


 な、なんだこいつは!?

 なんでそんな格好をしているんだ!?


 もしかして、肝っ玉母さんと呼ばれたいのか!?


「やっと起きたの、ダァンサービオ!」


 肝っ玉母さんと呼ばれたいと思われる変態が、俺の方を向いてそう言った。


 どうやら俺に話しかけているようだ。


「ダ、ダァンサービオ?」


「何? まだ寝ぼけているの!?」


「いや、その…… ダァンサービオって、なんでしょうか?」


「はぁっ!? 何寝ぼけているのっ!? 自分の名前も忘れたのっ!?」


 自分の名前!?


 何を言っているんだ!?


 俺の名前は繰栄くりえい 多一たいちだぞ!?


 やはりこいつは頭がおかしいのか!?


 ……ん?

 ダァンサービオ?


 聞き覚えがあるような……


 なんだったっけ?


 うーむ、思い出せないなぁ……


「まったくこの子は寝ぼけちゃって! ほら、顔でも洗ってらっしゃい! あとご飯できているからね!」


「え、あ、ああ、はい……」


 肝っ玉母さんが部屋から出て行った。



 ええと、なんだこれは?

 いったいどうなっているんだ?


「くっくっくっくっくっ、なかなか無様な姿であるな」


 ん?

 聞き覚えのない声が聞こえてきたぞ?


 それもすぐ近くからだ。


 誰かいるのか?


 俺は周囲を見回してみた。


 あれ?

 ここ、どこだ?


 俺の部屋ではないな。


 十畳くらいの広さの洋室のようだ。


 周囲には、ベッド、タンス、閉じられた紺色のカーテン、机と椅子、片開のドアがある。


 天井には、電灯もあるようだ。


 って、今そこはどうでもいいか。


 それよりも、さっきの声の主はどこだ?


 この部屋には、俺以外いないみたいだぞ!?


 どういうことなんだ!?


 ま、まさか幽霊だったりするのか!?


「聖なる閃光の勇者ダァンサービオよ、なぜ返事をしないのであるか? まだ寝ぼけているのであるか?」


「せ、聖なる閃光の勇者!? なんだそれは!?」


「何を言っているのであるか? 貴様は人間どもから、そう呼ばれているのであろう?」


「そうだったの!?」


 なんだその肩書きは!?

 かなりカッコワルイぞ!?


「いや、そんな呼ばれ方をした覚えはないのだが…… それに俺はダァンサービオではないと思うのだが……」


「なんであるか? やはりまだ寝ぼけているのであるか? 貴様はダァンサービオに決まっているのである」


「なぜそう言い切るんだよ?」


「貴様の左目に、我が封印されているからに決まっているのである」


「えっ!? い、今なんて言ったんだ!?」


「左目に封印されていると言ったのである!」


「な、なんだそりゃぁっ!? 意味が分からんぞ!?」


「何が分からないのであるか!? 我の説明が悪いのであるか!?」


「え、ええと、どうなんだろう?」


 なんだこの状況は!?

 訳が分からなさすぎるぞ!?


 いや、待てよ……

 なんか引っかかるものがあるような……


 うーむ、なんだったかな?


 そういえば、こいつは誰だ?


 それが分かれば思い出せるのかな?


 聞いてみようか。


「あの、あんたの名前はなんて言うんだ?」


「我が名すらも忘れたというのであるか!?」


「えっ、あ、うん、非常に申し訳ないのだが、思い出せないんだ……」


「なんという体たらくであるか!? 我は『魔人ゼドツベスドーザ』であるぞ!? 貴様が我を倒し、自身の体に封印した存在であるぞ!?」


「魔人!? 魔人ってなんだ!?」


「そんなことまで忘れたのであるか!? 魔人とは、貴様ら人間を超越した存在である!」


「そ、そうだったのか……」


 なんかすごそうだな。


「それで、我の名を聞いて思い出すことはないのであるか!?」


「えっ、うーん、そういえば、どこかで聞いたような覚えがあるような気がするなぁ……」


 魔人ゼドツベスドーザ……


 なんだっけなぁ?



「やかましいじゃしー……」


 ん?

 また聞き覚えのない声が聞こえてきたぞ。


「むっ、善神イイカーミの神使ダァンサービオ、起きていたのかじゃしー?」


「ぜ、善神イイカーミ!? ナニソレ!?」


 なんか雑な名前だな……


 ん?

 この名前にも聞き覚えがあるような……


 なんだったかな?


「むっ、まだ寝ぼけておるのかじゃしー?」


「それは…… どうなんだろうな? それで善神イイカーミってなんだよ?」


「何を言っておるのだじゃしー? 自分が仕えていた神の名を忘れたのかじゃしー?」


「そうだったのか?」


 俺は無宗教だったと思うのだがなぁ。



「ところで、あんた誰だ?」


「わっしまで忘れたのかじゃしー?」


「ああ、申し訳ないが思い出せないんだ。名前を教えてくれるか?」


「わっしは『邪神イネターゼヲーエギ』であるじゃしー」


「じゃ、邪神!? 邪神って、邪な神の邪神なのか!?」


「うむ、その通りじゃしー。って、今更何を言っておるのだじゃしー?」


「いや、その、記憶がおかしくなっているみたいでな……」


「そうなのかじゃしー」


 ん?

