お菓子

 ばりばりばり、ぼりぼりぼり。


 隣の席の恵先輩は、常に何かを食べながら仕事をしている。


 ぼんやりした目で彼女はモニターを見詰める。その顔は一年中、ぼつぼつと赤い吹き出物で覆われていた。


 お菓子とセットになる彼女の癖は独り言だ。延々と続く怨嗟の呪文。それはいったい誰に向けているのだろう。


「…ああ、終わらない、ああ、終わらない。これも、ああ、畜生。」


 びりびり。スナックの袋が破られ、粉が私のデスクに落ちる。私のデスク、といってもその三分の一は彼女の書類に侵略されていた。


「終わらない…終わらない。」


 ばりばり、ぼりぼり。キーボードを打つ手より、お菓子を摘まむ方が長い。ばりばり、ぼりぼり。ぶつぶつ。ぶつぶつ。


 こうして一日は終わり、彼女の机の上には油染みた書類が残る。ダブルチェック。マニュアル通りに私はそれを確認する。もちろん、入力はほとんど漏れていた。

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