「シリアルキラー、ジョニー・ソガードの終幕」 ③

 カーラジオからはジム・クロウチの〝Time in a Bottleタイム イン ア ボトル〟が流れていた。

 最盛期に夭折したミュージシャンの声を聴きながら、ジョニーはふと昔の、大切な友人と過ごしたときのことを思いだしていた。ハンドルを握るジョニーの隣では、疲れてしまったのかロザリーがシートに躰を預け、ぐっすりと眠っている。


 朝、出かける支度をしているロザリーの目を盗み、ジョニーは洗車しておいた愛車のマスタングを、倉庫から家の前まで移動した。さあ行きましょうとブブにリードを付け、抱きあげたロザリーは、ドアを開けてそこに駐められている車を見ると、ぽかんと口を開けたまま立ち止まった。

 サプライズに期待通りの反応を見せたロザリーに、ジョニーは知人から安く譲ってもらったんだよと嘘をついた。疑う理由を持たず、ロザリーは素直に信じてとても喜んだ。

 初めてのドライブだからと、ジョニーは真っ直ぐ目的の店には向かわず適当に遠回りし、街中を流した。ロザリーは興奮気味なブブと一緒に外の景色を眺めていて、ジョニーはそんなロザリーに目を細めていた。

 店に着くと、ロザリーが洋服を選んでいるあいだ、ジョニーは路肩に駐めた車で待っていた。持参した容器でブブに水をやり、自分もコーラを飲んで休憩する。ぴかぴかに磨きあげた愛車を満足気に眺めながら、ジョニーは頭のなかで再確認をした――犯行時に着ていたレインウェアは処分したし、ナイフは家、ワードローブの抽斗の奥だ。車はいつも殺した場所から死角になる位置に駐めていた。戻る際、前方に警官らしき影を見て反対方向から大回りしたことが二度あるが、車に乗りこむところは一度も見られていないはずだ。なにも問題はない。

 ジョニーが薦めていたとおり、ロザリーは勿忘草のような淡いブルーのワンピースドレスを選んだ。それに合わせた靴と、花のようなフリルをあしらったパーティバッグも購入し、ロザリーはご機嫌でおまたせ、と車に戻った。

 そのあとジョニーも、昼のパーティに無難なダークグレーのスーツを買った。ロザリーのドレスに合わせ、タイとチーフはブルー系。ジョニーにとってはこれが初めてのスーツだった。

 その他にもゆっくりといろいろ見てまわり、花模様のピッチャーとタンブラーのセットや新しいクッションカバー、ブブのためのボールやぬいぐるみまで買い、マスタングの窮屈な後部座席はいっぱいになってしまった。


 飲食店が多いノースサイドでロザリーを起こし、ジョニーは今日は疲れたろうから、食事も外で済ませて帰ろうと云った。喜ぶロザリーにここでいい? と尋ねてステーキハウスのパーキングに車を駐め、ジョニーは窓際の席が空いてるといいなと呟いた。その見やった窓から見えるよう、ブブを外に出し、水を置いてリードをバックミラーに繋ぐ。おとなしく待ってるんだぞと云い聞かせると、わかったのかブブはその場におすわりし、きゅうんと鳴いた。

 愛する妻と、我が子同然の可愛い愛犬を連れてお気に入りの車でドライブに出かけ、ショッピングを楽しみ、そして締めくくりにちょっと贅沢な食事。

 この日はジョニーにとって、これまで生きてきたなかで最高に幸せな一日であった。




       * * *




 連邦捜査局FBIシンシナティ支局に設けられた一室で、サムは備品室から借り受け、新たに増やしたホワイトボードに貼った資料を眺めていた。

 隠し撮りした金髪の男の写真には『魅惑の殺人鬼The Fascinating Killer』というマスメディアがつけた異名と、『Jonathan Sogard』という名前が書かれていた。ジョナサン・ソガード。一九五〇年生まれの二十四歳、身長5フィート9インチ。前科なし。W&Gという、主に自動車部品を扱う下請けの小さな製作所に勤めている。転職歴はなし。工場が買収されたときも解雇されずに残っている。

