第3話


ピロロロロ…


スマホの画面には可奈の文字が。あ、花火大会のことだろうか。器用に足の親指でスピーカーボタンを押す。


「蒼介くん!今大丈夫?来週、花火大会の日何してる?あの、、その、、一緒に行きたいんやけど、どうかな?」


やっぱり。今年は朋ちゃんを誘って、河原で座りながら花火見て告白、、、と思うだけで、行動に移せないから結局何も用事はない。2人というワードが出てこないように話をしていたんだけど、手強い敵のせいで可奈の話を適当に返していたら、どうやら2人で行くことになったらしい。やべえと思い、大に電話すると、すんなりと断られた。なんだよあいつ。



次の日、席替えがあった。朋ちゃんの席の横になりますように。神様。それだけで僕は幸せです。


「ざーんねん、真逆だね」


一番前の席になってしまって、隣は美久。今にも落ちてしまいそうなまつ毛をバサバサさせて、ここじゃあ眺められないね、なんてケラケラ笑われた。笑い事じゃない。朋花は大の隣で窓際の一番後ろの席になった。辛い。神様。恨む。





「可奈ちゃんと2人で花火大会行く気になったんだ?まあいい子だと思うし、てかお前女と行くの初めてじゃね?」


「いや、行ったことあるし!」


「それ、かぁーちゃんと妹だろ?!まあ、せいぜい楽しんでこいよ!」


「てかお前なんで行けないんだよ」


「俺は、ちょっとねー」


いつもの中庭のベンチで昼を食べながら、三日後に迫る花火大会の話をしていた。大に言われた通り小学校の頃、母と妹と行った。僕は、花火には興味が無くて屋台で鉄砲がしたくてそれを条件に行った記憶がある。帰り道に、混雑してる中で母親と歩く朋花の姿を見つけた時に、同じ空間にいることがとても幸せだった。楽しかっただろうか。そんなことも聞けないで、中学3年になってしまった、あの時の気持ちは今でも何も変わってない。



そういえば、ここの中庭にも花壇があるんだった。珍しい、アネモネじゃないか。花言葉なんだっけな。花屋の息子なだけあって、花の知識はあるのに思い出せない。帰ったら本棚にある花の図鑑でも見返すか。



隠れていた太陽が、透き通った雲の間から照らされてジリジリと頬を焼き、僕は、残っていた麦茶を一気に飲み干した。気がついたら横には大はもういなくて、蝉の鳴き声が異様にも耳に響いた。









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