第2話



それから何度か可奈と一緒に帰った。大や美久と4人カラオケにも行ったし、近所のスーパーのたこ焼きを食べて帰ったりもした。



「蒼ちゃん、花火大会行く予定あるんですか〜」



ある帰り道大が、お前はまた家でゲームでもしてるんだろうと言わんとばかりに聞いてきた。そういえば、あの吹奏楽部の子はどうなったのか今更気になって聞いたら、断ったって。まさかあの大が断るなんて、それは中学1年の時の担任が教育実習生と不倫関係になって、学校に奥さんが怒鳴り込んでくる問題があった時くらいに衝撃だった。


「可奈ちゃん、お前と"ふたりで"行きたいって言ってたから行っておいでよ〜」


じゃ、と僕の家の前で自転車に勢いよく乗って小さくなっていく大の背中を、何故だか掴みたくなった。



僕の家は、ばあちゃんから受け継いでる花屋でこの街じゃこの花屋しかないから結構賑わってる。


「蒼介!2丁目のスナックナナに花届けてくれない?」


あそこの店新しくオープンするみたいなんよ〜とせかせかと後ろの事務所に消え、はいこれ住所、頼むね。と紙を渡された。はぁ。とため息をついて、店の宅配用自転車に花を積む。ポテチとコーラをつまみに、新作のゲームを堪能するつもりだったのに。今日は付いてない。


祝開店〇〇事務所代表取締役社長とたいそうに書かれた札に、蝶に似た優雅なフォルムが特徴的なあの花。確か花言葉は幸運が飛んでくるだとかそんなだったかな。

同じ街にあるとは思えないくらい、色んな店が並んでいてその中の一つにスナックナナはあった。


カラン


思ったよりも軽いドアを開けると、40代くらいのおばさんがいて、お店の雰囲気は僕が思っていたよりも普通の喫茶店みたいだった。



「あの、、花屋ハーデンベルギアのものなんですが、、」


「あ、ありがとう〜その辺置いといてくれる?」

とこちらを見ないでタバコをふかしながらパソコンを触るおばさんに何故か固まって動けなくなってしまった。


「あ、、ありがとうございました、、」


逃げるように自転車に乗り、いつもは考えないようにしていた可奈のことをふと思った。可奈は僕のこと好きなんじゃないか。いや、違う。ただの友達だ。そう思おう。

またすぐ朋ちゃんのことを考えてる自分に戻る。浴衣姿可愛いんだろうなとか想像してたら家に着いていた。



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