 シングルマザーの母とずっと二人暮らしであったが、半年ほど前にその母親が亡くなり、以来ロザリー・ブラニガンという事実婚の妻と暮らしている。飼い始めたばかりの犬も一匹。

 普段ジョニーという愛称で呼ばれているソガードは、子供の頃から吃音に悩んでいたらしい。今もスムーズに会話ができるとは云い難く、職場ではよく使う言葉を書いたカードの束をベルトにぶら下げていて、相手が聞き取りづらいときはそれを示して見せたりするという。性格はおとなしく、仕事は真面目、酒は多少嗜むが煙草やドラッグはやらず、誰に聞いても良い評判しかない。

 実際、聞き込みのあとしばらく張り込んで様子を窺っていたが、ソガードのどこにも残虐な犯行を繰り返してきたらしい狂気や陰りなど、欠片も感じられなかった。小柄で可愛らしい妻ロザリーと犬を連れて出かけたとき、尾行して遠目に見ていた若い夫婦はなにかの広告写真のように絵になっていた。ネッドが、あれが本当に殺人鬼なんですかね? と、今更ながらに疑いの言葉を吐き、思わずサムも自分は間違っているのではと途惑うほど、幸せそうだったのだ。

 しかし、そんなふうに揺らぎはしても、サムはソガードが殺人鬼であると確信をもっていた。

 朝昼兼用のチリドッグに齧りつきながら、誰かが映画スターのようだと云った端整な顔を、サムはじっと見つめた。

 連れ込み宿のマイラに写真を見せたところ、あの夜フロントの前を駆け抜けて出ていったのは間違いなくこの男だと証言が取れた。もしも街娼のメイジーが死んでいたのが彼処の部屋だったなら、今すぐ重要参考人として引っ張るところだ。だがメイジーはそのあと、ソガードを追ってホテルを出ている。

 なにかがあって、車で連れ去ってから殺したか。しかし、今あるあの車はつい最近購入したばかりらしい。犯行現場への移動に使った車があるはずだと睨んでいたサムは、ソガードがそれまで車を所有していなかったと知り、首を傾げた。

 もし犯行に盗難車を使用していたとしたら、その都度、適当な場所に乗り棄てているだろう。その場合、探しあてるのはほぼ不可能である。車内にうまくすると凶器や、なにか被害者の遺留品や髪、爪などがみつかるのではと朧気に抱いていた期待は、これですっかり立ち消えてしまった。犯行を止めてから買った車だなんて、肩透かしもいいところだ。

 そんなことを考えていたところへ、ネッドがコーヒーをふたつ手に戻ってきた。どうぞとひとつをデスクに置き、ネッドは「いい話と、悪い話のようでひょっとしたらいい話、どっちから聞きます?」と云った。

「なんだそりゃ。どっちでもいい、順に話せ」

 はい、とネッドはおどけた表情をしてみせ、椅子に腰掛けた。

「ジョニー・ソガードは毎週欠かさず日曜礼拝に通ってます。それだけじゃない、月末にあるバザーなんかもしょっちゅう手伝ってて、自分と同じように言葉に不自由がある子供らへのボランティアにも熱心、どこで聞いても良い評判しか集まりません」

「それは、いい話のほうなのか?」

「悪いかもしれないけどいい話のほうです。まさかこんな信心深い奴が連続殺人犯って思っちゃいますけど、日曜礼拝っすよ? 云ってたじゃないっすか、土曜は犯行現場まで片道三時間以内の理由です。で、もうひとつがいい話です……あの車、最近買ったなんて大嘘っすよ。所有者登録も保険の加入も、調べたら七三年の一月でした」

「犯行が始まってすぐじゃないか!」

 サムは驚いた。「じゃあ、奴はあの車を殺しのために買って、これまで――一年と八ヶ月ずっと、どこかに隠してたってことか!?」

「そういうことになりますね。犯行を止めてから八ヶ月経って、もういいだろうって普段乗り始めたんでしょう。あの嫁さんが車が欲しいとかって云ったのかも。家族が増えると買い物も増えますからね。犬もいるんだし」

