実習

 実習を終えた私たちはお洒落なカフェで打ち上げを開く。親友の姫奈とは所謂ニコイチ。お揃いの靴に、ワンピース。双子同然の私たちは栄養士の卵だ。


「本当に、実習ガチャ外れだった。」


「うちの所も、マジサイアクだったよ。朝は15分前に来いとか、髪は黒に染め直せ、とか。そんなんうちらの自由じゃない?ガッコでもそうじゃん。」


「学校で何勉強してきたの?とか嫌味言うんだよ。うざっ。」


「オバサンだから若い子嫌いなんでしょ、」


 くすっ。顔を見合わせる。


「言えてる~命に関わることだから注意するのって。実習生だよ、うちら。そのババアね、愛美って名前。そんな顔じゃないよ。」


「だね、あんたが上げてた写真見た。ブスなのにノーメイクとか最悪じゃん。栄養士は厨房に立つからってマスカラ剥がされたんだよ。ネイルも落とせって。サロンでやったのに」


「こっちはピアスにキレてた。食事に入るって。そんなわけないじゃん。でかいから給食に入ってたらわかるよね。フツー。」


「てかやば、日誌まだ書けてないんだった。」


「ウチも。早く書こっテキトーでいいからさ。さっさと出して終わらせよっ。夏休み終わっちゃうよ~」


 それから数日が過ぎ、私たちは学校の先生、これまた更年期ババアに呼び出された。


「あなたち、自分が何したか分かってる?」


 そこから始まった説教。あのカフェに実習先の調理師の一人がいて、そこか、ばれたらしい。愛美おばさんの顔をSNSに晒したことも。


 そうして私たちは実習先に謝る羽目になった。実習は不合格。ほんと、ありえない。業界にも噂は広まって内定も取り消し。


 資格取れないで卒業。それって詐欺じゃん。愚痴ひとつで若い女の子二人こんな目に遭わせるなんてマジありえない。


 とにかく声を上げないきゃ、と思って口コミサイトにレビュー。最悪の学校詐欺です、絶対に入らないでください。実習生いじめの最悪の職場です。絶対に行かないでください。以上。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る