第26話 離したくない理由は話したくない
「よりにもよって、こんな目出度い日に」
珍しく怒りを露わにするプラプリ。
「いや丁度良かったぞ」
俺のセリフの意味が分からないと言った様子のプラプリ。
「攻撃魔法の使い手はいるか?」
多いに越した事は無い。
「攻撃魔法?・・・一人だけ居るには居るんだけど
意味が無い、弓の方が飛距離も破壊力も上なんだ」
「バング相手に限っては別だあいつら魔法が弱点なんだ」
「どうしてそんな事が言えるんだい」
聞いた事が無いのだろう
にわかには信じられないと言った表情になるプラプリ。
「ここに来る途中で試した。既に一匹
片づけてるんだ。てなワケで俺達に任せろ。
念の為、その使い手も呼んで来い」
俺達がここを発った後はそいつが頼りになる。
ここで経験しておいてもらおう。
「君ってやつは、本当に・・・。」
天を仰ぐ様な仕草でクラクラし始めるプラプリ
「ベアーマン襲撃、里の崩壊そしてバング。
ずっと助けられっぱなしで何も恩返し出来て無いよ。」
「イイんじゃねぇの救世主なんだろ」
俺達のやり取りにヤキモキが限界に来た様子の伝令。
「里まで、まだ距離はありますが、お急ぎを!」
その通りだ。
俺達は伝令について大広間のある建物まで移動した。
入り口に近いテーブル
せっかく出来た料理を一旦除けて伝令は地図を広げた。
「今、この位置です。」
俺達が通って来た獣道ではなく
馬車も通行出来る道沿いだ。
この道は北側の港町ヒタイングに繋がっているそうだ。
海か
そういえば行って無かったなベレンとは反対方向だ。
うーん
いつか行こう。
「里を目指しているの間違いないのか」
プラプリは念のための確認を入れる。
来なければそれに越した事は無い。
「道どおりに移動しております
このままですと、間違いなく里まで」
この前会ったやつもそうだった。
バングは道を丁寧に歩く習性でもあるのか
知的生命体をターゲットにするなら
なるほど、道を歩いていれば出会うだろうな。
「里長!呼び出しに応じ馳せ参じました」
そう言いながら一人の女性が入って来た。
俺はその姿を確認すると
狂喜乱舞した。
エルフだ。
いや
エルフって言っても今までの
性の対象にならないこの世界のエルフでは無く
オークに蹂躙されるタイプの
いわゆる普通のエルフだ。
おっぱいがあるぞ。
これは例のダークエルフさんってやつか
より動物的な変化を遂げたエルフの亜種
会いたかったぞ。
わーい、やっぱりイイぞ。
体格の細さと不釣り合いな巨乳だ。
弓引くとき邪魔になりませんか。
「アモン。彼女が例の攻撃魔法の使い手だ」
プラプリが紹介してくれた。
「プルと申します。救世主様の
足手まといにならぬよう尽力致す所存にて」
なんか変な風に堅い人だな。
「前任の長は・・・その・・・」
ダークエルフを快く思っていなかった。
差別とかその辺は大丈夫なのか。
「見ての通り、彼女はダークエルフだけど
新しい里では分け隔てなく仕事で
評価するよ。彼女は優秀だ。」
「長・・・。」
プルがウルウルしながらプラプリを見ている。
うーん、これもおっぱい掴まない方が良さそうだ。
「それを聞いて安心した。俺から見れば
エルフもダークエルフも同じだよ」
「ありがとうございます。
ただ・・・その・・私の魔法は
お世辞にも強力とは言い難く・・・。」
プルは申し訳なさそうにそう言った。
「その辺も今回検証してみようと思っているんだ。」
俺はここに来る途中で倒したバングの話をした。
「つまり、魔力を含んでさえいれば
硬い表皮を簡単に貫けると?」
顎に手を当てプラプリはそう言った。
「そうだ。魔法そのものの強弱で変化が出るか見たい。」
複数で当たる必要があるのだ。
前回は調子こいて一人で倒してしまった。
俺はストレージから簡錫を取り出すと
ミカリンに渡す。
「なので、今回の主力はミカリンね」
「OK。もし火が効かなかったら代わってよね」