 サムは話を聞きながら、じっと自分を取り囲んでいるボードの資料を見やった。

「しかし、一月か。初めの頃の犯行時にはなかったわけだな」

「そうなんすよ。それに一連の被害者はみんな犯行現場から動かされた形跡はないですし、なにか持ち去られたりもしてないっぽい。物証は無理じゃないっすかね、これ」

「無理かどうかは調べてみにゃわからん。よし、令状取ってくる」

 サムはそう云い、鼻息を荒くして部屋を出ていった。だが――

 その十五分後、サムは機嫌を急降下させて戻り、いきなり毒づいた。

「――くそったれ!! 金髪のハンサムが犯行が始まった頃に買った車を隠してたってだけじゃ、令状は出せんとさ!」

「あー……、まあ、そんな気はしなくもなかったっすけど」

「しかも、犯行が止まったままの状態が続くようなら、捜査もいったん打ち切りにするとか云いやがった! もう犯人はすぐそこにいるってのにだ! 二言めには証拠証拠って――」

 まるで次の犯行を待っているかのような言い種だった。当局にとっては、さらに被害者が増えようとも、犯人を確保し事件を解決することのほうが重要なのだ。

 ぎり、と唇を噛み、サムはがたんと勢いよく椅子に腰を落とした。

 怒りはなかなか収まらない。気を落ち着けようと、サムは煙草を咥えながら、ホワイトボードにびっしりと貼られている現場写真を見やった――三十五人の被害者たち。命の火が消えた三十四ヶ所の現場の、その凄絶な光景。女というものになんの恨みがあったのか、決まって二十ヶ所以上を滅多刺しにされている遺体の写真は、どれも着ていた服の色などわからないほど自らの血に塗れている。深夜の犯行とはいえ、これまで返り血を浴びた怪しい男を見たなどの目撃情報がほぼ皆無なのが不思議なほどだ。

「……奴があの車で獲物を狩りに行ってたのは間違いないんだ。必ず痕跡はある。あるはずだ」

 そう云うとサムはおもむろに立ちあがり、上着を手に再び部屋を出ようとした。ドアのノブに手をかけるのを見て、ネッドが「サム? 今度はどこへ」と腰を浮かせる。

「おまえはいい。ちょっと鑑識部に行ってくる」

「鑑識部?」

 ネッドは眉をひそめて首を傾げたが、その一瞬後「くそっ、まさかでしょ?」と呟き、慌ててサムの後を追った。




       * * *




 日曜の朝。ウェイトレスの仕事は休みを取り、ロザリーは朝食の後片付けをしているところだった。テーブルの上の皿やタンブラーを下げ、カッティングボードといっしょに置きっぱなしだったピーナツバターの空き瓶をごみ箱トラッシュカンに棄てる。

 ジョニーはブブを連れて朝の散歩に出ていて、帰ってきたらシャワーを浴びて着替えると云っていた。

 友人の結婚披露パーティは十時からと招待状に記されている。まだ時間はたっぷりとあるが、向かう途中で注文してある祝いの花を受け取るため、花屋に寄らねばならない。どんなパーティかしら、どんなごちそうがあるかしらと浮かれ気味なロザリーは、さっと洗い物を済ませると早めに支度をしてしまおうと二階に上がり、バスルームへと向かった。

 シャワーを済ませると髪を乾かし、ロングヘアをくるくると捻りながらまとめてアップにする。前髪だけ太いカーラーで巻いておき、ロザリーはスリップ姿でドレッサーの前に坐ると化粧を始めた。普段はリップを塗るだけなので、濃くなりすぎないように気をつけなきゃ、と丁寧に下地から塗っていく。

 そうして、ジョニーにもまだ見せたことのない特別な日の顔ができあがると、ロザリーは時計を見てまだ早いなと思いつつ、勿忘草色のワンピースドレスをワードローブから出した。今日のために先日、ジョニーが買ってくれたものだ。

