『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本を進めまくった一年間のこと』 花田菜々子
『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本を進めまくった一年間のこと』 花田菜々子
二〇一三年、夫とは別居中で住む場所すらなかったという書店員のアラサー女性。人生のどんづまりをなんとかするために、とある出会い系サイトを通して会った人に、その人にぴったりであろう本をプレゼンしてまわるという活動を始める。ヤリモクのおっさんにばかり出会ったり、話が通じない人にマッチングするといったトラブルには見舞われつつも、彼女の行動は思いがけない出会いと活力を与えるのだった。
著者の実体験を綴った、エッセイか私小説に区分される本。積読の本の山から見つけた一冊だけど、買った時のことが全く思い出せない。いつもなら手に取らないタイプの本を読んでみたくなったのだろう、おそらく。
人生のどんづまり期に陥った女性が、思い切ったミッションを自分に課すことで人生を好転させるといったタイプの本はこれまでに何冊か読んだことがある。思い出せるのは、三十歳で様々な不調を抱えた女性が60年代に刊行された主婦向けフランス料理の本に載っている料理を全部作ってその様子をブログで公開することに決めたその顛末を書く『ジュリー&ジュリア』と、スクールカースト最底辺の女子が50年代のティーン向け実用書を実行することにしてみたことを語る『マーヤの自分改造計画』の二冊くらいしかないが、本作はその系譜につらなるものだろう。このジャンルはアメリカが強いイメージがあったので、日本にも同傾向の本があるのがちょっと意外でおもしろくはあった。単に私が知らなかっただけかもしれないけれど。
正直にいうと、著者の活動やおすすめしていた本よりも、ヴィレッジヴァンガードの店長をやっていたという経歴の方が印象に残っている。それも十代だった90年代末期に本店に出会って感激して通いつめそのまま店長さんになったという生粋のヴィレヴァンっ子。私も一時期ヴィレヴァン大好きっ子だった恥ずかしい過去を持つ故、ラピュタが実在したことを確信したパズーみたいなテンションになってしまったので……。その後のショッピングモール大量出店によって段々ヌルくなっていったヴィレヴァンについては中の人的にも忸怩たるものがあったらしい箇所が読めたのが、本作の一番の読みどころであった。
あと、著者が尊敬する方としてガケ書房の店長さんと会ったことも書かれていた。本作を読む少し前に『ガケ書房の頃 完全版』を読んでいたので、ちょっとした縁を感じたのだった。でたらめに本を読んでいると、たまにこういうことが起こりますよね。
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