第20話 真勇者パーティー結成?

☆☆☆バレました!


げげ、ドビーの後ろに隠れてもバレるよな、仕方がない姿を見せるか。


「……どうも」


「え!」「何!」「ゴゴゴブ!」


「勇者様!」「ペルペッコ殿!」「ゴブブブ!」


「いいえ、今は過去勇者様でしたね、現行する勇者様はジエイミ様でしたので、まさか存命とは思いも寄らず……よくご無事で」


「ペルペッコ殿! よもや生きていたのか、ジャークゲドウとの戦いで命を落としたと……?」


「ゴブゴブ!」


バレてしまったものは仕方がない。自分は彼女たちに自分のこれまでの経緯を話した。


自分が最弱であること、そもそも偽物の勇者であること。


「ペルペッコを名乗っていた時は裏で勇者機関を調べていた。そんな時に現れたのがアナスタシアだ」


まぁ、適当に誤魔化したりはする。辻褄を合わせるのも得意なのだ。


以外にも三人? いや、二人の反応は良い方向だった。今まで騙していたことについては申し訳がないと思っている。


「そうだったのですか……過去勇様」


なんだその呼び方。


「まさか、ペルペッコ殿が先代の勇者殿だったとは……いや、確かに顔は同じなのだが、勇者のオーラ全くしてなくて気付かなかったぞ……」


まぁ本当に勇者じゃないただの村人Aなんですけどね。


「だがペルペッコ殿はあの時言ったぞ? チャバネイルの件が片付ければ牢に入ると、それを無碍にするとは……」


そうやあ捕まる予定って言ったよな。


「そもそも自分は無実だ。大体容疑が掛かっていたのは、偽物の勇者サイン販売だろ? だが本人が書いていたのだからそれは本物だろう。あの時は自分が元勇者であると知られるわけにはいかなかったのだ。騙して悪かったな」


「それは……そうであるな、こちらこそ失礼した」


その場の勢いで誤魔化せたぁ……セーフ。


「ゴブブブブ! ゴブ! ゴブブブ!」 


何言ってるかさっぱりだ。いいや適当で


「ジ〇ジ〇で好きなのは?」


「五部!」


言いやがった。自分は四部。


☆☆☆真勇者パーティー?


「それよりも、ここにいるメンバー同士の恨みはあれど互いに利害は一致しているはずだ。ジエイミの捜索。これを皆でしてみるのはどうだろうか?」


圧倒的な魔力を誇る、元勇者パーティーのマジョーナ・アンデ。


圧倒的な突破力。そして防御力を誇る。元勇者パーティーのヤィーナ・イッツ改めドビー・メガデス。


圧倒的な炎魔法を操る、現勇者パーティーの激辛ゴブリン。


圧倒的な……なんだろうか、メイド服を着る元暗殺者。現勇者パーティーの……メイドさん。


圧倒的な……くっ殺せ! と言わせたくなる女騎士。現勇者パーティーのアナスタシア・アナ・イーヤクラフト


ジエイミ不在の真勇者パーティー(仮)が結成される。


「エクシリオかいるなら心強いな!」


「いや待て、自分は戦闘に参加しないから、仲間になる必要ない」


「おいおい、それはあんまりだぜ、自分だけ仲間にならないなんて」


「貴方の実力は確かですよエクシリオ。確かに戦闘面では頼りになりませんが……」


「二人がジエイミと自分に取った行動忘れてないからな、そもそもこの中で一番役に立たないのは自分だ。今から言っておくが自分は絶対追放されるぞ! 全く貢献しないぞ!?」


「しないって! そもそも俺がジエイミを追放したのはさっきも言った通り戦いから遠ざけるためだと!」


「そもそもあんたは自分を見捨てようとしただろ、ダンジョンで最弱と知りながら、アークジャドウの前に立たせやがって、マジで死ぬかと思ったんだからな!」


「ぐぬぬ……それは……お前なら乗り越えられると信じてたからであって、決して見捨てたわけではない。現にこうして生きているのだから」


結構言い返してくるなこいつ。


「自分を見捨てた奴と一緒に行動できるわけないでしょ、無力であるともう証明されているんだから!」


「……エクシリオ、本当はジエイミに会うのが怖いだけじゃないのか?」


そう、自分はジエイミを恐れている……だからこうやって逃げ続けてきたんだ。それはもうすでに『追放モノ』だからなんて理由ではないことも気付いているさ


彼女は自分を信頼してくれていた。


彼女の中での自分は、理想の勇者そのもの……だけど、全てをさらけ出した自分が彼女の前に現れれば失望される。


それがダメなのだ。どうしてか、ジエイミに失望されたくないと思うのは……


他の誰かに最弱だの、無能だの言われても平気だ。それは事実だから。


だけど……彼女だけには『最高にかっこいい伝説の先代勇者』として憧れの対象であってほしいと願ってしまう。


ジエイミは勇者となって、世界を救うために命を削ろうとしている。


こんな状況にも関わらず……自分はやっぱり臆病なのだと痛感した。


「あぁ、怖いさ、生憎だけど……自分はジエイミの意見に賛成だ。彼女が一人で決めたことだろ、世界を守る勇者なんだからさ……そのために命を使うのは当然だろ、それが勇者の摂理なんだから」


「お前……最低だな! 見損なったぞエクシリオ!」


ドビーに胸倉をつかまれる。最低であるなんてとっくに知っている。


「知っているさ、自分を殴っても解決しないぞ? それに恥ずかしくないのか? こんな弱い奴をいたぶって……あんたには元勇者パーティーとしてのプライドはないのか!」


「お前にだけは言われたくないな」


そう、自分には元々プライドなんてない。


「ジエイミはさ、臆病な子なんだよ。優しさだってあるし、責任感だって強い。いつだって失敗してくよくよしている……でも、その心に秘めたものはとても強いんだ」


プライドなんてないはずだ。


「それに……こんな最低な奴の言ったことを真に受けて、一人になるなんてさ……飛んだ大馬鹿だよ、何が世界を救うだ。何が魔王を倒すだ……世界を救えたとしても自分が死んだら意味がないだろうに」


「エクシリオ……お前は」


「あぁ……そうさ、会うのが怖いんだよ。信頼してくれていた彼女の期待を裏切るのが怖いんだ。再び会った時に彼女の失望された目で見られたら、立ち直れなくなっちゃうんだよ……」


久々に感情を吐露した。ヘタレであることは重々承知だ。


『エクシリオさん……本当に弱かったんですね。尊敬していたのが間違いでした……』


脳内で再生してもやはりきつい。


回りからの失望はたいして気にならなかった。ジエイミに失望されることに比べればましだ。


「……だから、自分はあんたらの仲間になるつもりはない。シン・勇者パーティーに加わることはないんだ。先代勇者伝説は伝説のままでいい!」


それが自分が出した答えだった。


「本当の腑抜けだったみたいだな、エクシリオ・マキナ!」


「でも……協力はするさ、自分なりにジエイミを捜索する。生憎自分はエグゼクティブアイドルプロデューサーだ!」


―――第四章。完!

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