『珈琲と煙草』  フェルディナント・フォン・シーラッハ

『珈琲と煙草』

 フェルディナント・フォン・シーラッハ  酒寄進一 訳


 家族と離れてイエズス会系寄宿学校にいた頃の思い出、ナチの高官でユダヤ人の財産没収に加担した祖父のこと、俳句やヘミングウェイのこと、弁護士だった時に仕事でかかわった人々、SNSやメディアでの発言がもとで炎上した人々について……等々。

 事実や体験に即したエッセイや私小説、犯罪に纏わる小説を収めた掌編集。


 

 珈琲と煙草、シンプルでいいタイトルですね。

 私は煙草はやらないけどコーヒーは好きでよく飲む。コーヒーや煙草などで一服したい時、なおかつその時間を質のよいものにしたい時にもってこいな一冊だった。

 ただ、タイトルと装丁とナチ高官だった祖父のこと(ホロコーストを扱った小説をよく読むので)に興味をもって読んだでみただけなので、全体的に「……ふーん」という感想未満の印象を抱いただけで読み終わってしまい、なんだか本に対して申し訳なくなった。解説によれば、どうやら作者の他の本を読んでから読んだ方が深く理解できたっぽい。惜しいことをした。

 

 ただ、当人にとっては一大事だけれど世界のどこかで今日も起きているようなありふれた悲哀あふれる瞬間を語ったような文章は、すぐに消える煙草の煙を連想させてなかなかよかったように思う。

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