第2話 ジェーナン村
外で騒ぐ子供の声で目が覚めた。
カーテンを開けると大人は農業、子供は大人の手伝いや遊びなど活気であふれた景色が広がっていた。空を見上げるともう既に太陽は真上にあった。
どうやら俺は昼まで寝ていたらしい。
「あっ、ルイス!」
そこで俺の姿に気づいた3人の少年少女がこちらに向かってきた。
「やっと起きたのか、このサボり魔!何回起こしに行ったと思ってんだよ!」
金髪のたてがみを風になびかせ、獰猛な雰囲気を纏ったメルトが熊手を肩に担ぎ俺を睨む。
「そうよ。あんたが寝坊した分、私たちの仕事も増えたんだからね!」
一見か弱そうに見えるが実際はそこら辺の男より断然強かったりする銀髪の少女クリスがメルト同様、俺を睨む。
「まあまあ二人とも、そう怒らないであげてよ。ルイスも珍しいね、寝坊なんて。何かあったのかい?」
知的な雰囲気を醸し出している緑髪の少年ヒュースが言う。
皆、このジェーナン村で過ごしている。同年代は俺を含めたこの4人のみだ。
4人は少ないように思えるかもしれないがこれでも多い年なのだ。
なんといっても村の総人口は80人程度で若い人よりも老人のほうが多く、王都ヴィルティンの領土を維持するためになし崩し的に形成された村なのだ。
そんな村で俺たち4人は生まれ、15年もの年月を共に過ごしてきたわけだが、毎回何か問題があるたびにヒュースが間に入って宥めてくれるのだ。
ヒュースの心労は計り知れないものとなってるだろう。
「いや、特にないんだが。…なんだか長い夢を見ていた気がする。」
「んだよ、やっぱりただの寝坊じゃーか!はやく出てこい!」
「すまないな、すぐ行く」
そう言って俺は軽く顔を洗い、パンを一つ咥えながらみんなのもとに向かった。
寝起きのせいか、いつもより体が重い。
「悪い、迷惑をかけた」
「よし。皆揃ったことだし、仕事に戻ろうか」
俺たちが担っている仕事は家畜小屋の清掃だ。
鶏や牛といった家畜が各小屋に収容されているのだが今回俺たちが担当しているのは牛小屋の清掃兼、乳搾りだ。
俺は熊手を取り出し散らかった藁を取り出す作業に移った。
「お前は寝坊したんだから俺たちの倍は働いてもらうぜ!がはは」
隣には嫌味な笑みを浮かべたメルトがいる。
「わーってるよ、うるさいな」
「なんだと!?…ん?お前、どうしたその目?」
俺の目を覗き込みながら言う。
「どういうことだ?金髪の馬鹿でも映っていたか?」
「っちげえよ!とにかく自分で確認して来いよ」
「なんなんだ…」
俺は近くにあった鏡に顔を近づけ目を確認した。
「えっ」
そこにあったのは仄かに赤い光を放つ異様な目だった。
俺は鏡から目を離せず、しばらく赤い目を見つめていた。
それは先ほど夢で見た女性の目とよく似ていた。
魔王として生まれ変わった俺が世界を破壊する @H0MAre
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