【完結済み】パーティーメンバーを追放する最弱勇者に転生してしまった自分はざまぁ展開から逃れるため仲間の追放を何としても阻止します!
第10話 武道大会開幕戦! 休憩時間にアイドルライブやりますが不測の事態に!
第10話 武道大会開幕戦! 休憩時間にアイドルライブやりますが不測の事態に!
☆☆☆順調に進むアイドル活動
ファーストライブを終えたユーシャインは冒険者達の間で話題となり、その後も各地に渡ってライブをすればどこでも大盛況だ。
ライブ後のサイン会も金貨一枚という高額な価格にも関わらず無数の人々で溢れかえっていた。
以前売り捌いた勇者サイン失敗を経て、現地でのみサイン会+名前入りという転売防止策をする。他人にこの方法を利用されてたまるか……売り上げは全て自分たちが独占するのだ。
「でゅふ……できれば今度はミニスカのメイド服の衣装とかお願いしたいでござる……でゅふ! 応援してますでゅふ! 一番はコルルナたん好きなオクタです!」
どこかで見たことあるオタクもサイン会に参加していた。ほんとメイド服好きだな……
「わぁ! ありがとうございます! 衣装担当に話しておきますね! オクタさん!」
コルルナは正統派アイドルだ。例えどんなにキモイオタクであっても対応は神である。
「イルミルちゃん……かわいいねぇ。結婚しよ?」
「うっせぇ! うっせぇんだよ! かわいくねえだろあたしは! キモイんだよ!」
「うっせぇ入りましたぁ! キモイ頂きましたぁ! ありがとうございま~す! やっほい!」
恐らくイルミルのファンはドMのロリコンである。
ファンサービスの観点から考えれば彼女はアウトであるが、オタク的には罵倒がご褒美らしい。
やはりどこの世界でも変態は存在しているのだ。
そしてもう一人……
「あ、テンテンくんまた来てくれたのね? ありがと! お姉さん嬉しい!」
サイン会でも胸を揺らしている。
ちょろい男はもうこの時点で彼女の虜になっている。
ちなみにおさわりは厳禁です。そういう方針で売りたくはないので。
胸のおかげかアルシュルのファンが一番多いのは仕方がない事だろう。
それに来てくれたファンの名前全員覚えてるし才能あるな。
やがてサイン会を終えると金は山の様に増えていた。
「「「「「かんぱーい!」」」」」
そして毎回恒例の祝勝会が始まる。
もちろんイルミルとコルルナはジュースを飲ませている。自分も酔いつぶれてボロが出ると嫌なので酒は飲まない。
「なぁ聞いてくれよ花子、あたしと結婚しろって言ってきたクソ野郎どもがいてよぉ」
『そう……ほんとは嬉しい癖に』
ちなみに花子とイルミルは愚痴をこぼすほど仲の良い友人となっていた。
奴隷商人はユーシャインの成功を素直に喜び、どうやら奴隷商自体をアイドル養成施設に変えようと考えているらしい。
いい事ではある。しかし他人に自分と同じようなアイドル知識があるわけではない。果たしてうまくいくのだろうかと若干不安だ。
ちなみに、元居た世界と同じようにアイドルは恋愛を禁止している。もしかしたら裏で良い人と巡り合っているかもしれないが、今ある地位と名誉を捨てるリスクを考えたらそうはしないだろう。
下手な貴族よりも稼いでる自負があるし、このままいけばアイドル帝国でも作れるのではないだろうか。
まぁ、表向きに自分はアイドルを通して夢を与えている。スシデウスなので、全員を利用しているにすぎないのだ。
「スシデウス君~お姉さんなんか変なの拾っちゃったんだよね~」
突然アルシュルに話しかけられると胸から紙を取り出す。なんでそこにしまってんだよ。酒臭いしくっつくなっての。
「武道大会~武道大会よ~かなりの兵が集まって最強の武人を決めるやつよね~お姉さん強い人好きだなぁ~」
「だから、アイドルは恋愛禁止だ。あとくっつかないでくれ頼むから」
胸が当たっている。アルシュルは自分に好意があるのか痴女なのか知らないがボディタッチをしてくる。
正直何度も押し倒そうかと思った時があったが不意に過ったジエイミの姿でその一歩が踏み出せない。要するにヘタレだ。
「ここでライブできたら~もっと人気出ると思うんだよねぇ~お姉さん提案発動! どう?」
「あぁ、検討しておく。確かに余興の中でも余興は必要だ。武道大会って大体そういうもんだし」
まぁ金になればどうだっていい、すぐに交渉に行こう。
「わぁ~褒めて褒めてお姉さん褒めて!」
「だからとりあえず離れてくれ」
「うわぁん~お姉さん振られた~」
☆☆☆武道大会開幕!