そうなんだ。
もしかしたら土系の魔法しか効果が無い可能性もある。
「長!準備完了です。出せます」
入り口から完全武装したボーシスがそう言って入って来た。
「ようし行こう」
俺達は表に出ると複数の馬車に乗り込み
里の門から街道に出た。
「えー鎧着ちゃダメなの」
鎧を着ようとしていたミカリンを俺は止める。
「魔法メインで戦うならな」
俺はミカリンに魔法効果の仕組みをざっと説明した。
特別な種類を除いて金属は魔法の妨げになってしまうのだ。
「分かった。うーんなんか落ち着かないな」
いかにも戦士系の感想だ。
重く硬い金属は命を頼もしく守ってくれる
そんな実感があるのだ。
鎧さえ着ていれば何でも無い攻撃も
布の服だけでは致命傷だ。
「そんなワケで盾はアルコに渡してアルコは防御優先で
バングの注意がミカリンから逸れるように威嚇を」
ミカリンから大地ガイアスシールドの盾を
受け取りながら頷くアルコ。
「はい。わかりまし・・・きゃあ」
「おぉわ」
ビックリする俺とアルコ。
盾はアルコが装備する瞬間大きくなった。
丁度ミカリンとアルコの体格差に
比例してアルコ用のサイズになった。
流石は天使の装備。
普通じゃない。
「ああ、それそいうモンだから」
あっさり言うミカリン。
先に言って置いてくれよ
つか
他にも言ってない何かがあるんじゃないだろうな。
「見えました!!」
その叫びに合わせて馬車が減速していく。
「よし行くか」
三半機関とプルがバングに当たり残りの
軍勢は万が一の時の為に後方で待機だ。
停止すると俺達は馬車から飛び出す。
街道の先に確認出来るバングを見て
俺は叫んだ。
「なにアレ?でけぇ!!」
そう言えば大きさはまちまちだって
言ってたっけなぁ。
生け花やイジメなどに使われる道具で
剣山と言う物がある。
変電所で適当に拳を振り回していたら
右腕にフェイバリットブローが宿って
しまったアイツでは無い。
その剣山を裏返しにして
四隅から足を生やしたような恰好。
その正方形さと足の長さの比率からコタツを連想した。
四つん這いの状態
高さはざっと10m程度だ。
全長全幅は20mと言った辺りか
そんな地獄の巨大コタツが例によって
関節の存在しないタコの足のような動きで
道幅いっぱいいっぱいで
えっちらおっちら歩いていた。
コタツ布団を求め彷徨っている
・・・・じゃないよね。
被害が無いのならユーモラスに感じる動きだ。
足の下の空間は6m
胴体下部の針が2m
中央に仮面を付けた平たい本体の厚みが2m
で合計の高さが10mだ。
マズい
バフ掛けまくりで暴走陣まで使用して
スパイクの長さは5m程度だ。
これでは
頭のゆるい女子となんとかいたそうと粘るAV男優だ。
先っちょだけ
御願い
先っちょだけだから
届いたとしてもスパイクの
先っちょが胴体下部の針に
当たるか当たらないか程度だ。
致命傷は望むべくもない。
先っちょだけと言いつつ全部ぶち込んでしまう分
AV男優の方がまだ優れているではないか。
前回出会ったハンプティ・ダンプティ型が
対人追走用なら、今回のコタツ型は集落強襲用だろう。
足元に来たらボディプレスだ。
それを繰り返せば集落を壊滅させる事が出来そうだ。
俺がそう考えていると仮面が俺を見た。
穴の中に眼球に当たる物は無いのだが
俺を認識した事が理解出来た。
その瞬間、コタツは歩みを止め
勢いをつける為しゃがむ。
20m四方の剣山が
ジャンピング・ボディプレスを仕掛けて来る。
先に回避すればそれに合わせて
ジャンプを調整し着地先を合わせて来るかもしれない。
散れば3人は助かるかもしれない。
ジャンプしてからの回避では
余程高く舞い上がってくれなければ間に合わなさそうだ。
しゃがんだ瞬間にそれらが頭をよぎった。
俺は結論を叫ぶ。
「俺に集まれ!落とし穴で下に逃げる」
すかさずデスラーホールを自分の足元に展開する。
間に合ってくれよ。
