フローズンエロイカ

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第1話 しずく

君に恋したのさ。だから、私は君のためなら何でもするよ

「でも、僕はあなたのことをよく知りませんから……」

「じゃあ、これから知っていけばいいじゃないか?」

そう言うと彼は僕の手を取り、自分の顔に押し当てた。彼の頬は冷たくて、滑らかだった。

まるで、氷を触っているようだった。

彼は僕を見つめながら言った。

その瞳は潤んでいて、妖しく輝いていた。

そして、ゆっくりと目を閉じた。

長いまつげが微かに揺れていた。

氷の彫刻っていつまで経っても溶けないよね? 僕はそんなことを考えながら、ただ呆然としていた。

彼が目を開けて再び見つめてきた時、僕はようやく我に帰った。

そして、慌てて手を離そうとしたのだが、彼はそれを許してくれなかった。

僕の手を掴んだまま、彼は続けた。

永遠の命なんて興味がないかい? それはどんなことなのかな? 君は永遠を手に入れたら何をする?

それとも何もしないかな? まぁ、どっちでもいいや。

とにかく、私は永遠を手に入れたんだ。

どうして……? 君の魂が燃え続けるかぎり




「おい!起きろ!」

誰かが僕を呼びながら身体を揺すっていた。

僕はうっすらと目を開けると、そこにいたのはクラスメイトの女の子だった。

彼女は眉間にしわを寄せて、怒っているような表情をしていた。

「やっと起きたか」

みんなが一斉に笑い出した。

何事が起きたのか分からずに周りを見ると、そこは教室の中で、机の上に突っ伏して眠ってしまったらしいことが分かった。

授業中に居眠りしてしまったようだ。

時計を見たらまだ昼休み前で、先生の話を聞いているうちに寝てしまったようだった。

あれは夢だったのか……。

僕は胸を撫で下ろした。

あんなリアルな夢は初めてだ。

それにしても、なんという悪夢だろう。

こんなにも心拍数が上がっているのは、きっと夢のせいに違いない。

「お前、今日一日おかしいぞ」

隣の席に座っている男の子が声をかけてきた。

彼もまた同じクラスの生徒である。

僕とは違って勉強が出来るタイプの子で、いつも一人で本を読んでいる印象がある。


しかし、今は珍しく話しかけてきてくれたのだ。

それも、わざわざ隣の席から椅子を持ってきて、僕の方を向いて座っている。

これは相当珍しいことだ。

僕は彼を見つめ返した。

すると、彼は急に顔を赤らめて視線をそらした。

一体どうしたというのだろうか? 僕は首を傾げた。

その時、チャイムが鳴った。

起立、礼をして、そのまま解散となった。

僕はカバンを手に取ると、急いで家に帰ろうとした。

すると、また彼に呼び止められた。

しかも今度は後ろからだ。

振り返ると、そこには彼が立っていた。

何か言いたいことがあるみたいだけど、なかなか言葉が出てこなくて困っている様子だった。

彼は勇気を振り絞って口を開いた。

「君は呪われてる、妖怪から愛人の印をつけられて」

そう言うと、突然僕の右腕を掴んだ。

そして、シャツの腕の部分を大きく捲り上げた。

そこには赤いアザのようなものがあった。

僕は驚いて腕を引っ込めようとしたのだが、何故か動かすことが出来なかった。

彼の力が強すぎて振りほどくことが出来ないのだ。

彼はその部分をじっと見つめている。

まるで食い入るように見ている。

やがて、そこから顔を上げた。

そして、微笑みを浮かべながらこう言った。

「大丈夫だよ、私が守ってあげるからね」

僕はゾッとした。

背中が寒くなり、鳥肌が立った。

それからすぐに彼の手が離れた。

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