仕上げ

サザンカが星のエネルギーを使い果たして数時間後。


四人が雑談をしている間に星のエネルギーが回復し始めたので、アマノミコトの言葉で下界の創造の仕上げに入るべく、場所を移動していた。


「アマノ様、下界の創造…あとは何をするのですか?」


「先ほども言ったが、植物や、生き物…あとは人…と言うものが数少ないのだ。

それらの種類や数を少しばかり増やし、知識、感情を与え息を吹き込む…。


そうすれば、命が芽吹き、生活をしていくだろう…と思う…。」


「アマノんにしては曖昧あいまいね。

私達の父で先輩なのに。」


「お主達より先に生まれたが、誕生自体はさほど変わらぬ…。

我も試行錯誤しながら行っているのだ…。


その為、おもに、地球を参考にしておる。」


「そうなの…。

あ!ねぇ、サザンカちゃん、さっきの鏡!

あれで地球を覗いて、どんな植物や生き物がいるか見れないかしら?

あと、アマノんが言っていた人と言うものも見てみたいわ。」


「見れますよ!お任せください!

さっそく鏡を出しますね!」


四人は下界がよりよく見える場所に着いた所で、サザンカを囲むように集まった。


サザンカはベロニカの言葉に応えるように、何もない空間に手をかざし、収納庫を呼び出し、その中から鏡を取り出した。


鏡を手にしたサザンカは、皆に見えるように面を上に向けたのだが、皆は見辛みづらそうに目を細めたり、眉をひそめた。


「う~ん…その大きさ…一人で見る分には良いのだけど…四人で見るにはちょっと小さいわね…。」


「……あ!そうだ!」


ベロニカの言葉にサザンカは何かを思い付いたようにパッと顔を上げ、足元からちょっとだけ離れた所に大きい水たまりのようなものを創造した。


だが、上手く造れず、それは水たまりではなくただの水の物体と言ったところだ。


思うものが造れないとうなっているサザンカに、しびれを切らしたベロニカは、ただの水の物体に手を伸ばし、形を整えてキレイな水たまりを造った。


「さすが水の女神…ありがとう、お姉様。」


「ふふっ、どういたしまして。

サザンカちゃん…もしかして、一見、創造で何でも造れるようで、水の創造はままならないんじゃない?」


「…水はベロニカ姉様の特権…

だからサザンカが造ろうとすると、形にならない…と言う事かしら。


…火や風を造ろうとしなくてよかったわね…サザンカ…。

造っていたら、今頃私達…この世にいないわ…。」


「え、縁起でもない事言わないで…マツリカちゃん…。」


「そうなると、雲や、大地に咲くもの達も造れないと言う事になるが…。

先程、桜の木は造っていた…。


(あれは桜の木ではない…と言う事か?)」


「姉様達の特権のものは造れない…ま、いっか!それよりも下界!


姉様が造ったこのキレイな水たまりと、鏡をつなげて…。」


サザンカはマツリカの言葉に考える素振りを見せるが、さほど気にしていない様子で鏡と池に手をかざした。


すると、鏡と池がぱぁっと光り、鏡に映るものが水たまりにも映った。

ベロニカやアマノミコトは興味津々に水たまりを覗いており、マツリカは鏡と水たまりを交互に覗いた。


「わぁ!この鏡、そんなすごい事が出来るのね!

サザンカちゃんすごいわ!


あ!サザンカちゃん!もうちょっと右!右お願い!

やっだぁ~あの人カッコイイ~。

あ!あの人も!あんなカッコイイ人達に、私達の世界にもいてもらいましょうよ!」


「……。」


地球、日の本の様子を見ながら一人だけはしゃぐベロニカを、マツリカとアマノミコトはジト目で見ており、サザンカは苦笑いを浮かべていた。


「なによ、アマノんにマツリカちゃんたら、その目。


…あ!アマノん、あっちのなんて出てるとこ出てて可愛いわよ!

あ、こっちは清楚な感じでキレイなよ!」


「…我を巻き込むでない…。」


「何よ、つれないわね!

このムッツリ!」


「?!

ムッツリではない!!


我にも好みというものが…って違う!!そうではない!!」


「はぁい、それじゃ、日の本をもっと観察して、創造の仕上げをしてしまいましょう!」


「…どこまでも自由なやつだ…。」


ベロニカの突然の切り替えに三人は呆れつつも、各々が鏡や水たまりを覗いた。


日の本を覗いて数分が経ち、ある程度参考にしたのち、自身のエネルギーや星のエネルギーを使い、多種多様の植物、生物や人を創造していった。


「アマノ様…人や動物はどうやって造っているのですか?」


「大陸の土を使って人型や動物型を形成しておる。

形は様々だ。」


「わかりました…。(本当ですわね…獣耳がある人型もありますわ。)」


ベロニカやマツリカは自然や人を、アマノミコトやサザンカは動物を手掛けていた。

そうして各々が創造して数十分後。


「…こんなものか…。


皆、そろそろ、息を吹き込む最終工程に入るが…

創造の方はどうだ?」


「こっちは幾分か出来上がってるわよ。」


創造を大方終えていた三人はアマノミコトの言葉に頷いた。


「うむ…。

人の知識や感情は、息を吹き込んだ後に与えるとしよう。


では、仕上げに入ろう。」


四人は創造のために散り散りになっていたのだが、下界の創造の仕上げに入る為、一か所に集まった。


アマノミコト、ベロニカ、マツリカは下界に向かって両手を伸ばし、力を集中させた。


サザンカも鏡を収納庫に戻し、水たまりを消して三人に加わり、同じように両手を伸ばす。

そうして四人で力を合わせ、世界に息を吹き込んだのだった。

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