 買いに出かけた日に店で試着したきりのドレスを身に着け、ロザリーは鏡の前でくるりと一周した。ポーズを決め、まだカーラーをつけたままであったことに気づいて思わず声をあげて笑う。

 再びドレッサーの前に腰を下ろし、カーラーを外して前髪を整えていると、そこへ足音がしてジョニーが戻ってきた。

「おかえりなさい」

「た、ただいま。……あれ? こ、この美しいレディは、どこのお姫さまかな」

 ロザリーはふふっと微笑み、立ちあがってジョニーの頬にキスをした。

「ブブのあし、ちゃんと拭いてくれた?」

「うん。ま、待ってて。俺もすぐにし、支度するよ」

 ジョニーはそう云って、バスルームに入っていった。ロザリーはワードローブからジョニーのスーツやシャツを出しコートラックに掛けると、なにか飲もうと階下したへ下りていった。

 ロザリーの足音を聞くと、ブブがぱたぱたと尻尾を振りながら駆け寄ってきた。「ブブ、お散歩は楽しかった?」と声をかけながら、飛びついてくるブブを抱きあげる。額のあたりにキスをし、床に下ろしてやろうと屈んで下を見ると――

「なに!? 肢は拭いてもらったんじゃなかったの? ブブ……、この茶色いの……やだこれ、ピーナツバター!?」

 ドレスの裾と胸許に、点々と見慣れた薄茶色がついている。ロザリーは慌ててキッチンの布巾でその汚れを擦りながら、ゴミ箱のほうを見た。

 ゴミ箱は倒れて中身が溢れ、棄てたはずの『SKIPPYスキッピー』の瓶が床の上に転がっていた。なくなったから棄てたとはいえ、底や縁には掬いきれなかったピーナツバターがへばり付くようにして残っている。そして、その周りにはブブの足跡がスタンプのように続いていた。

「ブブ……だめじゃない。あぁでも私が悪いのね……洗って棄てればよかった」

 ブブの肢と床を雑巾で拭き、次に布巾を水で絞ってドレスもまた何度か擦ってみたが、ピーナツバターの汚れは伸びて広がるだけでまったく落ちなかった。初めよりも酷くなってしまった染みに、ロザリーはどうしよう、と困っていたが。

「……これじゃ着ていけないし、しょうがないわよね……」

 ジョニーに謝らなくちゃ、と呟きながら、ロザリーはまた二階へと上がっていった。




       * * *




「サム、やっぱりまずいですって。俺なんかに云われなくたってわかってるでしょうけど、なんとか他の説得材料をみつけて令状を取らないと」

「わかってる。強引な手なのは百も承知だ。だが、これで予想通りのものがみつかれば、そこを突いて自供させることができる。もうそれしかない」

 サムとネッドは倉庫にいた。あの、ずっと存在を隠されていたマスタングが、今ソガードの家の前ではなく、眼の前にあるのだ。


 朝から犬を連れて出てきたソガードが、散歩に行くのかと思いきや車に乗り、この倉庫に入っていったときは何事かと思った。ソガードは車を中に駐めると、犬を連れて倉庫を出ていき、家ではない方向へと歩いていった。やはり散歩らしい。

 どうやらこの倉庫が車をずっと隠してあった場所のようだ。今日は車以外の手段で遠出でもするつもりなのか、いたずらや盗難防止のためここに駐車したのだと思われた。


「こんなチャンスは滅多にない。奴はいま犬の散歩で、戻ってきてもここじゃなく家に帰るはずだ。調べるなら今だ」

「……知りませんよ。自供させられればいいですけど――令状無しで不正になんかみつけたって、意味なんかないですからね!」

「わかってる!」

 ネッドの云うことは正しい。もしもこれでソガードが連続殺人犯だとはっきりしたとして、ここで今から不正にみつけようとしているものは、裁判では証拠として扱われない。

 しかしサムには、これ以上なにをどうしたって捜査に進展が見られることはないだろうとわかっていた。かといって、犯行が再開されることを待ち望むなどありえない。これ以上、被害者を数えるのはごめんだ。このまま手をこまねいているよりは、奴が本当に連続殺人犯だと確かめるほうがましではないか。

