第12話 決闘に乱入は定番です!


☆☆☆アイドルとおしゃべり!


のじゃ王女の動向などいろいろ調べることはある だろうが、今はいい。天光のポンチ。あいつはかなりの実力者だと見込んだ。


確かにオッズは低いが、今までの失った分だけでも取り返さなければ……!


今回は関係者席からユーシャインと一緒に二回戦の観戦だ。


「あ、スシデウス様! どうして控室きてくれなかったんですかー」


「あぁ、少し迷子の子供の世話をしていてな、親御さんの元に届けていたのだ。すまないな」


嘘は言っていない。


「え~そうなのー言ってくれればお姉さんも手伝ったのに~スシデウス君。えらいえらい」


「君達には君達にしかできない仕事があるのだよ。それを優先してくれればいいんだ」


「そんなことより、お前は今回の試合……どっちが勝つと思うんだ?」


仮にも戦闘奴隷なだけあり、武道大会に興味津々なイルミルである。あちらの世界で言う総合格闘が好きな女子みたいな感じだろう。


「天光のポンチだろうな。だって閃光のセンチ倒したんだしめちゃ強いじゃん」


「まぁ、ポンチだけどよ~ドンドンコってやつあまりに謎すぎないか? あたしは――」


「いいや、天光のポンチだろう。頼むから天光のポンチであってくれ……」


「……お前、そのリアクション……賭けてんのか?」


「スシデウス様……賭博はほどほどにと……その様子じゃ大損こいていますね!」


「流石にそれはめっ! あ、今のお姉さんらしくない?」


集中砲火を浴びせられる。


「だって、一回戦は全員負けたんだしいいじゃん……せめて負けた分だけでも取り戻そうとしたってさぁ」


「あははは! お前には絶対無理だろ! 戦闘経験ないド素人だろ? それなのに『強そう』って理由だけで多額の金つぎ込むなんて! ただの馬鹿じゃん! 向いてねぇって! あははは!」


何も爆笑しなくても……確かに自分はギャンブル向いていないのかもしれないけどさ。


「いいじゃん。小遣いでやってるんだから……それに出る前から負けること考える馬鹿がいるかよ」


「まぁそれもそうだけどよ、ほんと、お前は馬鹿なのか天才なのかわかんねぇよな……でも、あたしたちをここまで連れてきたのは確かにお前の力だよ。スシデウス」


彼女たちとの信頼も勝ち取れている。


「スシデウス様が拾ってくれなければ私はずっとあの暗い折にいたでしょう。今では星を掴むことよりも、星であることが目標です」


「そうね、お姉さんも楽しいことがしたいって思うようになったのもスシデウス君のおかげよ」


まぁ実はこれで奴隷でもないのが困る。果たして一度も手を出さなくてよかったのかな。


「ライブ素晴らしかったぞ」


自分が手掛けたアイドルは娘を見守る気分だからか。


元居た世界のお偉いさんはどういう気持ちだったのだろうか……


「そういえば、どうして音が止まった時に魔法使ったのですか?」


「あぁ、それ聞きたかった。スシデウス魔法使えたんだな。すげぇ綺麗だったけど」


「お姉さんも驚いたよ。あれ演出として凄い綺麗だったからときめいちゃった。あ、だめよ? アイドルは恋愛禁止なのだから。ダメダメよ?」


そういえば、彼女達に魔法を見せたことなかったんだっけか。てかスシデウスになってから魔法使ってなかったか。


「それによ、曲が止まった時だって、傍にいてくれればもっとうまくできただろうし」


「動揺していたのはイルミルだけだろうに……それに、そんなトラブルが起きたところで乗り越えられると自分は信じていたんだぞ」


「スシデウス様……!」「スシデウス!」「スシデウス君……」


「歌い出したコルルナはアイドルの鑑だ。何事においても観客の満足いくパフォーマンスをできる。素晴らしい事じゃないか」


「それじゃあ頭撫でてください。ご褒美が欲しいです」


自分の胸に頭を埋めそうだ。確かに撫でてやりたいが……


ここは人の目がある。アイドルが男とイチャイチャしている所など見せてはならない……ならば!


「だそうだ。アルシュルの出番だぞ」


「あわわっ! よしよし~よくできましたね~偉い偉い~コルルナちゃん~」


そう、アルシュルに全てを任せる……それが得策だ。


「痛!」


イルミルに背中を叩かれる。死ぬからマジでやめてくれ頼むから……まじで痛い。


「馬鹿野郎! そこはお前が撫でてやるのが男だろうがよ!」


「お前らプロだろ。もう少し自覚を持ちな。てことでアルシュル。イルミルも頼んだ」


「はぁ~い!」


そのまま三人は乳繰り合う。うむ。こういうのでいいんだよ。


「うぎゃー放せぇぇ!」


女子同士のイチャイチャって最高だな、


☆☆☆二回戦初戦


そうして二回戦が始まった。


「それでは第二回戦、天光のポンチVSドンドンコ! レディーファイ!」


「勝ってくれええええええ天光のポンチぃぃぃ! お前にいくら賭けたと思っているんだぁぁああ!」


「必死すぎでしょ、少しはプライドってやつ盛ったらどうなんだ……」


そんなことも言ってられない。ここでドンドンコが勝つということはあってはならないのだ。


「そんなこといったって……?」


流れている時間が緩やかになるのを感じる。

どういうことだ。いったい今何が起きているというのだ。


「っく……やめろ。やめてくれ降参だ。だから命だけは取らないでくれ」


おい待て! それはまずい!


