動き出した世界

サザンカ達神々が世界に息を吹き込むと、星中に光が満ち溢れた。

その光はすぐに消えたが、それと同時に世界が息づく音が神々には聞こえた。


各々が分担して造った数多の動植物が呼吸し、動いている。

しばらく様子を見ていたが、特に問題がない事を四人は安堵した。


「うむ…順調そうでなによりだ…。


さて…あとは、人に知識や感情を与えるだけだが…。」


「ねぇ、アマノん、知識や感情はマツリカちゃんに任せましょうよ。

この中で的確な役割だと思うの。」


「…と言っているが…どうだ、マツリカ。」


「……やってみます。


最初は、生きていくために必要な基礎的な知識を与える…。

あとは…本人達に任せます…。

生きるも死ぬも本人達次第…。


厳しく聞こえるようだけど、神々が手を出さないと言った以上、甘さ控えめでいくわ。

知識の与え方は…そうですわね…赤い実を食べてもらいます。


木に赤い実を付けて…数は少なく、食べたら木は枯れる…。

徐々に…知識は広がる…人から人へ…。


感情は…平穏に過ごして欲しいから…穏やかな感情だけを組み込みます。」


「うむ…それでいこう。

ベロニカやサザンカは何かないか?」


「私は何もないわ。

マツリカちゃんの提案さすがね。」


マツリカの提案に納得したような表情のアマノミコト。

他に異論はないかと皆に視線を送り、言葉を求めた。


ベロニカは、マツリカの提案に任せてよかった、と言わんばかりの強気な笑顔でうなずく。


サザンカに至っては、少しだけ考える素振そぶりを見せた。


「う~ん…私は…何かあった時の為に…。


神々に『癒しの力』スキル付与。

ケガ、病気、いかなる状態も回復させるものとします。」


サザンカは天に向かって片手を伸ばし、力を発動させた。

それによって、手の先に光が集まり、その光は一度大きく膨らみ、四つに分かれ各々の体に吸い込まれていった。


「…またおぬしは勝手に我々にスキルを…。」


「スキル付与…あと一つ…。」


「しょうがないわね…サザンカちゃんたら…。」


サザンカのスキル付与にまたしても三人は肩を落とすが、致し方ないものだと割り切る事にした。


そんな中で、マツリカは気持ちを切り替え、人々に知識や感情を与える為、木を植えるのに手頃な場所を探した。


「……あの辺がいいかしら…人も程よくいる…。」


場所が決まったマツリカは、手を伸ばし、その場所に赤い実を付けた木を創造し始める。


木の背は低く、人が手を伸ばせばすぐに取れる高さにした。

木の実の大きさは、一口で収まるくらいの大きさで、数も人の数に対して少しばかり少なく実らせた。


「あ!さっき言っていた木の実、出来たのね!

赤くてツヤツヤしていて美味しそうね!!

丸くて小さくて可愛いわ~。」


「美味しそうに見えるなら、人も寄ってきやすいかなと思いましたの。」


「あの実に知識や感情を詰め込んだのよね!」


「はい…うまくいくといいのだけれど…。」


「マツリカちゃんなら大丈夫よ!」


ベロニカとマツリカ、二人は下界の様子を和気あいあいに見ながら話している。

その様子をアマノミコトは頷きながら見守り、サザンカは目を輝かせながら二人の会話を聞き、下界を眺めていた。


「本当にあの木の実美味しそう!

あ!そうだ!」


サザンカがそういうや否や、創造の力を発動させた。


「…サザンカ…それ…何…。」


「サザンカちゃん…まさか…。」


「ふふふ…孔雀くじゃくさんです!!

孔雀くじゃくさんに飛翔ひしょうのスキル付与!!


ちょっとあの木の実、美味しそうなので取ってきます!!


行きますよ!!孔雀くじゃくさん!!」


『がってんだ!嬢ちゃん!!』


サザンカが創造したのは、青緑色のキレイな羽を持つ大きな孔雀くじゃくだった。


サザンカは孔雀くじゃくにまたがり、驚きと焦りを含んだ表情の姉二人に敬礼のしぐさを見せ、神界の地面ともいえる足元に丸い入り口を造り下界に降りていった。


「「あ、あのおバカーーー!!!」」


「と言うか、あの孔雀くじゃく…しゃべったわよ…マツリカちゃん…。」


「え、えぇ…しゃべりましたわ…兄様…。」


「…サザンカ…愚直ではなく…おバカだったのか?


我が娘ともあろうものが…。

(ベロニカはまだしも…マツリカまでも動揺しておる…。)


……はぁ…。」


サザンカは周りも気にせず下界に降り立ち、乗ってきた孔雀くじゃくから降りてマツリカが造った木の実に近づいた。


『嬢ちゃん、あっしはこの辺りで待っておりやす!!』


「は~い!!


わ~!本当にツヤツヤしていてキレイな木の実!

それに、少しだけど、いい匂いがする~!!」


サザンカが一人その木の実を前にはしゃいでいると、サザンカと木の実を囲うように人や様々な動物達が集まり始めた。


「わ、わわ?!

いっぱい集まってきた!


と言うより…人が裸?!

なぜ、みんなして服も一緒に造らなかったんだろう!


その姿で裸はマズイ!

着るもの!


私と同じ…だと人の成長に何か悪影響を与えるかも…。


う~ん…あ!植物でとりあえず体をおおえるものを…。」


サザンカは目のやり場に困り、慌てふためき、創造を使って地上の植物で衣服とは呼べないが、体をおおえるくらいの大きさの物をその場にいる人数分造った。


それを一人一人手渡ししたのだが、知識も感情もまだない為、無反応を示すが、サザンカは気にせずに全員に渡し終えた。


「よし!

これでいいかな!


にしても…いろんな動物集まっちゃった…。


この木の実を食べたいのかな?

でも…木の実は人に感情や知識を与える為の食べ物…。


ごめんね…全員分はないんだ…。」


サザンカの言葉に、周りに集まった皆は何も反応せず、ただただサザンカを見ているだけだった。

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