『こんな小説、書かなければよかった』 悠木りん
『こんな小説、書かなければよかった』 悠木りん
しおりの親友のつむぎは、難病に侵されて長期入院中である。
子供の頃から体が弱く学校に通うことすら難しかったつむぎに、かつてのしおりは短い小説を書いてお見舞いの際に届ける習慣があったのだが、あることがきっかけでしおりは小説を書くことをやめていた。
それ以降もかかさずお見舞いに訪れるしおりにむけて、つむぎはある日奇妙なお願いをもちかける。自分を主役にした恋愛小説をしおりに書いてほしいというのだ。彼氏役を演じる幼馴染の男子まで既に手配済みで、しおりは親友をモデルによくある「恋人が難病で死んでしまう」恋愛小説を書かざるを得なくなる。
つむぎの意図が読めないまま、二人が演じる恋愛のまねごとにしおりはつきあう。そしてやめていた小説の執筆に再び向き合いだす。
直球青春百合ラノベ。同作者の『このぬくもりを君と呼ぶんだ』はややちぐはぐな読み心地を覚えたが、こちらは素直に楽しめた。
作中でも登場人物たちが言及している通り、巷にあふれる難病の女の子が出てくる青春小説の真似事をしようという若干タチが悪くてメタな出発点から、本当に難病の女の子による小説をやってしまうのが面白い。
と同時に、タイトルの意味や「しおりはどうして小説を書くのを諦めたのか」「しおりは再び小説を書くようになるのか」という謎や期待、二人の当て馬のような役をわざわざ買って出る男子・後野くんの動機などでストーリーを引っ張るところなんかも手堅く上手かった。
あと、百合の鉄板であろう水族館デートや電車に乗って海に行くシチュエーションも押さえられていて、エモさへの目配せも怠っていないのも巧みであったと思う。
どういうシチュエーションであっても百合に男子がでてくるのはダメ、メインの二人の片方もしくは両方が死んじゃうのは絶対ダメ、という人でなければ読んでみるのも悪く無いように思う。
──今気が付いたけど、ストーリーの顛末を一部ネタバレしてしまったような……。すみません。
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