第9話 護衛騎士が全員スカート(短)とか

「ショウゴ~朝ごはん美味しかったね~」

「うむ、これはこれでいけるな」


 俺たちは王城内の兵士用食堂で、朝食をとっている。

 スープにパンと厚切りベーコンというシンプルなものだったが、これがなかなかに美味い。

 固いパンとか、味のしないスープとかが出るのかと思ったが、全く違う。異世界食レベル侮りがたし。


 そんな朝食を満喫した俺たちのもとに、軽やかな足音が聞こえてくる。


「おはようございます! ショウゴさま!」


 聖王女のステラがパァーッと輝かしい顔をしながら、俺のそばに来た。


 昨日と同じくドレス姿で、相変わらずの美少女ぶりである。

 にしても、俺の部屋に来たり、兵士食堂に気軽に来たりと、本当に王城内では結構自由なんだな。

 まわりの兵士たちもそんなステラに慣れているのか、それほど驚いた様子も見せていない。


「さあ、食事も済まされたようですし。行きましょう!」


 俺たちはステラに連れられて、護衛騎士の宿舎へ向かう。

 宿舎は王城内にあり、訓練などもそこで行うらしい。

 ごつい野郎どもの巣窟なのだろうな。まあそうでなければ護衛は務まらないだろうし。


 にしてもステラ、随分と機嫌が良さそうだな。

 昨日の寝間着ミーナ事件は、忘れてしまったのだろうか?


「す、ステラ……昨日の事はなんでもないからな」


 一応弁解しておく。護衛騎士就任そうそうに変な誤解を持たれると困るからな。


「はい、昨日の事はとても良く覚えていますよ。ちゃんと日記にも書きましたしたから。ミーナが寝間着姿で、ショウゴさまのお部屋から出てきたことでしたら、一切気にしてませんから。何をしていたとか全然興味ないですからっ!」


 日記に書くんかい……全然忘れてなかった。


「わたしもミーナみたいな女性になれるように頑張りますから、安心してください!」


 いや、ミーナみたいになられても困るんだが。安心の要素が皆無だぞ。


「ふふ~聞いた~ショウゴ。これが女神パワーなのねっ。あたし魅力があふれ出ちゃうんだわぁ~」


 ほら、見習い女神が勘違いするじゃないか。


 そんなやり取りをしていると、目的の護衛騎士宿舎に到着した。

 宿舎は3階建てでなかなか立派な物だ。そして宿舎裏はちょっとした訓練場になっている。


「えいっ! やあっ!」


「ああ、みなさん訓練に励んでいるようですね」


 気合の入った声が響いている。しかしこの声、野太い声とは違うような……

 ステラに気づいた護衛騎士たちが、こちらに駆け寄ってきた。


 俺の予想は当たっていた。全員女性だった。

 まったくもって、ごつい奴らじゃないぞ。


 しかも鎧にスカートだと!


 マジか……こんなことが現実にあるのか? 

 戦闘に短いスカートってどうなの……


 そんな異世界設定に驚いていたら、ステラの視線が俺に向けられていることに気づく。


「ふふ、ショウゴさまは騎士団の甲冑がお好きなのですか?」


 ドキっ。スカートガン見してたのバレたか……ヤバいぞ。


「ええ~と、見事な甲冑ですなぁ。うん、見事だ」


 咄嗟に適当にこたえるも、ステラの方を見ると……なんかメモってらっしゃる。なんだろう……あとで王様とかに報告しないよな。

 改めてまわりを見渡すと、女性騎士に取り囲まれている。基本的に王女の護衛は女性とのことらしい。よくよく考えれば、ステラの生活に密着することもあるのだ。お風呂とか着替えとか、男性だとマズイ場面もあるだろう。


 選りすぐりのエリート集団とかなのか。しかも、みな美人さんばかりだ。

 こんな中に、男でオッサンが1人は完全に浮いてしまう。


「ねぇ、あの人がステラさまを救った人かしら?」

「ちょっとイケメンじゃない?」

「わたしタイプかも……」


 おお! 意外に高評価なのか? そう言えば青年に転生してたんだった。中身オッサンだけど。


「し、私語は慎むように!」


 ステラがメモ帳をパタンと閉じるなり、俺の方をチラ見してから、むぅ~と唸っている。

 ヤバいなぁ。なんかステラ機嫌悪そうだ。朝飯食べ損ねたんじゃないか? だとしたら最悪の事態だ。俺なら発狂するかもしれない。

 その後、ステラにより俺たちの紹介が始まった。


「というわけで、ショウゴさまとミーナのお二人をよろしくお願いしますね」


「「「「「はいっ!」」」」」


 ビシッと整列して一礼する女性騎士たち。なんかカッコイイ。


 俺もよろしくお願いしますと言いつつ、敬礼してみた。

 ミーナは……すでに女性騎士たちにカワイイとかちやほやされて、舞い上がっている。

 鎧まで着ようとしてるじゃないか……まあ馴染んだようで良かったが。


「ところでナターシャ隊長は、どちらにいらっしゃいますか?」


 ステラが言うに、ナターシャという人が護衛騎士隊の隊長らしい。

 女性騎士たちが言うには、隊長は別任務で出張からの帰還途中らしい。


「そうでしたか、では入隊の手続きは別の方にして頂き……」


「様~~~~~」


「あら? この声」


「姫様~~~~~」


 こちらに向かって、マンガみたいな砂煙を立てながら爆走してくる奴がいる。

 それはそれは短いスカートをビビるぐらい揺らしまくって。



 ―――ザシュッううう



 一瞬にして俺とステラの間に入り込んだスカート騎士は、大声で叫んだ。


「貴様が姫様を救ったヘンタイか! 姫様との距離が近すぎる、もっと離れろっ! あと、遠目でもワタシのスカートを凝視していたのはわかっているぞ!」


 あ~~ヤバイ。また変な奴きた。


 取り合えず処理に困ったので、ステラの方を向くと。再びむぅっと頬を膨らませている。


 なんで?


 再びメモ帳を取り出したステラが、真剣な顔をして、一言呟く。


「ショウゴさまはスカートが好き……私も騎士のスカートはいてみようかしら…」

「な……姫様が騎士のスカートだと……貴様~~~姫様になにを吹き込んだ!?」


「わぁ~い、ショウゴ~あたしも騎士のスカートはいてみたよぅ~どう~似合ってるかな~」


 ミーナが誰から借りたのか、スカートを着用してクルクル回っている。


 よし、君たち。いったん落ち着こうか。

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