第5話 来訪者
丸太小屋の裏、岩が折り重なった窪みがあり
隙間を粘土で埋めて水を貯められる様にした。
竹っぽい植物をパイプ替わりにして
湖から水が引ける様にしてある。
途中で一度貯め
そこで網と炭で簡易的にろ過する工夫も凝らしてある。
飲まないとはいえ
濁っていたり虫がいたりは嫌なのだ。
飲み水はキャスタリアから貰った水筒で
賄うので生活用水、主に風呂用だ。
叩いてバケツ状に加工した青銅の壺に
焚火をして浮かべて置いた
そろそろ頃合いだろう。
俺は裏手に回り湯の温度を確認する。
波でバケツをひっくり返さないように
慎重に攪拌してからだ
上は熱湯でも下の方は水だからだ。
「うーん、もうちょっとかな」
少しぬるいが
もうすっぽんっぽんになってしまっていたので
火を付けたまま入る事にした。
ついでにバケツの火の中に芋を放り込んで置く
これはサツマイモ並みに甘い
アルコールを抽出するのにも重宝している。
この森で採れるモノの中で一番甘いので
ミカリンは全部食用にしたがっているが
男ボディの俺にはアルコールの方が重要だ。
女ってどうして甘い物にあんなに拘るんだ。
「うぃぃいいいいいいいい」
毎度毎度の謎の掛け声を発しながら
俺は湯に浸かる。
「あーイモも焼いてくれてるんだー」
すっぽんっぽんでミカリンが現れた。
風呂もイモもお前の為じゃあないんだが
つか
湯加減を見るのに俺を利用したろお前
「うぃぃいいいいいいいい」
俺を真似しているのだろうミカリンも
謎の掛け声を発して入ってきた。
「話戻っちゃうけどさぁ
なんでハーレムをつくりたいのさ」
「美少女とイチャイチャしたいんだ」
全世界の男の共通の夢だ。
「美少女ならさぁ・・・・
もう、あたしが居るじゃん」
ほーぅ
まぁ確かに美形だが性別の確認に
股間を参照せにゃならんボディだ。
こない。
ババァルとまでは言わないが
出るとこと引っ込むトコロがだなぁ
「だってお前イヤがるじゃん」
俺は舌を出してペロペロしてやる。
そのアクションで察したようだ。
いつだったか
Wケンの古典コント「する」をしつこく
連発してきた時があって、あんまりしつこいので
「する」と言って服ひっぺがしてあちこち
舐めまわしてやったらガチ泣きしやがった。
なんだよチクチョウ
俺が悪いみたいで後味最悪だったぜ。
まぁ苦しょっぱかったが
「あっ、えー・・・いやあれはそのぅ」
「まぁお互いもっと体が成長してからだなぁ」
俺も自分の股間の可愛く懐かしい一物を眺めて言った。
人の事は言えんなコレ
「成長・・・してから」
「そうだ。大人のお前胸どの位あったんだ」
最終決戦時が成体だと思われる。
が、あの時は鎧でボディラインは確認出来なかった。
デビルアイでの解析も攻撃予知の為
エネルギーの変異にばかり着目し
スリーサイズなどはノーチェックだった
俺としたことが迂闊だったぜ。
「ん・・・この位かな」
自分で胸を持つ様な仕草で、かつての
最前線を表現するミカリン。
ん
そんな無いだろ
見栄張ってないか
「本当は」
俺はそう言って念のためカマを掛けた。
「えへへ、この位です」
若干ボディよりに手を近づけるミカリン。
正直でよろしい
Bよりは大きいのかな
実は女性のカップ基準って良く分からん
Dより先はデカい
こんな認識で十分だ。
よくカップサイズが話題になるが
実は男性側はどうでもイイ
それよりも優先される事は山ほどあるし
おっぱいが大きいからと言って
他の大事な事をガマンしたりしない。
でかいに越した事無いレベルだ。
他の事項に比べて分かりやすい差に過ぎない。
女性で言えば男性の身長の認識が近いのではないだろうか
高いに越した事無いレベルだ。
まぁ女性では無いので
当たってるかどうかは分からないのだが
それにミカリンの場合はおっぱいと言うより
その土台になっている大胸筋の
ブーストの功績が大きいような気がするが
発言は脳内アラームに止められた。
相変わらず優秀だ。
・・・・・
ん?!