「ちょっとなんで降参するんだよ! お前にいくら賭けたと思ってるんだ! おい! 頼む諦めないでくれ天光のポンチ!」


時間が緩やかに過ぎていく中で唯一相手のドンドンコだけは普通に動き回れている。攻撃をしかけていた天光のポンチの元へ行く……


そこにもう一人閃光の様に駆け付けた者がいる。


乱入者か? それはあれだ。決闘シーンで良くあるやつ。知っているんだよねぇ。こういうのは大体敵のめっちゃ強い奴で……


光が輝きドンドンコを吹き飛ばす。気付けばポンチも吹き飛んでいた。


圧倒的な高速戦闘の世界。〇ムチャ視点であるので気付くのがやっとである。


やがて時間は元に戻ると、観客は悲鳴を上げる。


恐らく今のは周囲の時間を減退させる魔法の類だろう。どういう原理かは知らないが、時間操作能力は大体チートだ。


「嘘……あれは魔族だ! しかもさっきの魔法は減速魔法……四天王のラースムドウじゃないか!」


「おい! 賭けはどうなるんだよ! 無効だ無効! 早く金返せ! いて! ちょっと誰にぶつかって……ぐぼ! え、四天王? やばい逃げないと!」


四天王ラースムドウ……しかも時間操作使える奴……逃げるに限るな。


☆☆☆魔王軍四天王ラースムドウ


確かにお金は大事であるが命を優先する。この大会は勇者が参加しているのだどうにかしてくれるだろう。もしかしたら高速で突進してきたものが勇者である可能性も……


「おい、スシデウス! 早く逃げろ! お前弱いんだからよ!」


臨戦態勢のイルミルはアイドルとは思えない怯えた顔をしていた。


「早くしろってんだ!」


無理やり自分の腕を引っ張られ通路へと逃げていく。


「痛っ!」


しかし逃げ遅れたのか、コルルナが置き去りにされていた。足をくじいたのかその場から動けていない。


「「「コルルナ!」」ちゃん!」


何を迷う必要がある……奴隷として買った。元々金儲けのために利用する道具だろ。変わりはいくらだっているんだ。


「私に構わず逃げて!」


そうだ。彼女もそう言っている。コルルナは他人が傷つくなら自分が傷ついた方がいいって思う子だ。


彼女を助けて自分が死ねば、それこそもっと傷つく。リスクを考えろ。奴隷なんだぞ彼女は……それにイルミルだって怯えているではないか。


「おおっと! ここにいい獲物が……確かにかわいいな……それにおいしそうだ! おおっと! 動くな勇者! 彼女は人質にする!」


やはり逃げ遅れたコルルナが標的にされる。最悪の事態だ。


これは仕方がないことだ。見捨てればいい。死んだとしても追悼ライブなどのお涙頂戴を開けばまだまだ稼げるんだ。


確かにコルルナはアイドルとしても人気はあるし。誰よりも優しい……でもそれだけじゃないか。


それだけのために自分から危険に飛び込むことなど……


「くそがぁぁぁ!」


「って! おい、スシデウス! 馬鹿かお前は! 無謀すぎるぞ!」


繋がれたイルミルの手を引っ張り。そのままコルルナの元へ飛ぶ。


落ちていく間でイルミルの耳元で囁いた。


「……! 分かった! ランドシールド!」


「――スローレクイエム」


イルミルのシールドが自分達を包むと同時に時間は減速する。


『ランドシールド』初級の土属性防御魔法である。特に必要な技術もいらない、土属性の魔法が使えるなら誰でも使える代物だ。(自分は使えない)


「そんなシールドなど私には意味が……何?」


確かに四天王にとっては造作もない脆いシールドである。しかし、魔法自体も減速しているのだ。そのシールドが破れるのにも時間が掛かるはずだ。予想通りに!


「考えたな……だが! 残念だったな! そんな時間稼ぎは!」


ランドシールドは破壊される。まだ減速は終わっていない……スローモーションに流れている時の中でラースムドウの姿が見えた。


「何? まだシールドがあるだと! それも何重属性も?」


そう、自分の光魔法を多色のシールドに見立てる。


ただの光であり、シールドではないので突破されれば積む……だけど、その隙があれば……恐らくは!


「オーバークロック!」


「ぐおぉぉ!」


拘束で接近してきた何かが、ラースムドウを突き飛ばす。すると時間の流れが戻る。


「はぁ……死ぬかと思った。コルルナ立てるか?」


「……あ、ありがとうございます。いっ……」


「……スシデウス、あの一瞬で良く思いついたな。どのみち勇者がいなけりゃ終わりだったが」


それを実行できたイルミルも大概であるが。さすがは戦闘奴隷。


「そんなことはいい、早く逃げないと……コルルナを担いでくれ、イルミル……え」


ふと横を見ると女性が立っている。後ろ姿で分かる。あの髪の感じ……そして雰囲気も……


「早く逃げてください! ここは私が食い止めます!」


どうして彼女がここに……


「スシデウス様。どうしたんですか? 早く逃げないと! 勇者さんが時間を稼いでくれています!」


なんで……勇者が……勇者?


「あぁぁ! もう無理やり連れていくぞ! どうしちまったんだよ!」


どうして勇者がジエイミなんだ? 彼女の姿が遠ざかっていく。


あぁ、イルミルに担がれてるのか。ジエイミの元からどんどん遠ざかっていった。


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