四日目、昼。『来訪者』

「どうする、トオルを殺るか⁉ だがもしかしたら私利私欲で殺人するのは犯罪なんじゃねーの⁉ あ、親父はどうだ? ワンチャン肉親なら殺しても罪に問われねぇんじゃねーの⁉」

 精神が錯乱したレネィは、自室に引き籠って毛布を目深に被り、延々と意味のない思考を巡らせていた。

 そんな中、停滞を破ったのは、一人の来訪者だった。

「お邪魔するわよ、レネィちゃん。この間作ってもらった道具で感触を掴んだから、私決めたわ。」

「んあぁ? ペレットおばちゃん? どしたん?」

 ペレットは山ほどにもなるチュールの束を机に叩きつけて言った。

「これ見て! 今まで貯めた10万よ! 大規模な事業を始めることにしたから、この間の道具と『これ』を作れる限り、大急ぎでありったけ作って欲しいの。3個セット1千で買い取るわ」

 レネィは新たな道具の設計図を渡され、相変わらず放心していたが、ついに気を取り戻した。

「つまり……たった60セット、180本の道具を作れば生き残れるじゃねーか! やっぱ神は俺と共にあるぜ! つかペレットおばちゃんが神だったのか⁉ やるぜ‼ おばちゃん、3日後に取りに来てくれ!」

 そう言うと、自室にペレットを置いて、荷物を持つと全速力で走り去った。

「……事業に必要なのは、あのスピード感よ。レネィちゃんならやってくれそうな気がするわ」


 レネィは走りながら、計算をしていた。以前『土堀器』を作成した時に使った鉄鉱石の量的には、大体1袋で30本くらいは造れるだろうか。ミネットの子供を助けた時に3袋、自分で採掘した残りが1袋だから、最低でもあと2袋、余裕をもって3袋は欲しい所だった。

「これは早急に何とかしねーと、絶対に間に合わねー」

 次に打つ時間だ。前回は最終的に打ちあがるのに数時間かかっていた。どうあがいても、あと3日弱で180本も打てるわけが無かった。

「……好きじゃねえが、金型しかねぇな。石拾いと、金型造りと、調整が明日昼までだ。それで残り2日で完遂させる」

 それでも間に合うようには思えないが、もう諦めるということはしなかった。死ぬならやるとこまでやって死んでやる、少しでも希望が見えて、そう考えられるようになっていた。

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