脳内アラーム!?
悪魔の機能は全て使用不可だと思っていたが
脳内アラームが鳴っている。
ステイタス画面にあったスキルで
危険予知ってもしかして
脳内アラームの事だったのか
分かりにくいな
しかしこれは困った
何が危険なのか、さっぱり分からない
完全膝カックン耐性が無いので
周囲の状況を把握出来ない。
不安を煽るだけで
現実的対応に困る
スマホの地震警報と同じだ。
ふとミカリンを見てみれば
周囲を見回す仕草をしている。
こいつも何か感じ取ったのか
よし
ここは知ったかぶりで行こう。
「気が付いたか」
俺はさも分かってるかの様に
お前がいつ気が付くのか待っていた
そんな感じで言った。
「囲まれているっぽい・・・・
あーこの体、こういう感度は鈍いのかなぁ」
いや
レベルが低いからだよ。
それにしても囲まれている事が分かっているのか
俺より優秀だ。
マズいな。
俺もミカリンもまだレベル1だ。
食肉用にウサギみたいなのを狩っては
いたが魔物ではないので
経験値が入って来なかった。
包囲などと言う戦術を行使する相手と
やり合っても勝てるワケが無い
お湯から上がろうとするミカリンを
俺は手で制した。
耳を澄ますと
背にしている岩の向こうから
枝を踏んで折った音が聞こえた。
もうこんな近くまで来ているのか
俺は目の前のバケツから
火のついた薪を手に取る。
コイツを命中させるだけでも
結構ビックリさせられるだろう。
「僕が囮になるよ。主様は逃げられるだけ逃げて」
ミカリンが小声でそう言って来た。
真顔が凛々しいな。
やだ
カッコイイ
じゃあお言葉に甘え・・・
たい所だが、全裸で逃げ切れるとも
思えないし
まず
戦闘になる前提が問題だ。
しなくて済むかも知れないじゃないか
「まぁ相手を見てみようじゃないか」
俺はそう言って岩によじ登った。
顔を半分だけ出し音のした方を注意深く見る。
シルエットだけだが
相手が何なのか俺には分かってしまった。
戦闘しても
今の俺達には絶対に勝てない。
しかし、相手が相手だ。
ここは最後の決断をいきなりしてしまおう。
「ちょ・・・何してんのさ!」
岩の上まで登り仁王立ちした俺を見て
ミカリンが悲鳴に近い声でそう言った。
俺はミカリンを見下ろし不敵な笑みを浮かべる。
死ぬか尊敬されるかのどっちかだ。
俺は意を決して大声で歌い始めた。
曲はあの「ヒーローの歌」だ。
大声で歌う俺をミカリンは唖然と見ていた。
完全に気が違ったと思っているのだろう。
しかし、俺は賭けに勝った。
この時点で攻撃してこないのだ
予想通りの相手だった。
気配を殺す事を止めた相手が堂々と足音を立て
あちらこちらから現れ風呂までやって来た。
皆、俺の歌に合わせて合唱になった。
「何コレ??何が起きてるの??」
キョロキョロと辺りを見回すミカリン。
事態が把握出来ない様子だ。
現れたのは身の丈3mにも及ぶ獣人。
ハイエナっぽい顔をして
「ツァッツア」とうるさいあいつらだ。
岩の上に立っている俺と肩の位置が合うので
サビの部分では俺はベアーマンと肩を組み
左右にスイングして熱唱した。
歌い終わるとベアーマンの代表者
装備が一人だけ良い物を身に着けているので
恐らくコイツがリーダーなのだろう。
そいつが話しかけてきた。
「見た所エルフでは無いな、なのに
この歌を知ってるとはエルフと知り合いなのか」
ん
翻訳がおかしいのかな
ツアツア言わないのか
「聞いて驚け。森の妖精に懇意にしてもらっている者だ」
つか本人だが
今はその姿になれん
知り合いで通そう
ザワッ!
そんな音が聞こえそうな程
ベアーマン達が驚きのリアクションを取った。
ミカリンも湯の音が立つぐらいベアーマン達の
リアクションにビックリしていた。
ベアーマン達は
代表者の後ろに整列し一斉に跪いた。
「こ、これは大変失礼を・・・」
おお
しどろもどろになってる。
絶大な権力を誇っているな森の妖精は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます