それぞれの力

世のことわりや、受け取った力の用途について話し合いを進める女神三人。


その女神三人の傍らでアマノミコトは、いまだ目の前で行われる話し合いをお茶を飲みながら眺めていた。


「創造を使えるようにするってさっきは言ったけど......。

何も無いところから生み出す事こそが、もう、創造よね。」


「......たしかに…そうですわ。

私達の力は、アマノ様みたいに量が多くないので限度というものがありますが…。


試しに少し使ってみます.........どうやら木や花、土、水、火、風、雷の自然物…あとはアマノ様が出したような無機物の机や器、飲食物...人以外の生物も生み出せる事がわかりました。


人に関して造れない理由は…体、心、知識や感情…いろいろ複雑だからでしょうか…。


想像しながら力を使うと、生み出せるようです。

消したりも出来ますね。」


マツリカは手を出し、少しの力を使って思い思いのモノを出しながらベロニカとサザンカに説明をした。


魔法なのだから当然かもしれないが、その様子は手品のごとく、現れては消えを繰り返した為、二人は興味津々にマツリカの説明を聞き、彼女の手に見入った。


「マツリカちゃんは本当に知的ね。

話もわかりやすくて、まとめ方が上手で何より、もう力の扱いが出来るなんて...。」


「......ありがとうございます。」


ベロニカの感心するような眼差しに、マツリカは笑みこそなかったが、顔を少し赤らめて俯いた。


「.........。

(マツリカお姉様は、照れていると思いますが、表情にはあまり出ないのですね。

マツリカお姉様とは反対に、ベロニカおに...お姉様は、表情豊か...。)」


「??なぁに、サザンカちゃん、私達の顔をまじまじと見つめて。


もしかして...惚れた?」


「!?違いますよ!

どこからそんなお言葉が出るのですか!」


「ふふっ冗談よ。

さ、話を戻しましょう。


三人とも人以外は生み出せる...けど、力の量は多くない...。

…う~ん…どうやって役割を決めましょうか…。」


「…ここは、ベロニカおに…お姉様から決めるのはどうでしょうか。」


「…マツリカちゃん…今、お兄様と言いかけたわね…。

はぁ…まぁ、この際いいわ。


私から決めるのは…サザンカちゃんはいいのかしら?」


「はい!問題なしです!

残り物には福がある!ですから!」


「まぁた言葉を作っちゃって…。

ん~…それじゃぁ、アマノんみたいにいろんな物を創造するのはもちろん、風や水、火を生む女神として私は仕事をするわ。

魔法の分類になるのかしら。


次はマツリカちゃんね。」


「…私…ですか…。

年功序列…なのかしら…。

そしたら…私も姉様のように創造するとして、雲を生む等の天候と大地の生成、管理をします。

私のも魔法ですわね。


あとはサザンカね。」


「…………。」


ベロニカとマツリカは自分の役割を決め、残りをサザンカに託す事にした。

サザンカの言葉を求めるように二人は彼女を見たが、視界に入ってきたのは俯き、小刻みに震えているサザンカの姿だった。


「ど、どうしたの、サザンカちゃん。

俯いていたらわからないわ。

お顔を上げてちょうだい?」


「姉様の言う通りよ。

サザンカ…お顔を上げて?」


サザンカの様子に慌てふためく姉二人。


そんな二人の言葉に俯いていた顔を上げたサザンカの顔は赤く染まり、目にはいっぱいの涙を溜めていた。


その様子に姉二人は驚き、さらに慌てふためいた。


「…ズルいですよ~お姉様達だけ、そんなすごいお仕事引き受けて~!!

お姉様達の力も呼応するように、変質し始めてますし~~!!


残り物には福がある…とは先ほど言いましたが…残ってなかった…。」


「わぁぁ?!がっくり落ちないで、サザンカちゃん!」


「気をしっかり持つのよ、サザンカ!」


サザンカは、姉二人にほとんどの役割を持っていかれたのが悔しいのと、悲しいのとで目に涙を溜めていたのだ。

自分の思いのたけをぶつけたサザンカは、再び俯きがっくりと肩を落とした。


姉二人は肩を落としているサザンカに、どう声を掛けようか慌てながら考えている。


そんな女神達の会話に、今まで静かに様子を見ていたアマノミコトが入ってきた。


「ベロニカとマツリカが『魔法』と言う形で世界の生成をになうのなら、サザンカも創造を最大に活用して、人以外の無機物や有機物の創造、さらに下界の人々に能力として『スキル』を与え、手助けする事をになうのはどうだろうか。」


「私達は魔法を使って自然の見守りや管理、サザンカちゃんはスキルと人々の見守り…という事ね。


アマノんさすがね!伊達に創造神じゃないわ!グッジョブ!!」


「(…またおかしな言葉を…いや、この際もぅ、言葉をはさむのはやめよう。

こうして言葉は時と場合でいろいろ作られ、変化していくのだな…。)


サザンカ…どうだろうか…。」


アマノミコトの言葉に涙を拭い、顔を上げたサザンカ。

サザンカは少し考え、静かに頷いた。


「……人々の見守り…つとめます。

私の力…そのまま創造として駆使します。

でも…やっぱり、お姉様達みたいに魔法で自然を操るとかしてみたかった…。」


「…一応伝えておくが、ベロニカもマツリカも完全には操る事は出来ぬぞ。

三人の力を読み取ったところ、我の力の三分の一ずつしか渡っていないらしい…。


よって、三人の力が合わさってやっと我と同じ力が発揮されると言えよう。

それこそ、三人寄れば文殊の知恵…と言うやつだな。」


「そう…なのですか?」


「たしかに…アマノんの言う通りね…。

風や水は生み出せるけど、操るまでは出来ないみたい。」


「私も、右に同じくよ。」


「…わかりました…。

一つ…アマノ様と、お姉様達にお願いがあります。」


「「「???」」」


「下界を創造するとき…一部でいいので、少しだけ私好みにしてもいいですか…。」


サザンカはアマノミコト達の言葉に、ようやく力の用途や自分に課せられた仕事を受け入れ、その代わりとでも言うように恐る恐る条件を一つ提案をしてみた。


サザンカの提案に三人は顔を見合わせ、ベロニカとアマノミコトは満面の笑みを、マツリカは少しの笑みを浮かべて快く提案を引き受けた。

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