第15話 クロード宅にご厄介
毛皮はクロードが納品し
金銭に換金して俺達に渡してくれた。
宿泊はクロードの自宅だ。
悪いので断ったのだがジゼルさんの恩人
という事で是非にとなり
やっかいになる事にした。
金銭も浮くし
情報も欲しい。
家は直ぐ近くだった。
まぁ村の敷地そのものが狭いので
どこでも近くなんだが
「ゼータ君て、スゴイのよ」
ちょ奥さん何言ってるんですか
「魔法が使えるのよ」
あ、そっちか
「ほぅ・・・。」
クロードはあまり驚いた様子は無い
まぁこいつはストレガを知ってるからな
珍しくは無いだろう。
「ゼータ・アモン君・・・だったか」
あ
やべ
こいつは冒険者ゼータを知ってるか
年齢も外見も違う今の俺をどう見ているんだろう。
誤魔化すか
正直に言ってみるか
悩んでいる俺を気にせず
クロードは続けた。
「まぁ、細かくは追及しないが、その名前を
使い続けるのはオススメしないぜよ」
ん
意味が分からん。
「本名だよ。」
横からミカリンが言った。
俺は手で制する。
アルコはポカーンとしている。
ジゼルは微妙な表情だ。
後、ジゼルの両親も居るのだが
キッチンに引っ込んでいる
夕飯の準備をしてくれていて、この場にはいない。
クロードはうんうん分かってる分かってる
みたいな上からの態度で頷く
こっちの言う事を信じていないのは分かった。
「うんうん。そうか」
そこで閉じていた目を開くと語り出した。
「その年だ。憧れるのは分かるが・・・。」
クロードは俺の知りたがっている事を
ベラベラと話してくれた。
うん
こいつは昔からやりやすい
手の掛からない子だ。
クロードの話によると
ゼータ・アモンと言う冒険者は
悪魔の化身である人型アモンを
相打ちで葬った真の勇者だ。
一般に知られている勇者ガバガバが討った
というのは教会が歪めた事実で
これは冒険者の間では常識だそうだ。
これが原因で、その名を語る者が後を絶たず、
都市ひとつに大体、何人かはゼータ・アモンが現れ
そして彼等のことごとくが
謎の雷
に撃たれて、その後
改名を余儀なくされていたそうだ。
なぜだか俺には雷の犯人が分かってしまった。
「俺は実際本人に会ったこともあるぜよ」
なんか自慢気だ。
つか
今も目の前に居るんですけど
俺はテーブルの下にメニューウィンドウを開くと
PTチャット
(ウィンドウが開けるのが俺だけなので
一歩的な指示になってしまっている。)
を、飛ばす
【この件は夜相談、話を変える】
メニューが見えるのは俺だけなので
目の前でやっても良いのだが
手が不審な動きになるので変に警戒させてしまう。
「へーすごいや。流石G級ですね」
昇進してないがな。
「へっまあな」
喜んでいる。
このまま話しを変えてしまおう。
「冒険者登録なんですけど・・・。」
なんとしても、という程でも無いのだが
お手軽に身分が手に入り旅も不自然に
ならない冒険者は何かと便利だ。
なっておきたい
「あぁ、昔はな、いきなり誰でもなれたんだが・・・。」
話はバリエア崩壊まで戻った。
経験の無い難民が生活の為に冒険者になり
当然、事故が増えまくり冒険者の死亡数が
うなぎのぼりになった時期を迎え放置出来なくなり
政府と教会が介入する事態にまでなった。
冒険者を希望する者
また才能のある者を
無駄に死なせない為の制度として
一つの学園が出来上がったそうだ。
「学園だ・・・と」
俺の呟きを聞いたミカリンは片手で
目の辺りを押さえ天井を仰ぎ見た。
政府と教会の合同出資でベレンに
新設された全寮制の学園。
入学資格は試験に受かるだけ
卒業後は基本自由
冒険者になる者
政府に雇い上げられる者
教会に従事する者
能力によって様々だ。
費用は出世払いでも可能。
優秀な者には卒業後の進路をいう通りに
すれば教会や政府が払う事もあるそうだ。
「アモン。学園モノは手を出したらオワコンだよ」
小声でミカリンがそう言って来た。
「大丈夫。既に終わっている
つか、始まってすらいねぇ」
その後夕飯を御馳走になり俺達三人は
使用していない部屋を割り当てられた。
質素ではあるが
まともな寝具がある。
「では会議である」
今日は情報量は大漁だ。
今後の方針を左右する。
「まず名前だが・・・。」
俺がそう切り出すと
アルコがすかさず食いついて来た。
「変える事は無いと思います。」
「賛成ー。本名なんだし」
ミカリンもアルコの意見に乗っかる。
「うむ。ではそのままで行こう」
ただ、からかわれたりしそうだな。
「因みに変更は出来なかった」
俺はメニュー画面を開いて自分の名前の
欄をタップするが何も起きない。
ミカリンもアルコも同様だ。
決定したが最後の項目だ。
「ミカリンをミカリンポに
しようとしたが、それもダメだった」
「止めてよ」
マジで怒るミカリン。
そうだ、名付で思い出した。
「そういえばさぁブリってさ」
「うん」
ミカ=ミカリン
ラハ=ラハッチ
ウル=ウルポン
と、同僚を以上のあだ名で呼んでいた。
最近、名付の機会が増えたせいか
このブリのセンスは
個人的に中々のモノを感じる。
被らせず
一見親しみが篭っているが
個人の特徴をイイ感じで馬鹿にしてる感がたまらん。