 邪神イネターゼヲーエギというのも聞き覚えがある気がする。


 なんだったかな?


 うーん、思い出せないな。


 もっと質問してみるか。


「ところで、あんたはどこにいるんだ?」


「そこまで忘れたのかじゃしー!? ぬしの右手に封じられておるじゃしー!?」


「ええっ!? なんでそんなところに封じられているんだ!?」


「ぬしがやったに決まっているじゃしー!?」


「えっ!? そうだったのか!?」


「そうじゃしー! わっしを倒して、そうしたじゃしー」


「そうなのか?」


「そうじゃしー。そんなことまで忘れるなんてマヌケじゃしー」


 ひどい言われようだな!?



「おや、目が覚めたようですね?」


 ま、また聞き覚えのない声が聞こえてきたぞ!?


「おはようございます。清らかなる水の勇士ダァンサービオよ」


 今度は清らかなる水の勇士!?


 ダァンサービオさんは肩書きがたくさんあるなぁ。


「ええと、誰なのかな?」


「わたくしですよ。わたくし」


「いや、誰だよ?」


「ですから、わたくしですよ。わたくし」


 なんだかオレオレ詐欺みたいだな!?


 いや、今回はわたくしわたくし詐欺なのか!?


 まあ、そんなのどうでもいいか!


「本当に分からないのですか? わたくしは『水の精霊ユオクユープヨ』ですよ?」


「あ~、申し訳ないのだが、分からないんだ。記憶がおかしくなっているみたいでな」


 だが、その名前には、聞き覚えがあるんだよなぁ。


 なんだったかな?


「そ、そんな、ともに『魔王フバリワォーヂーネ』を倒した仲じゃないですか!?」


「そうだったっけ?」


 うーむ、その魔王にも聞き覚えがある気がする。


 なんだっけ?


 思い出せないなぁ。


 もっと質問してみようか。


「ところで、君はどこにいるんだ?」


「何を言っているのですか!? そこまで忘れてしまったのですか!?」


「申し訳ないけど、その通りなんだ……」


「わたくしは魔王との戦いで力を出し尽くしてしまい、回復するまであなたの右足に封印されたのですよ!?」


「そうだったのか!?」


 今度は右足なのかよ!?



「騒がしいでございますね」


 えっ!?

 またまた聞き覚えのない声が聞こえてきたぞ!?


 まだいるのかよ!?


「おや、起きたでございますか。おはようでございます。神聖なるモチョモチョ筋肉ダァンサービオよでございます」


「神聖なるモチョモチョ筋肉!? なんだそれは!?」


「あなたの称号でございますよ」


「ええっ!?」


 なんじゃそりゃぁっ!?


「それはどういう意味なんだ!?」


「どうって、そのままの意味でございますよ?」


「モチョモチョって、なんだよ!?」


「モチョモチョはモチョモチョでございますよ?」


「訳が分からないぞ!?」


「こちらも何が分からないのか分からないでございます」


「だからモチョモチョって、なんなんだよっ!?」


「モチョモチョでございます」


 ああ、もう、なんなんだよっ!?


 って、そんなのどうでもいいか!!


 他の質問をしよう!!



「ところで、あんたは誰なんだ!?」


「わたしは『筋肉の神ナーン・コォツグーシ様の天使ゼダジカ・カカツーヴ』でございますよ。忘れてしまったのでございますか?」


「ああ、ちょっと記憶がおかしくなってしまってな」


 だが、その名前には聞き覚えがあるなぁ。


「そうでございますか。ともに『邪神ビィウワー・ニエクアーダ』と戦った仲だというのにでございますか」


 邪神ビィウワー・ニエクアーダ?


 それも聞き覚えがあるなぁ。


 なんだったか……


 思い出すためにも、もっと質問してみるか。


「ああ、悲しいでございますよ」


「うっ、申し訳ない……」


 心が痛い。

 話題を変えさせてもらおう。



「ところで、君はどこにいるんだ?」


「そこも忘れてしまったのでございますか」


「ああ、すまないな……」


「わたしは邪神との戦いで力を出し尽くしてしまい、回復するまで右の肋骨ろっこつの上から三番目に封印されているのでございますよ」


肋骨ろっこつに!? なんでそこに封印されているんだよ!?」


「それは偶然でございます。なぜかそこになってしまったのでございます」


「そうだったのか」


 まあ、場所はともかく、こいつも俺の体に封印されているのか。


 ん?

 ダァンサービオの体に天使を封印?


 これも覚えがあるなぁ。


 なんか思い出せそう……



 あっ!?

 そうだ!?


 そういえば、昔ゲームか何かにしようと思って作った設定に、そんなものがあったような気がするぞ!?


 他のものも全部そうだったような気がしてきた!?


 いや、でも、それは確かノートに書いただけだよな?


 それなのに、なんでこんなことになっているんだ?


 あ~、訳が分からないぞ!?



「なんかうるせぇナ……」

「なんだか騒がしいでやんすね」

「なんかうるさいっすよ」

「目覚めたのですかりゅん?」

「ダァンサービオ、起きたのまりゅん?」


 えっ!?

 また聞き覚えのない声が聞こえてきたぞ!?


 それも複数!?


 ま、まさかこいつらも、俺の体のどこかに封印されているというのか!?


 俺の体はアパートやマンションじゃないんだぞ!?

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