アロマ

「心がリラックスできるんだよ」


 久しぶりに会った従姉の苗子ちゃんは、電気式のアロマポットの前でそう言った。


「うちもね、こうやってリラックスしてるの」


「そっか、何の匂い?」


「ラベンダーだよ。よく寝れるんだ」


「いい匂いだね」


 そう返事したけれど、ほんとは分からなかった。


 畳の部屋を天井近くまで埋めつくす、物、物、物。ぬいぐるみに服、衣装ケース。ありとあらゆるモノが地層のように折り重なっている。


 床が見える僅なスペースには、小さなアロマポットと似た100均で売っているUSB式のアイテムがタコ足配線に繋がって小刻みに動いていた。


 がらがら、落ちてきたガーリーな小物を苗子ちゃんは慣れた手付きで地層に押し戻す。


 異臭の原因はあそこに挟まっているお菓子の箱だろうか。同時に数本空いているペットボトルだろうか。


 アロマの匂いはすえたゴミ屋敷の臭いに混ざり、たちまちかき消える。


「いいでしょ、アロマ」


 彼女はそう言って、幸せそうに笑った。

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