付けた時は気にしなかったが
ここまで一緒にいてミカリンは
もはやミカリン以外の何者でもない
もうミカと呼べない。
そんな名付の巨匠は
「あいつ自分の事は何て呼ぶの?」
「ブリッペ」
キタネェ響きだ。
思わず笑ってしまった。
もし会う機会があれば是非ともその名前で呼ぼう。
「さて、次の議題だが」
仕切り直しだ。
「次の目的地はエルフの里」
頷くミカリン。
アルコは手を上げた。
「はい。アルコくん」
「はい。そこでの活動は何をするのですか」
大きく頷く俺。
「俺の知人に会うだけだ。他には」
「・・・ありません」
すまんな特に二人は、する事は無いな。
「で、その後はバロードを経由してベレンに入る」
ここで目がキラキラするアルコ。
憧れの聖地だね。
良かったね。
絵本と違うからってガッカリするなよ。
「そしてベレンでは、その学園とやらに入学し
冒険者の資格所得を目指します。」
ミカリンがジト目だが
ふふ、お前のそう言う視線は
なんでもないと言っているのだ。
「なんで冒険者になりたいのさ」
ミカリンがジト目のまま質問してきた。
「身分が保証される。なにより旅がしやすい。
冒険者でなければ行けないもある、
情報も手に入りやすい実力さえあれば稼ぎもイイ
将来何をするにも有利だ」
ここでアルコが再び挙手した。
「はい。アルコくん」
「私も入学できるのでしょうか」
「分からん。けど多分大丈夫だろうドワーフを
始め多種多様な人種がいるのが冒険者だからな。
良くも悪くも実力次第だ。」
とは言ったものの
これは前回、古い制度かもしれない。
今はどうなんだろうか
まぁ明日、ココの協会で聞いて見るか。
話はそこまでになり
その後は濡れタオルで体を清め就寝となった。
風呂はこの村には無かったのだ。
二人とも湖の丸太小屋の風呂に入りたがっていた。
よほど風呂が気に入ったようだ。
ベレンに着くまで風呂が無い事を
伝えると二人ともガックリしていた。
翌朝、食事の後はクロードの提案で稽古になった。
クロードが直々に見てくれると言うのだ。
俺はアイテムストレージからレプリバーンを
取り出すとミカリンに渡す。
俺は祈年祭を装備した。
「三人同時でいいぜよ」
相変わらずの自信家だ。
表示は味方のみなのでクロードのレベルが分からない
是非、知りたいトコロだ。
「ぶちのめして配下にしてやるか」
「いいねぇ僕の手下にしていい」
俺もミカリンも始めはこんな調子だったが
現実は残酷だった。
三人掛かりでもクロードに一太刀も入らなかった。
特に俺のもどかしさは半端が無い
かつて知ったる相手の剣だが前回と違い。
体が追いついて来ない。
見えない
避けられない
当てられない
全てにおいて肉体の遅さ鈍さにイライラしっぱなしだ。
あっという間に体力が底を尽き
俺達は這いつくばってしまった。
「兄に勝てる人です」
アルコの感想から最低でもレベル40以上って事か
20付近が3人でも相手にならないのも致し方なしだ。
くそぅクロードのクセに
悔しいーーー
「んーお前ら師匠は誰ぜよ
そろぞれ違う様だが・・・。」
俺は仰向けに寝転がったまま荒い呼吸のまま考えた。
何て言えばいいのか分からない。
昔の魔王の剣術をコピーしましたとは言えないしなぁ。
ミカリンも返答に困っている。
「私は兄の直伝ですが・・・私に
聞いているのでは無いですよね」
一応答えるが
剣士が剣士に聞いているのだと
アルコは理解している様子だ。
返事が無い事をどう勘違いしたのか
クロードは言った。
「まぁ無理に言わなくてもいいぜよ
ただ、こりゃあ参ったな」
えー
そんなにダメか
「制度の不備っつーかデメリットと言うべきか」
後頭部をポリポリと掻きながらクロードは続けた。
「お前らより弱っちーのが新卒で冒険者になってるぜよ。
即戦力なのに学園に入らないと冒険者になれないっつー
この制度が裏目に出てるぜよ」
こんなに一方的にボコられて
そう言われても
なんか馬鹿にされている様な気がするが
クロードはこれでも最上級のG級だ。
下はいくらでもあるだろう。
信じても良さそうだ。
「剣術だけを習うワケでは無いでしょう」
息も整って来た俺はそう言った。
「まぁそうだな。ん?
坊主は魔法使いじゃなかったっけか」
うーん
脳筋二人が前に行くせいで
結果的にそーなっただけなんだが
何て言おうか
「遠慮するな魔法で来いよ」
「魔法は剣と違って寸止め出来ません」
とは言ったものの
これだけレベル差があればクロードに
効くワケないか剣士相手の魔法の立ち回り
これは俺にとって良い経験になるだ。
ここは乗るか
「安心しろって、まず当たらないぜよ」
笑うクロード
まぁその通りだな。
俺はメニューを開き、魔法使いで
セット登録しておいた装備にチェンジする。
今の手持ちで一番魔法に特化した装備だ。
ちなみに防御は紙レベルだ。
俺の出で立ちは
一瞬で魔法使いになった。
クロードは今回一番のビックリ顔だ。
「そ・・・その着替えも魔法なのか」
うーん、次からは何か掛け声とかポーズとか考えておこう。
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