第18話 こうして面倒ごとに巻き込まれていく最弱の元勇者です


☆☆☆奴隷解放!


「すげえこんな戦い、あたしだって見たことねぇよ……名のある冒険者達だってここまで洗礼された動きしてないさ」


「イルミル意識取り戻していたのか、大丈夫か?」


「あぁ、それよりさ、話を聞く限りお前って勇者だったんだな……」


「……一応は、だけど今の自分はエグゼクティブアイドルプロデューサーのスシデウス・ヤスモアキだ。それ以上でもそれ以下でもない」


これ言ってみたかったセリフだ。


「お前が勇者なら納得がいくな、四天王の時に見せた咄嗟の判断も……ほんとにすげぇやつだったんだって」


「お姉さんも聞きたかった。ユーシャインってやっぱ勇者とかけているんだよね!」


「……そう思ってもらって構わない」


「凄い……私達実は元勇者様の奴隷だったんだ!」


「あぁ、それだけど……実は君達奴隷じゃなかったんだよ。この腕輪も偽物だぞ?」


奴隷になれば名前を知られるからな。


「「「えぇぇぇぇ!」」」


瓦礫は風魔法で消し飛ばし無傷のマジョーナが現れる。


「不意を突かれました……私も本気でいかなければなりませんね。ユメちゃん・ドンパチ!」


「最初からそうしてもらえると! グラビティ・オーガ!」


その後も交戦を続けているが拮抗している。


「……どういうことですか! スシデウス様! 私達奴隷じゃなかったんですか!」


「言われてみればスシデウス君一度もお姉さん達を命令してなかったよね。全然気づかなかった。あ、でもお願いはしてたよね? お姉さんつい答えちゃった。騙したな〜」


なんで嬉しそうなのこの人は……

 

「え、じゃあ、あたしらアイドルやらなくてよかったのか? おい、どうなってるんだスシデウス! 今迄ずっと騙していたのか?」


やはり、怒りを見せたのはイルミルだった。どのみちこの真実を伝えるためには避けては通れないことだろう。


「奴隷だとかそういう問題は些細なものだ。君達も全員最初はいやいやだったが、今、アイドルをやって後悔しているか?」


「……確かに今はよ、アイドルやるのは楽しいって思うが」


「それに自分がついていた嘘で君達は、何か不利益を被ったか?」


「今までずっと信じてきたものが全部紛い物だったんだぞ、感情が納得できないんだよ!」


「ここで三人に人生を素晴らしく生きるコツを教えよう」


「おい、まだ話は終わってないぞ!」


「騙されたり裏切られたりなんてことは生きてれば沢山あるものだ。そんな悔しい感情をいつまでも引きずるより、楽しかったことや嬉しかったことを噛みしめて生きていけ! それに三人の築き上げた絆は決して偽物では無いはずだ!」


あやふやで誤魔化す。


「……流石は勇者スシデウス様です!」


「コルルナの言うとおりだ。それにアイドルにならなければ救えなかった命だってあるだろう?」


トルティのことも利用させてもらう。


「で、でもよ――」


「――それに今の君たちは奴隷じゃない。アイドルだ。とっくに枷は外れているのだからもっと喜ぶべきではないか?」


「……まぁ、そうだよなぁ……あたしはアイドル。ユーシャインだ。奴隷じゃない」


「お姉さんも奴隷……じゃないんだね。アイドル」


「私は……アイドル……」


上手く丸め込めた。


「そう、君達は自由に生きていいんだ!」


「はい! ありがとうございます! スシデウス『さん』!」


こうして彼女達との奴隷関係は終わりを迎えたのだ。


☆☆☆突然戦いが終わります。


「ドゴーン・クルクル!」


「グラビティ・バリア!」


ユーシャインとの件は解決したが、こいつらはまだやり合っている。


「ずいぶんやるな……魔法の独自性が異常すぎるぞマジョーナ・アンデ!」


「私の魔法を通さない装甲……流石はタンク。でもこのままでは埒が明きませんね……まさかこれほどまであなたが強くなっているとは……おや」


圧倒的な戦闘力を持つ二人の前に、伝書鳩が飛んできた。


マジョーナはその手紙を読む……


「……なっ! 魔王が闘技場に現れた?」


その言葉にドビーの手も止まる。


「どういうことだ? あの場にいたのはラースムドウだけだろうに! ジエイミは無事なのか!」


「それに四天王最強と呼ばれた『沈黙のトークビドウ』も!」


もう一人の四天王か。そうやあどんなやつなんだろうな……さすがにもう関わりたくない。


「……ここは一時休戦だ。マジョーナだって勇者が負けることを望んでいないはずだ」


「それもそうですね……」


二人は剣を収める。これで一安心だ。


「今すぐ闘技場に戻るぞ。エクシリオも一緒にこい!」


……え? 自分も?


それに魔王と四天王最強のやつがいるとか危険地帯すぎる。命がいくらあっても足りない。


「あ、足手まといを連れていくというのか? 承知の上だと思うが自分は弱いんだぞ? 魔王とか一撃で負ける自信がある。意味がないんだ! 死ぬぞ!」


「自分でそれ言うんですか、スシデウスさん……」


「命は惜しいんだよ、コルルナ」


「確かに彼に同行してもらった方がいいでしょう。仮初とはいえ一応は勇者でしたし。先代勇者が生きていたとなれば、魔王の不意を突ける可能性もあります」


要するにデコイじゃん。


ドビーに担がれる。


「ってことだ。悪いなエクシリオ! 一緒に来てもらう」


「なんでぇぇぇぇえぇ!」


抵抗虚しく、闘技場へ連れていかれることになりそうだ……最悪だ。


「ヤィーナ……じゃなかった。ドビーでいいのか、あんたも最初から自分が弱いって気付いていたんだな」


「あぁ、正直いつ死ぬか分からないからヒヤヒヤしたんだぞ。だがお前は最初のダンジョンを見事に己が力で乗り越えた。大した奴だよ」


あれは虚勢で乗り切っただけなんですけど、大体自分の作戦ってネタが割れてれば通用しないんだよ。


「自分が弱いと知りながらも、数々の脅威を潜り抜けたその実力を俺は買ってる。だから連れていくのだ」


えぇ……嫌なんだけど

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