第4話 あいさつ回り
地獄を作り変える決意をした京子。地平が去ってしまったあとの室内は静まり帰っていた。誰もいない。
「みんな出払ってるのかな? まぁ、地平さんが案内してくれる人が来るっていってたし、誰もおらんようじゃからこの六法全書でも……あっ、ううっ、また方言が……いかんいかん」
無意識に出た方言丸出しの独り言を塞ぎながら京子は地平の机に置いてあった六法全書と書かれた分厚い本を開く。
「ふむふむ六法全書の六法とは刑法、行政法、民法、天国法、地獄法、御褒美…んっ、この最後の御褒美ってなんだろう……法律じゃないんじゃ……あ、もしかして御褒美の”褒”を”法”とかけてるのかな?」
気になった京子は一番先に御褒美のページを開いた。しかし、その御褒美の項目には次のような一文が書かれているだけであった。
”自分の信念を持ち、その信じる正しさ貫きし者に褒美を遣わす”
「ん? 何だろうこれ。法律ってもっとしっかりと細かく書かれてるイメージだけど……何か思ってたのと違うや。まぁ、いっか」
その後は刑法、行政法、民法のページをパラパラと見たが、難しい文言や漢字の羅列が目に飛び込んで来た。
♦ ♦ ♦
5分ほどそれらのページをパラパラと繰り返しめくった後、自分の関係している地獄法のページを開いた。
「さてっ、刑法、行政法、民法はだいたい見たし……次はあたしの担当する仕事の地獄法を見よっと!」
とりあえずは見た。ということにして京子は地獄法の項目に目を通す。
【地獄の裁きに関して】
第壱条 次に掲げる事項に該当する者は調査省からの引き渡しを受けたのち速やかに地獄の刑を執行しなければならない。
第壱項
第弐項
第参項
第四項
第伍項
「ん!! 漢字ばっかりだ。これ……なんて読むのかな?」
京子は
「
「何見てるんです?」
「うわぁ!!」
京子が六法全書を誰もいない静まり返ったオフィスで読んでいると急に背後から声がした。声の方をみると先ほど船に乗るときにいた女がそこに立っていた。
「あ、あなたはさっき三途の川みたいな場所にいた……」
「あっ、改めましてこんにちは。あたし
先ほどまで死者たちを天国行き地獄行きに振り分けていた女は地平が説明していた他の省の内の調査省という部署の者らしい。
「ちょ、調査省って? ……あたしの働く省は天空省なのになんで他の省の人が案内を?」
「いやぁ、何か今の時間帯って忙しいんですよね天空省……階高もあるしわざわざ上の階から来てもらうよりあたしが三途の川わたって来ちゃった方が近いんですよ。何しろ天空省は一番巨大な省ですからねぇ」
「そ、そうですか」
「そうなんですよ~。1階あたり階高が5丈……あっ、今の現の単位で言うと約15mもありますから。建物の高さはだいたい1140mになります」
「せ……1140m!? で、でもさすがにそんなに高そうにはみ……見えなかったんですけど」
京子が地平に案内されて建物を見上げた時、たしかに大きな建物ではあったが見かけ上の高さはせいぜい120m程度というではないかという高さであった。とても1140mもあるとは思えなかった。
「ふふっ、ではもう一度よく確認してみてください」
雪宮はそう言うと京子を建物の外に連れ出した。
♦ ♦ ♦
「上を見上げてみてくださぁい」
そう促されて京子が建物を見上げるとあることに気が付いた。
「あれ……空が……ない」
見上げた先には普段見ているような空。青々とした綺麗な空が見えなかった。
そこにあったのはなにやら一面を覆う茶色の一面。そう、それはまるで地面であるかのような。
「なんか地面みたいな色ですね……空の色」
「そりゃあそうですよ。地面ですから……あれ」
「……………」
「はぁ!? じ、地面ってこ、この空一面に広がってるのが!? な、何で地面が上に!?」
あまりに意表をつく雪宮の返答に京子は思わず声を上ずらせてしまった。
「ふふっ、今いるここは地下なんですよ」
「ち、地下?」
「そうです。さっきの三途の川も今いる場所も罪人たちが逃げ出して地上の生き物たちに危害を与えないように厳密に隔離しているんです」
「な、なるほど。そうなんですか」
そう言われて、あたりを見渡すと一面の空がその色。これが地面ということになるとこの地下は相当の広さということになる。どうやら罪人たちはたいした償いはしていないまでもしっかりと隔離はされてそれなりの措置は取られているようだった。
「ささっ、あまり長く建物の外にいると罪人が来て危ないんで建物の中に入りましょう。そして行きましょう!」
「えっ、行くって……今度はど、どこに?」
「天空省の統括部長の場所ですよ。統括部長は70階の天国課と同じ階にいます。今いるのが地下の11階だから~~……81階上ですかね」
「は……81階上!? えっと……階高が15mだから……1215mもう……上」
「あっ、地獄とその上の階高だけは120mなので正確には1320mですね」
「はっ……はは……」
1000m以上も上に上がらないといけないという現実に早々にここでやっていけるか不安になる京子。
「ささっ、最初の挨拶は第一印象を決める大事な場です。張り切って参りましょう!!」
かくして天空省を統括する部長に会うために重く動かなくなった京子の足を前にすすめるように雪宮は京子の腰を押して進みゆくのであった。
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