【実話怪談】コンビニのトイレにて

まちかり

コンビニのトイレにて

※以前別のHPに掲載していたものを、HPが閉鎖されたため再掲載したものです。


 それはまちかりが、営業/配送の仕事をしていた頃のお話です。


 営業活動をして売れた商品を、自分でお客様に届けておりました。


 とある日、まちかりは少し遠方の地域に配送に行くことになりました。朝早く出て、お昼過ぎには何とか高速に乗って帰りたいなぁと想いながら。


 地方の街道を通過して、もうすぐ国道というときにおなかの中から雷の音が……。


『うっ! や、やばい!』


 慌てて周囲を見渡すまちかりの目に、あの数字のコンビニの看板が目に入りました。


『やった! らっきー!』


 急いで駐車場に車を入れ、店に駆け込みます。


「すいません、トイレ貸してください!」


 店員さんの優しい了解の言葉も待たずトイレへ向かうと、部屋が二つ。


 一つには「男性用」のマーク。

 もう一つには「男性用」と「女性用」の両方のマークが入っています。


 まちかり、もちろん迷わず男性用のドアをノックします。


「トントン」


 すると隣のマークの二つ付いている方のドアから


「トントン」


 と音が返ってきました。


「ありゃ、誤解させちゃったな」


 まちかり、もう一つの個室を間違えてノックしたと思われたことを申し訳なく思いつつ、男性用の個室を開きます。


『おーまいがっ!』


 そうです、男性用のマークは男性専用・立ってするほうの個室だったのです!


「あああああ、しまった!」


 もう一つの個室、座ってするほうはさっきのノックで誰かが入っているはずです。早く出てきてくれないかとドアを凝視するまちかりの目に、不思議なものが目に入りました。


『おや?』


 トイレの鍵がかかってないのです。鍵が掛かっているのであれば、鍵の部分は赤く表示されるはずです。なのに表示は青いまま。


『?』


 この状況にまちかり、凍りつきました。漫画〝ジョジョの~〟であれば、『ゴゴゴゴゴゴ』という音と共に、まちかりの顔が斜め後ろからドアノブ入れ込みで書かれている処です!


 実際の問題として、ここで思い切りドアを開いてしまって、中の人と気まずい雰囲気を作りたくありません。まちかり、遠慮がちに再びノックします。


「トントン」


「…………」


 返ってきません。


 しかし油断は出来ません。鍵をかけ忘れて、ノックは出来るが入り口までは遠くて手で押さえられない可能性もあります。


 慎重にドアを開きます。


「ギギィ~」


 ……誰もいません……。


 まちかり、狐につままれたようです。


 あのはっきりしたノック音は何?


 何か不気味なものがまちかりの背中を駆け上がりますが、お腹の雷は刻一刻と近づきます。


 〝どうする家康〟じゃなく、〝どうするまちかり〟!


 数秒後、何もなかったように個室に座る、まちかりの姿がありました……。怪奇現象も、生理現象には勝てませんでした……。


 でもあのノック音は……何?


 未だに解けない謎です……。

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