深さは4m、針が伸びたらお陀仏だが
それは無いと踏んでいた。
簡単に伸縮自在なら普段は仕舞っているものだ。
コタツはジャンプした。
意外に低い
でも間に合うもんね。
「あばよーとっつぁん。デスラーホール」
「下品な男は要らん」
ミカリンが嬉しそうに被せて来た。
言いたかったのね。
俺を中心に光る魔法陣の中に
全員が居る事を確認した
が
俺は驚愕した。
プルの挙動だ。
一人だけ月面にいるかのような動きだ。
エルフは個別に頭上に精霊がいて
エルフを全力サポートしている。
高所からの落下
それも風の力で補助し
彼等は完全飛び降り自殺耐性を有しているのだ。
ダークエルフも同様だとしたら
その落下耐性が仇になり針の餌食になってしまう。
俺は咄嗟に手を伸ばしプルを抱え込んだ。
その瞬間、魔法が発動した。
内蔵が体内で浮き上がる感触。
タマタマが縮みあがるのを感じた。
「キャ!!」
悲鳴はプルだ。
ミカリンもアルコも俺の練習に付き合い
デスラーホールを散々味わっている。
一番人気のアトラクションだ。
馴れたモンで声など、もう出さない。
腕に引っ張られる様な負荷が掛かる。
予想通りプルも落下耐性を有していた様だ。
周囲が暗くなる。
コタツはもう頭上だ。
まだ明るい夕方の光を遮った。
マズい
感触からいって落下耐性が勝ちそうだ
俺が重しで引っ張るより早く
針が襲い掛かって来る
この感触から
この
感触
本当なんです。
わざとじゃないです。
普段は
はい
わざとです。
いつも意図的に行っていました。
はい
はい
いけないと分かってはいるんです。
はい
ごめんなさい
はい
でもこの時ばかりは本当に偶然だったんです。
本当のラッキースケベだったんです。
指と指の隙間を柔らかく刺激する何か。
俺はプルのおっぱいを思いっきり鷲掴みしていた。
はぁああぁぁっうああぁあ
やややわらっけぇへえええ
縮みあがったタマタマが瞬間的に息を吹き返していく
離さなきゃ
バカ言うな
謝らないと
後ででいい
揉んでもいいだろうか
もう実行犯だ何を躊躇う
まるで宙に浮いているみたいだ
まるでじゃなくて実際に浮いている
高速思考が開放されたようだ。
コタツがジャンプした時の数倍の速さで俺は思考していた。
ミカリンが凄く冷たい目で見ているのを感じる。
そんな事より優先事項は迫る針への対処だろうが
考えろ俺
だめだ
柔らかい
考えられない
くそ
ピンチだ。
やわらか
いやもう死んでもいいか
はぁやわらかい
俺が固まっている間に盾を構えたアルコが
俺と針の間に割って入って来た。
どうもアルコは常々俺の挙動を
監視というか注目しているようだ。
でなければ間に合うハズが無い。
落下中は移動出来ない。
落下する前のタイミングで俺を庇うべく
地面を蹴っていたのだ。
キン!
鋭い金属音は盾に針が当たった証拠だ。
空中で踏ん張る事は出来ないので
注射器の様にそのまま俺ごと押して来た。
受け身の取れない状態で背中から
落ちたが今度はプルの落下耐性に助けられた。
大した衝撃は無かった。
それよりも続いて上に被さってきた
アルコの衝撃の方が痛かった。
「申し訳ございません!」
謝るアルコ。
「いやナイスガードだ」
本当に助かった。
しかし音からして
バングの針の硬さは相当なモノだと推測できた。
それを相手にしてもキズすらついて
いないであろう大地ガイアスシールドの盾も
同じく相当なモノだ。
「ミカリン!垂直にファイアボールを
打ち上げろ、脱出口を作ってくれ!!」
俺はおっぱいを掴みながらも
辛うじて残った冷静な思考で
ミカリンに指示を出す。
デスラーホールは発動から5秒後に元に戻るのだ。
バングに穴を開けないと
今度はこっちから針に特攻してしまう。
やわらかい
いつ離そう
いや
離したくない。
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