復活
「ふぃいゆ~~~……♡」
村に着いたリザリィは、息も荒く、頬を上気させ、恍惚の表情を浮かべていた。極限状態の中、人体の防衛反応を使用してまで体を温め、冷気のクオリアを直接付与することで、快楽を得ることができた。新発見だった。
「はっ! いけない! 人が死にかけてるっていうのに、自分だけ気持ちよくなって、私ったら! ……この行為怖い! 封印しましょ!」
危険な悦楽を封印すると、早速、ガクガクと震える死に体の少女に熱のクオリアを注ぎ込んだ。
しばらくすると、少女の顔は生気を取り戻していき……
「……ふぃ~~……♡」
「温から冷だけでなく、冷から温でも、そうなるんですね~! 人体っておもしろー!」
人生というのは発見の連続だ。リザリィはそう思うと、甦った少女に語りかける。
「とにかく、良かったぁ……調子はどうでしょうか」
「……えふふ♡調子いいよぉ……♡じゅる……ハッ! ……誰⁉」
「私はリザリィです、無事な様でよかったです」
リザリィはにっこりとして頷くと、ようやく状況が呑み込めてきたらしい少女が続ける。
「リザリィさん、自己紹介が遅れました、私はノワール・アールグレイと申します! 詳しくは言えませんが、世界の平和を守るために戦ってるんだ!」
「へぇ~、世界の平和を……え、すごいですね!」
気宇壮大なことを言われて、一瞬だけ気圧されるが、リザリィも世界の異変について、憂いている点は同じだった。
「外から来たんですよね! 何故ここに来たんですか? どうやってここに来たんですか?」
質問を雪崩のように投げかけるリザリィ。何もかもが新鮮で、興奮していた。
「私達ね、魔物とか悪い奴とかと戦ってると怪我が絶えなくてさ。活動に支障が出始めているから、あなたたちの不思議な力を借りたくて来たんだ。」
「ここに来るのは苦労したよ! 見たことのない冷たい白い塊とか、こんな寒いなんて知らなかったから、途中で倒れちゃった……」
異常だと思った。ノースポールにクオリスが住むという情報や、クオリスが怪我や病気などを直ちに治せるという情報。それらは門外不出のはずだし、この極寒の僻地に辿り着く者など居ないことは、歴史が証明していたからだ。
また、行き倒れていたとはいえ身ひとつで、この格好で、クルム森林まで辿り着いたノワールについても同様に感じた。
同時に「この異常な人なら私を連れ出してくれるかも……」と思わせた。
「すごいです!是非、一緒に戦いたいです! ここから私を連れ出し……」
「ならん! お前は、じきに酋長となる運命。外界に出すことはできん! 旅の者、命が助かったんならもういいだろう! 早く出て行ってくれ!」
不穏な空気を察した長が、急に話に割り込んできて、リザリィの溜め息を誘発する。
「そうは言っても、見知らぬおじいさん。ここだって今は大丈夫だけど、このままだと世界の全てが危ないんだよ。お願いします」
ノワールはぺこりと頭を下げると続けた。
「この瞬間だって、ここの外の世界では『魔族』って奴らが暗躍してる。今は私達が食い止めてるけど、もしも誰かが動けなくなる大ケガをしたら……一気に不利になると思う。だから、あなた達の力が必要なんです。協力してください、お願いします。」
言葉使いは滅茶苦茶だが、ノワールなりに出来得る限りの丁寧なお願いをした。
「……いくら言われても同じじゃ、世界が滅びる運命だと言うならば、我々クオリスは運命に抗えない。諦めてくれ。」
「……」
リザリィは下を向いて押し黙っていた。
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