 ――奴に手錠を掛け、引っ張って聴取さえできれば。裁判ではこの証拠は無効になるなどと、取調室で説明してやる必要はない。自供させられればいいのだ。もしも裁判で手段が問題視されたとしても、これだけ世間で騒がれた〝魅惑の殺人鬼〟だ。仮に無罪放免になったとしたって、報道によって顔と名前は全米に知られるだろう。そうすれば、三十六人めの被害者が出る可能性はぐっと減る。

 サムは小脇に抱えていた紙袋からワイヤーハンガーを取りだした。ネッドが天井を仰ぎながら「そんなもんまで持ってきてたんすか!」と呆れる。サムはそのハンガーを伸ばし、一方の先をフックのようにV字に折り曲げた。

「できるんすかぁ? そんなこと」

に実践して見せてもらったことがある。かなり昔だがな」

 フックの側を、サムはウィンドウとウェザーストリップの間に差しこんだ。勘と感触だけでロックの位置を探し、繰り返しワイヤーを上げ下げして、ようやくロックの解除に成功する。

 よし、やったぞとドアを開け、次にサムはミストスプレーのようなものを取りだした。

「返り血を浴びたまま帰る莫迦がいるわけがない。必ず着替えかなにかを用意していたはずだ。しかもどこかに棄てたりもしていない。そんなものがあれば、いくらなんでもこれまでにみつかってる」

 ここに来たときは困りきった顔をしていたネッドも、「犯行のたびに服が減るのも困りますし、いちいち処分するのはリスキーっすよね。俺なら血を洗い流せるレインウェアかなんかを着ます」と、サムがスプレーを撒くのを見ていた。

 ルミノール溶液――これが血液に反応すると青白く光る。反応が出たからといって、それが人間の血液とは限らないが、付着の仕方によってはかなりの手掛かりとなる。サムはシートからドアの内側、ハンドルを丁寧にスプレーをかけていった。幸い倉庫の中は、入口の隙間から微かに陽が射しこんでいる程度で薄暗い。反応すればすぐにわかるはずである。しかし。

「……光らないっすね……。足許、もっと下のほうもかけてみて」

「ハンドルは反応があるかと思ったが……くそ、手袋をしてたか」

「トランクは? 開けてみましょう。毒を喰らわば皿Over shoes, over bootsまでだ」

 なんだかネッドのほうが熱心になっているのがおかしくて、サムはくっと喉を鳴らして笑った。微かな音がしてバックドアが浮き、後ろにまわってトランクを開ける。

 中にはなにも入っていなかった。いきなり件のレインウェアがあることを期待していたわけではないが、普通なら積んであるブースターケーブルやウォッシャー液、雑巾ラグの類もなにも見当たらない。

「……綺麗っすね」

「綺麗過ぎる」

 サムはトランクのなかにスプレーを吹きかけ始めた。

 薄暗い倉庫の中、ぽぅ、と蛍のように蒼白い点が発光する。少しずつ位置をずらしてスプレーしていくと、それにつれて蛍の数は増えていき、やがて点と点の隙間がないほどの群れになった。

 まるで現場写真のネガを見ているかのようなその光景に、ネッドが絶句する。

「こいつぁ……」

「おまえの云うようにレインウェアだろうな。犯行のあと脱いでここに入れてたんで、ラゲッジマットを外して洗ったんだろう」

 水や洗剤で血の色を落とした程度では、ルミノール反応はごまかせない。

「決まりだ。間違いない――ソガードが連続殺人事件の犯人、〝魅惑の殺人鬼〟だ」









[Track 06 - Yes It Is 「シリアルキラー、ジョニー・ソガードの終幕」 ④ へ続く]

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