第19話 新旧勇者パーティー大集結!


☆☆☆闘技場にて


自分は闘技場に連れてこられたが先程までの喧騒は消えもぬけの殻だった。


「誰もいないではないか……魔王が出たというのは事実なんだよな? マジョーナ」


ドビーは周囲を詮索する。


はぁ、良かった。誰もいないならそれはそれで、魔王と対面したくなかったし……


「いいえ、確かに間違いはありません。探知で明らかに異常な魔力の痕跡を見つけました。これは恐らく魔王のものです」


こちらは全然感じないです。


「つまり……戦いはもうすでに終わったということか? ならばジエイミは……」


「私の意見ですが戦闘は行われていないでしょう。勇者と魔王が対決して闘技場が元の形を保てるわけがないです。恐らくはラースムドウがジエイミに倒されて回収しにきたといったところでしょう」


本当にジエイミって勇者なんだな……あの四天王倒すとか


「ならばそのジエイミはどこへ行ったという!」


ドビーはジエイミが見つからないことを焦っている。


「落ち着いてください、ヤィーナじゃなくてドビー。少なくとも彼女は無事なはずです。そうでなければ魔王たちが撤退する理由がない。街は滅ぼされています」


「それもそうか……? 誰かいるな」


すると三人の人影が見える。あれって!


「失礼する! 貴殿らは勇者を探していると見て間違いはないだろうか!」


金髪の騎士……自分は彼女を知っている。


アナスタシア・アナ・イーヤクラフト……自分がペルペッコ・モンタージュを名乗っていた時に出会った近衛兵だ。


すぐに巨体のドビーに隠れる。


「知っていると思いますが、現行の勇者パーティーです……私の立場上あまり見つかるのは得策ではないのですが……仕方がありませんか」


マジョーナの説明に感謝する。


現行の勇者パーティー……って、ジエイミの仲間だというのか……


それに、あの奇抜なミニスカネコミミメイド服。間違えるはずがない。あの屋敷にいたメイドさんだ。


「お久しぶりですね、マジョーナ様……まだ勇者機関を続けていたとは」


「裏切り者の分際で図々しく勇者パーティーに居座るとは! メイド!」


え、この人までメイド呼びなの? あ、そうか、マジョーナとメイドさんは元は同じ勇者機関だった。


「ゴブゴブ!」


いつぞやの激辛ゴブリンもいるし……


こいつらはジエイミのパーティーメンバー。それも全員自分と関わりのあるやつらで構成されている。


そして旧勇者パーティーもこの場に居合わせているのだ……


「今はその遺恨は水に流しましょう……勇者ジエイミはどこに行ったのです」


「マジョーナ様の反応を伺うに、この事態はそちらでも想定外の出来事だったということですね。情報を共有しましょう」


すると、メイドさんは手紙を取り出す。


「私がこの場に駆け付けた時には既に魔王軍は撤退していました。同じくその場には既にジエイミ様も行方知らず。そしてこの手紙が残されていたのです」


『この手紙を読んでいるのがパーティーメンバーであると願って書きます。魔王と直に対面して自分の無力さを痛感しました。


今回の騒動も私が大会に参加したから起きたことです。そのせいで多くの関係のない人たちを巻き込んでしまいました。


魔王の狙いは私です。誰も悲しませないためこれから単独行動します。心配しないでください。一人には慣れていますから。


誰にも負けない強さ、信頼するエクシリオさんすら超えて強くなるために一人で戦うことを選びます。


この命と引き換えにしえも魔王を倒します。それが勇者としての私の使命です。ジエイミ・メダデス』


「じゃあ、ジエイミは一人になったっていうのか! それに命を懸けるって……クソ!」


ドビーは嘆き悲しんだ。


「自分の命を何とも思わない精神は勇者に相応しく素晴らしいものです。でも、今の彼女では魔王に勝てない。彼女の行動はあまりに愚策です。一刻も早く見つけなければ!」


マジョーナは結構勇者信仰が強いということが見て取れる。


「……ジエイミ様は行方を晦ませました。私達も置き去りにしていくなんて、巻き込みたくないのは分かりますが」


「何としても止めなくてはいけない……あの人の願いだ。そして俺自身だって彼女の死を望んでいない!」


「私も同じです。今は亡き先代勇者から授かった想い『魔王を犠牲なしで倒す』こと……そのために私はジエイミ様に付き従っていました」


……え?


「私は……ジエイミ様を死なせないために行動していたというのに、不甲斐ないと笑ってください」


「気に病むなメイド殿。それは私とて同じこと、努力した戦闘能力と不屈の精神。私達は彼女の勇者であるの部分しか知らなかった。誰もジエイミ・メダデスを理解してあげなかったのだ」


「ゴブゥ……」


なるほど……仲間を心配している。いい仲間に出会ったじゃないか、ジエイミ。


「ところで、先ほどから隠れている御仁がいらっしゃいますが……いい加減姿を現したらどうですか」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る