かくかくしかじか、お偉いさんと話しをつけ武道大会の休憩時間にユーシャインのライブが行われることが決まった。
この武道大会はかなりの強豪揃いでカクセイラン王国最強の戦士を決める大会らしい。
他のメンバーは控室にいるようだが、自分だけは普通に観客席に座って武道大会を観戦している。
自分がいなくてもユーシャインは運営できるほど成長しているので任せておくのがいい。
出場者達が出てきたようだ。もうすぐ大会が始まるらしい。
「おいおい、出てきたぜ、かつて五聖剣としてうたわれた剣士。刮目のロード……」
「それにま、まさか、十五盾の現メンバーの門番のオーグ!」
「何っ!? こ、こいつは……円弧のエルドロス! まさかこの大会に出場なんて……」
モブたちが説明してくれるのはありがたいけど。うん……全員知らない。正直ライブするだけだし覚えておく必要もないのだけど。
「それにこの大会に勇者も出るらしいぜ……どうなっちまうんだよこの大会!」
まじかよ、現勇者がいるのか……あまり関わりたくない。自分の正体がバレそうだし、ローブ被っておこう。
「その勇者ってのも歴代最強って噂だぜ。危険度最高ランクのモンスターを一撃で討伐しているらしい……俺は勇者に賭けるねぇ! オッズ低いけど」
ライブだけやってとっとと帰るか。折角の異世界バトルをのんびり見たかったのに。
どうやら、武道大会は賭博もやっているみたいだが危ない橋は渡らない。今回はあくまでライブを成功させることだ……賭けなどは……
「さぁ始まりました! カクセイラン王国認定武道大会! 今回のトーナメントはどれも強豪ぞろいです! 出場選手は……」
司会の美女が露出の多い恰好で目を奪われる。
「まず第一試合は、閃光のセンチVS天光のポンチです。レディーファイト!」
そうして武道大会は始まった。
「いっけぇ! センチぃぃぃぃ!」
まぁ賭けちゃうんだよな、これが……頼む勝ってくれ閃光のセンチ!
しかし願いも虚しく……
「勝者! 天光のポンチ!」
負けました……まぁ、これは目に見えていたことだし、万が一に賭けていたが駄目だったみたいだ……閃光のセンチめ一生恨んでやるからな……まぁ次行こ、次!
その後も自分が賭けたほうが悉く負けていった確率的に半分だろうに! なんで儲からないんだよ!
せめて一回ぐらい勝ったっていいじゃねぇかよ!
苛立ちが隠し切れない。
「あぁぁぁぁぁぁぁ! くそが!」
刮目のオーグ! 刮目のロード! 刮目のエルドロス! みんな強キャラ感あっただろ!
あー気分悪い、ユーシャインの控室に行こう……大体ギャンブルってのは先に熱中した方が負けなんだ。気にするな。
大体なんだよ、刮目って、負けているんだから刮目しねえよ、そもそもそんな二つ名あるなら勝てよ。
「続いての対戦は勇者――」
司会の話を無視して控室に向かった。
☆☆☆謎の少女
会場の通路を歩いていると自分と同じくローブを被った者がうろうろとしている。明らかに怪しいけど……
「のじゃ……じゃ……どこにおるのじゃ……おや、そこのお主、妾と衣装が被っておるの」
げ、絡まれた……女性のようだし、語尾にのじゃって……
「あぁ、被っているな。でも君とキャラが被ることない、随分な個性ある語尾しているのじゃじゃ!」
「そんなことよりお主は妾の従者を見かけていないか? 体が大きくて強そうなやつじゃ。めっちゃ強そうなやつなのじゃ!」
従者を探しているということは貴族だろうか。
「そんなのこの会場に沢山いるな、武道大会だぞ? 迷子なら迷子センターに……ないか、運営の方に行ってみるのだな」
「それは困るのじゃ……この武道大会には……内緒で来ており」
王女ってパターンもあるなこれ、媚を売っておく必要があるが……
「それよりこれから休憩時間中にユーシャインがライブをするぞ、恐らく人も集まるしそこなら君の従者も見つけやすいと思う」
「ユーシャイン? なんじゃそれは」
流石にそこまで知名度はないか。
「伝説を作り続けるアイドルだ。来てみろ、後悔はさせないぞ」
のじゃ王女(仮名)をライブ会場まで連れていく。
「「「ユーシャインです!」」」
ライブが始まり会場は最高に盛り上がっていた。自分が作曲し(パクっ)た歌だ。
「なんじゃこれは、戦うのではないのか? 何故歌って踊っておる? 武道大会じゃろ?」
「吟遊詩人と言えばわかりやすいかな、いま彼女たちはここにいる相手に夢を与えている」
「夢を……?」
やはり目新しい景色にのじゃ王女は彼女たちに夢中だ。
「すごいのじゃ!」
パフォーマンスは以前よりも格段に上っており、初見である者も引き込まれていた。一曲目が終わり次の曲になる時だった。
「それでは次の曲で……え? 曲が……」
突然曲が止まる。会場の空気も唖然としていた。
「どうしたのじゃ? 止まったぞ次はないのか次は」
「え、ちょっとどうなってるんだよ! 花子ぉ!」
花子の名前出すなバレるだろうが!
