第11話 武道大会二回戦目でハプニング! まさかの乱入者が!
〇〇〇ジエイミの一回戦目
私は武道大会に出場します。自分自身の実力が冒険者の中でどれほど通用するか確かめるためです。
数ある強豪が揃う中で試合順はトーナメント形式。一回戦の最後で待機していました。
控室で装備の確認をしていると隣が騒がしいです。
つい、聞き耳を立ててしまいました。
「そもそもどうしてここでライブすることになったんだよ! あたしは出場したかったんだって! だよなぁ! 花子!」
『えぇ……でも顔に傷とかついたらスシデウスに怒られるよ』
「そうです。イルミルさんの綺麗な顔が台無しです!」
「そうよ~アイドルは顔が命ってスシデウス君言ってたし。せっかくかわいい顔しているのに。あ、お姉さんの顔もかわいい?」
「アルシュルさんは、可愛いってより美人って感じしますね! お姉ちゃん感が強いです!」
「もうもう~コルルナちゃん~もう~」
「ちょっと! メイク崩れちゃいますからやめてください! 抱き着かないで!」
「イルミルちゃんも~」
「ちょ! なんであたしも! 放せってだ! 胸でか!」
『これは需要ある……』
「これで緊張ほぐれた? この後のライブ頑張ろうね!」
一体彼女たちは何の話をしているのでしょう。ここって確か武道大会ですよね。
巷で噂になっているアイドル? と呼ばれるユーシャインなのでしょうか。そういえばライブ? をやると聞いています。
正直に言えば私とは全く無縁の世界で生きている人たちなので興味はありません。
早く私の番にならないかな……
少しの間待つと、出番が訪れ入場口へ向かいます。
「続いての対戦は勇者ジエイミ・メダデス! 冒険者最強とうたわれた彼女が今! この武道大会に姿を現します!」
司会の声がして覚悟を決めました。相手が例え誰であれ、私は倒すのみです。
「それではジエイミ・メダデスの入場です」
「勇者!」「勇者!「勇者!」
沢山の勇者コールの中、私は踏み出します。
周囲には沢山の観客がおり、恐らく賭け事をしている者もいるでしょう。
人の真剣勝負を金儲けの道具にするだなんてあまりいただけません。
エクシリオさんだったらきっと注意していたに違いありません。
「勇者ジエイミVS装甲のフロス! レディーファイ!」
ゴングが鳴りフロスさんという図体の大きい男の冒険者は盾を構えています。
恐らくヤィーナさんと同じタンクでしょう。
「悪いねぇ、例え相手が勇者でも俺は負けるわけにはいかないんだ! メタル・バースト!」
フロスさんは私を盾に集中させ、死角から地面を揺るがし、拘束攻撃を仕掛けようとします。
恐らく私の不意を突いた作戦でありましたが筒抜けです。すらりと躱し彼へ接近しました。
「――レインボーハーベスト」
手加減を加えた魔法を盾で守れない部分に打ち込みます。
「何? メタ――ぐあっ……」
フロスさんはその場で倒れます。これで完了。
「勝者! 勇者ジエイミ! 圧倒的な実力差を見せつけての勝利でした!」
「うおおおおおおおおお!」
「勇者!」「勇者!」「勇者!」
喝采の中、私はこの場を後にします。通路を歩いていると三人と……一人? 幽霊でしょうか? 先ほどのアイドル? ユーシャインとすれ違います。
とても綺麗な衣装を身に纏い、キラキラしています。
「あ、勇者様! 勝利おめでとうございます! すっごくかっこよかったです!」
「見ていたぜ、あの程度の相手には剣すら抜く必要がないってか……あたしでも追いきれなかったぜ」
「お姉さんも驚いちゃった! 勇者様素敵だったよ!」
三人は今の自分と比べとてもキラキラしています。自身に満ち溢れており、綺麗に笑えています。
「……応援ありがとうございます。ユーシャインさん達もこの後のライブ頑張ってください」
「はい!」「おう!」「うん!」
そうして、彼女たちは私が先ほどまで戦っていた場所へ歌いに行きます……
私は……見なくていいですかね、装備を整えておいた方がいい……それに一つ不安材料があります。
〇〇〇ジエイミの控室にて
控室に戻るとパーティーメンバー達が待機していました。
「流石に相手になりませんでしたね、ジエイミ様流石です」
「うむ、それに相手を気遣って手加減もしていた。勇者の名に恥じない素晴らしい勝利だ。ジエイミ殿」
「ゴブー!」
私達は力をつけているものの、魔王軍の力は絶大でした。
勇者になってから四天王と対峙したのは一度きり、『ラースムドウ』との戦いで私は敗北しました。
周囲を減速させる固有魔法を持っていました。
『減速魔法』
でも、次に戦う時は負けることはないです。それ相応の対策も考えてあります。
「ジエイミ殿はユーシャインのライブにはいかないのか?」
アナスタシアさんに提案されます。ですが……
「いいえ、私にお構いなく。他に調べておきたいことがありますので」
「わ、私は行きたいか行きたくないか……アカゴブ様?」
「五分五分!」
「ぶぶぶぶ……ゴブリン五分五分! ぶは! 折角ですので向かいます」
メイドさんは一緒に冒険していて思いますが笑いのツボが浅すぎる気がします。
ゴブリンさんの声を五分五分と解釈しているのは本人な気がしますが……
「では、私もユーシャインを見ておきたい。アイドルがどういうものか気になってはいたのだ」
控室から皆が出ていきます。
「お気をつけて。楽しんできてください」
