赤いアネモネ
極上檸檬
第1話
朋、朋、、、
僕は何回この名前を呼んだか分からない。
「おーはよ」
話しかけて来たのは、幼馴染の美久(みく)
「なにぼーっとしてんの、新学期早々まーた朋ちゃんに釘付けですか〜?」
「こいつ、小学校からずっと変わらないからな」
ガタンと隣の席に座って来たのは、田中大。こいつも小学校からの幼馴染、サッカー部で運動真剣も良くて僕とは全く真逆。腹が立つぐらいモテる。
「見てねーよ」
僕は、鼻をすすって寝たふりをする。これがいつもの日常。安西朋花を意識しない日々が、僕にとっての毎日。
「おまえも、がんばりゃーモテるのになー」
大が僕の頭をぐしゃぐしゃする。さわるな。今、朋ちゃんとおはようって挨拶してる妄想をしてるんだから。考えただけで幸せだ。そんな朋花は、静かに本を読んでいた。
安西朋花は、小学校の時はかなり変わった子だった。授業中、ふと中庭を見ると花壇に植えてある花を引っこ抜いてどこかに持って行ったり、男子とカマキリの取り合いで殴り合いの喧嘩をしたり、だけどいつも彼女の周りには友達がいて、それが当時の僕には魅力的で、好きになった。彼女の行動は、先生も頭を悩ませていたみたいだったが、いつしか何も言わなくなった。
どうして中学になってこんなに静かになってしまったか、深く考えても良かったんだけど僕は考えるのをやめた。それはそれで僕はいいと思った。
「昼食いに行こうぜ。」
中庭の片隅にベンチがある。そこが僕たちの特等席。大は、お母さんに作ってもらったであろう卵焼きを口いっぱいに入れて
「蒼ちゃん、俺告白されたんやけど、どうしてらいいかな〜」
突然のニュースに、飲んでいた麦茶を吹きこぼしそうになる。
「え、誰に、、誰に告白されたん?!もしかして、一個下の吹奏楽部の子?俺をいつも置いて行きやがって!」
胸ぐらを掴んで、大を危うくあの世へ送ってしまいそうになってしまった。
「お、なんでわかったん〜でも俺好きな子できてしまったんだよね〜」
にやっとみせる八重歯が憎たらしくて、こいつはこうやって数多くの女の子を"沼"に落としてきたんだろうなとつくづく嫌気がさした。確かに、大はモテる。でも付き合ってはすぐ別れてを繰り返して長続きしたことがない。しかも、好きな女の子がいるなんて、この数年聞いたことがない。
「どうするの」
僕は食べかけのウインナーパンを喉に詰まらせそうになりながら聞いた。
「どうするかね〜俺もよく分からん!」
「この薄情男め!ぜってぇお前は地獄行きだ!天国に上がって来たら蹴落としてやる」
「お前は、俺が死んだ時にはもうすでに死んでるのか、それはそれで面白いな」
「お前、許さねー」
大は、最後のプチトマトを食べ終えちょっくら行ってくるわーとどこかに消えた。1人取り残される。ここから一階僕たちの教室が見える。朋花の席は左の一番前の席。彼女の席には隣のクラスの男子生徒が自分の席のように使っていた。心臓がぎゅうと締め付けられる。なんとも言えない感覚が襲う。あー僕は、どうしてこんなに臆病なんだろうか。
「蒼介くん」
誰かに声をかけられている。でも、僕はこの気持ちをまだ噛み締めたい。朋ちゃん、、、
「そーすけくん!!!」
はっと我に返った僕の目の前には、ワイシャツのボタンが今にも弾けそうで、いかにもギャルがそこには立っていた。
「あ、ごめん」
「蒼介くん、うちのこと知ってるー?」
そう話しかけて来たのは、中学2年の時に引っ越して来た隣のクラスの可奈だった。
うんうん、と勢いで麦茶を飲み干す。
「今日一緒に帰らへん?!大くんには、了承済みやから!!」
あいつ、、とすぐに何か企んでいるのかは分かった。
「じゃ!そうゆうことで!またな!」
今にもパンツが見えそうになりながら、バタバタと消えた。僕返事してないんだけどな、、、。次の授業のチャイムが鳴り、やべえ遅刻すると急いで教室に戻ろうとした時、中庭の隅の方で、朋花がいた気がした。でももう一度見た時にはいなかったから、気のせいか、俺やばいな、なんて思いながら教室に戻った。
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