第12話 付き合ってるの?

「単刀直入に聞くけどねー?」

「うん」

「水無月さんと付き合ってるのー?」

「……っ! ごほっ、げほっ」


 私と皐月は人気のない空き教室で昼食を取っていた。危うく口に含んだ卵焼きを吐き出すところだった。私はジト目で皐月をみつめる。


「そんなわけないでしょ……」

「えー? 私には結構いい関係にみえたんだけどなぁ……。だってあの水無月さんがあそこまで親しげにしてるんだよ? 疑っても仕方ないと思うけどなぁ」


 皐月は心底不思議そうに首をかしげていた。


「それは……。私だって分かんないよ。なんでか知らないけれど、興味持たれててさ。結構前から私だけには笑いかけてくれてたんだよね。会話とかは最近になってからなんだけど」

「へぇ。そうなんだ。なんで弥生なんだろうねー?」

「私だって知りたいよ」

「もしかして、水無月さんは胸が好きとかー?」

「それはない……」


 いや、あり得るかもしれない。幾多の生徒達からわざわざ私を選んだのだ。私が人と違う点は胸が大きいことくらい。


「ま、なんであれ水無月さんに気に入られてるってのは間違いないよー。良かったねー?」

「……というか、皐月は私なんかと話してていいの? 彼氏いるんでしょ?」

「彼氏というか……、まぁもうすぐそうなるかもだけどねー」


 皐月はにやにやと頬を赤らめている。私は渋い顔を皐月に向けた。


「うわぁ、のろけだぁ……」


 応援してあげるべきだとは分かっている。でも、なんだか複雑な気持ちだ。長い間ずっと友達だったのに、取られてしまったようで。


 だからなおさら、水無月さんだけは私のそばにいて欲しいなぁと思う。


「弥生も水無月さんと付き合えばいいんじゃないのー?」

「だからそういうのじゃないんだって」

「親友が一人ぼっちっていうのは私も嫌だから、恋人見つけなよ?」

「はいはい」


 親友とか言うのなら、私に配慮して彼氏なんてつくらないで欲しいものだけど。


 流石にそれはわがまますぎるかなぁ、なんて思いながら私は昼食を終えた。教室に戻ると、どうしてかじーっと水無月さんにみつめられる。かと思えば、私のところまでやってきて、突然手を取った。


 そうして連行されるような形で、私は無表情の水無月さんに引っ張られていく。皐月の方をみるけれど、面白いものを見るような笑顔を浮かべていた。クラスメイト達も私に向けて気の毒そうな顔をしている。


 もしかして勘違いされてる? いじめとかじゃないからね? それを伝えたくて、私は軽く微笑みながら水無月さんと一緒に教室を出ていった。

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