楽しむ……ですか、楽しむ……どういう感情でしたっけ。
〇〇〇二回戦初戦
ライブはトラブルはあったらしいですが、控室から聞こえる盛り上がりで成功したみたいですね。
二回戦が始まります。まだまだ私の番は後ですが、出場者の情報は一切見ていません。
出番は後の方ですが今回は通路から相手の戦い方を研究しておきます。
二回戦目は天光のポンチさんとドンドンコさん。
天光のポンチさんは有名な冒険者でその迷いのない剣筋は私も見習うべきものです。
それに対してドンドンコさんは私は存じておりません。
「そこの勇者さんどっちが勝つと思う?」
閃光のセンチさんに話しかけられました。確か一回戦で天光のポンチに負けた人です。
「閃光のセンチさん。どうも」
「俺はよ、天光のポンチだな。あいつの実力は確かだぜ、一回戦で油断したが負けちまったが……にしてもドンドンコって誰だ?」
「あぁっ! それは俺も知らないっ! ドンドンコって誰なのだ!」
門番のオーグさんも出てきました。
「ふふふ、君達も知らないみたいだね。あ、こんにちは勇者さん。僕は円弧のエンドロスです」
円弧のエンドロスさんも出てきます。
「まぁ、僕も知らないのだけどね。ドンドンコ……
僕を倒した相手なんだ。知らなくてもドンドンコに賭けるね」
「はぁ……私はどちらにも賭けませんよ」
「なんだよ勇者さん釣れねえなぁ~」
彼らの話を無視して二回戦を見守ります。
「それでは第二回戦、天光のポンチVSドンドンコ! レディーファイ!」
先に構えたのはポンチさんです。
「おいおい、まさか本当にこの俺、天光のポンチに勝てると思っているのか? まっさっかな! 俺の剣筋が見切れるというのか!」
そして剣を抜き、ドンドンコさんに向かっていきます。
「ソードスキル! ドンドンコエンド!」
「ま、まさか初手で『エンド』を使うとは! あのソードスキルは対象相手に発動し、斬られている事実を確定してから攻撃する。だから回避ができない! ポンチ最強のソードスキルだ!」
閃光のセンチさんの解説はとても理解しやすいです。
「勝ってくれええええええ天光のポンチぃぃぃ! お前にいくら賭けたと思っているんだぁぁああ!」
観客席からものすごい声がします。どこかで聞いたことあるような……いいえ、気のせいでしょう。
「……甘い」
ドンドンコさんは何一つ動作もせずに、攻撃に当たりに行く……?
「――スローレクイエム」
その一瞬で、何かの魔法が発動します……この魔法どこかで……すると、周囲の者たちの時間がゆっくりと流れていく感覚に陥りました。
この魔法……まさか? 減速魔法!?
「おい、どうなってやがる! 何故だ! 身体がゆっくり動いてしまっているぞ! これでは俺の剣が届かないではないか!」
「お前のソードスキルは斬られるという事実を確定したうえで攻撃する。『エンド』だろう? ならば簡単だ。確定したところで攻撃をできなければ意味がない」
のんびりと近づいてくる。
「どうだ? 意識ははっきりしているのに何もできない……怖かろう悔しかろう!」
魔王軍四天王のラースムドウ? なぜ彼がここに……
「っく……やめろ。やめてくれ降参だ。だから命だけは取らないでくれ」
「ちょっとなんで降参するんだよ! お前にいくら賭けたと思ってるんだ! おい! 頼む諦めないでくれ天光のポンチ!」
ラースムドウはポンチさんの急所に武器を突きつけています。
「お前がジ・エンドだ」
「やめろおおおおおおお!」
もうこれは武道大会ではない。殺し合いに発展する……だったらもう迷う必要はないです。
「加速魔法……オーバークロック!」
いくら習得しようにも減速魔法は使うことはできなかった。私自身に加速の魔法をかけることが出来れば彼の流れる時間に追いつくことが出来る。
ラースムドウの攻撃がポンチさんに届く前に私は駆け付ける。
「はぁぁぁ! スターシャインレイン!」
命中! 失礼ですがポンチさんを蹴り飛ばし、通路へと送ります。
「ごめんなさい!」
「なんでぇえええぇぇ!」
「勇者ジエイミ・メダデス! ふざけるなよ! 平等に流れている時間は私が全て支配する。邪魔をしてもらっては困るのだよ」
加速魔法には弱点があります。かなりの魔力を消費するのと、反応速度自体は元の時間のままですので、少しでも制御を誤ると壁に突っ込んでしまいます。
「ラースムドウ! あなたの思い通りにはさせません!」
減速魔法が解かれると会場は悲鳴に包まれました。
「嘘……あれは魔族だ! しかもさっきの魔法は減速魔法……四天王のラースムドウじゃないか!」
「おい! 賭けはどうなるんだよ! 無効だ無効! 早く金返せ! いて! ちょっと誰にぶつかって……ぐぼ! え、四天王? やばい逃げないと!」
観客は逃げ惑いパニックが起きています。
「確かにお前は強くなったかもしれない。だが、人質はここにいる全員だということを忘れない様に」
「卑怯な! 正々堂々戦えばいいでしょうに!」
だから、この武道大会を狙っていたのでしょう。
どうすれば……どうすれば、ここにいるみんなを守ることが出来るのでしょうか。
「はっはっは!」
ラースムドウは高らかに笑い勝利を確信しているかのようでした。
だからこそ、私は負けるわけにはいかないのです!
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