「あらあら……お姉さん。不測の事態に弱いのよぉ~」
と言いつつ胸を揺らし観客の視線を向かわせ時間を稼いでいる。優秀だ。
「ユーシャイン! ユーシャイン!」
自分ではないどこかのファンを筆頭にコールが上がる。そのコールは人から人へと繋がり会場一体が包まれる。
しかし一向に音楽はならない。やがてコールも途切れ途切れになる。
最悪の状況。
「なーんじゃ、結局歌えないのなら終わりではないか。期待して損をしたぞ」
のじゃ王女まだまだこれからだぞアイドルってのは。
「だが、彼女たちがこれで終わるわけない……ユーシャインは伝説を作るアイドルなんだな」
「ゆめよかがやけ~」
コルルナが一人アカペラで歌いだす。その声は自信に満ち溢れており、会場の空気を再び支配した。
コルルナに釣られ二人も最初の頃の練習を思い出すように歌いだす。
「凄い……コルルナ殿……拙者も認めざる負えないほどのハートを持っておるでござる! でゅふ!」
会場は再び活気を取り戻しユーシャインに皆ハートを掴まれている。
そうしてサビに入る直前に音響は回復する。そのタイミングで自分は光の照明魔法を発動させた。
無数の光と夢が会場に溢れかえる。その美しさ気高さに全ての観客を虜にしていく。
それは隣にいたのじゃ王女も例外ではなく。
「すごい……すごいのじゃユーシャインは!」
「そうだろ? 彼女たちが夢を与える仕事をしていると理解できたか?」
ライブは大盛況の中で終わりを迎える。
「トラブルもありましたけど会場の皆さんの応援のおかげで乗り切ることが出来ました! 本日は本当に!」
「ありがとうございました」「ありがとね!」「サンキューな」
お辞儀をして三人は引き上げていった……トラブルもあったけど成功して本当に良かった……
☆☆☆謎の少女の正体とは?
計 画 通 り !
そう、全ては自分と花子が仕組んだ演出であった。
アイドルものでよくある機材トラブル。
会場にいる皆はそのイレギュラーに戸惑いを隠し切れない。もしかしたらライブ続行は不可能なのでは? ファンの不穏を煽る中、彼女たちは期待以上の動きをしてくれた。
コルルナのアカペラ、そしてユーシャインの結束の強さを証明するパフォーマンスは恐らくアイドルを興味なかった人にまで惹かれるだろう。
そう! 特別感だ! 奇跡を演出するのだ!
絶望的な状況を打開するというカタルシスを作り、感情移入させることで、ファン達はより一層彼女たちを信仰するだろう。そうすれば更に金をつぎ込んでくれる。
最後はサビ前に音響を復旧。更に光魔法を使うことで演出した。
これも全て花子と打ち合わせをしていた。
予想以上に盛り上がり、やがて彼女たちはこの世界に誕生した伝説のアイドルとして語り継がれることだろう。
これで一生分は遊んで暮らせる金が手に入るな……
「ユーシャイン……覚えたぞ、このような者がもっとおれば世界は平和になるじゃろうに……」
「そうだろ、そうだろう? どうだいファンになったかお嬢さん?」
「うむ! 素晴らしかったぞ! ちなみに妾は獣人族の娘が好みじゃな!」
きっとここでコネを売っておいた方がいいな。いいことが待ち受けているに違いない。
「……なんだっ?」
すると、背後からとてつもない威圧感を持つ、ローブを被った使者が現れた。
何者か分からない。だけど、恐らく自分が対峙した中で一番恐ろしいオーラを放っている。
それはこちらにゆっくりと近づいてくる。
「お! 見つかったのじゃ! どこにおったのじゃ!」
どうやらのじゃ王女の従者だったらしく、合流出来たみたいだ。命拾いした。
恐らくこのプレッシャーは世界最強クラスの守護者に違いない。それを従者にしている彼女は相当な地位の人間だろう。
「……」
二人は人混みの中へ消えていく。
「ありがとうなのじゃ! また会おう! エ ク シ リ オ !」
え? エクシリオ?
「ちょっと待て! なんで自分の名前を!」
のじゃ王女を探してもこの人混みでは見つけ出すのは無理だった。
ありえないはずだ。絶対にバレてはならなかった!
何故彼女は自分の本当の名を知っていた? ここではスシデウス・ヤスモアキを名乗っている(そもそも彼女には名乗っていない)
改変系魔法は自分に使えないので名前はずっとエクシリオのままである。
それも契約や冒険者ギルドに登録するようなときにしか身分を証明するものは使わない。
実は奴隷契約もしていないので一度も彼女たちに命令を使ったことはない。エクシリオの名前がバレるからだ。実は裏切らないか内心ヒヤヒヤだった。
そもそも自分の名前を知るにはパーティーメンバーになる必要がある。
ならばなぜ……彼女は知ることが出来た……?
考えても分からないことは、考えない。それが生き残るための秘訣だ。
とりあえず。二回戦が始まる。今回は誰にも賭けないで観戦するか……絶対に誰にも賭けないぞ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます