エネルギーの譲渡

女神達の名前も決まった所で会議をする事になったのだが、その前にアマノミコトは女神達にエネルギーと力を渡す事にした。


「さて…生を受けたが、エネルギーや力を持たぬおぬし達に、我と同じ分のエネルギーや力をそなた達に渡そう。


……ふんっ…んん~。」


アマノミコトは彼女達に手をかざし、エネルギーを渡すイメージを思い浮かべ、集中する。


「…まだかしら。」


「掛け声のわりに遅いですわね。」


「アマノ様、早く~。

微々たるエネルギーしか感じませんよ~。」


「今集中しておる!せかすでない!


………ふぬぬ~~~……ふ…へ、へぁっくしょん!!!」


エネルギーを渡すと言ったアマノミコトを急かす女神三人。

女神達の要望に応えるべく、集中を高めた矢先に放つ予期せぬくしゃみ。


そのくしゃみのせいなのか、はたまた急かす女神のせいなのかは誰にもわからぬ事だが、一つだけはっきりとしている。


それは、自身のエネルギーの量と同等の分を渡すつもりだったが、三人分のエネルギーも溜まりきらないところで、分散してしまったという事実。


「な…ど、どういう事~?!」


「…頂いたエネルギー…アマノ様の気配より弱いですわ。」


「これじゃ、アマノ様みたいに全部のお仕事出来ないじゃないですか!」


「…う、うむ。


………ドンマイ。」


「「「おかしな言葉を作らないでください!!!」」」


「そうは言ってもだな…。


物は試しだ…もう一度、エネルギーを渡してみよう。


ふぬぬ~~~………。」


アマノミコトはエネルギーを渡すべく、再度女神達に向かって手をかざした。

当の女神たちは、集中しているアマノミコトを静かに見ており、期待と諦めを含めたような表情をしていた。


「「「………。」」」


「……んぬ~~~…。」


「「「………。」」」


「……だめだ…エネルギーがそなたらに渡らぬ。」


「やっぱりダメなのね……ポンコツさんね。」


「創造神とはいったい…残念ですわ…。」


「…ベロニカにマツリカ…辛辣しんらつな…。」


アマノミコトはこれ以上、エネルギーが渡らないと判断し、女神達にかざしていた手を下ろしてうな垂れた。

やはりと言う結果に、ベロニカやマツリカはため息を交えながら、アマノミコトを残念そうに見つめた。


その三人の様子を静かに見ていたサザンカは、恐る恐る手を挙げながら話に入ってきた。


「…あの~…私達のエネルギー…アマノ様みたいに容量多くないのは残念ですが、今からでも力の用途は決められますよね…。


アマノ様はもぅ、創造神として力の用途が安定してますし。」


「…たしかに…創造なら大抵は出来る…いや、それしか出来ないと言っても過言ではない。


サザンカにしては鋭いではないか。」


「サザンカちゃんの言う通りね。」


「サザンカ…何か思いついたの?」


うな垂れていたアマノミコトや、彼をみていた姉二人の顔がパッと上がり、発言したサザンカに注目が集まった。

その三人のサザンカを見る瞳には、少しの期待が込められているようにも見える。


「私にしては…って、アマノ様ヒドイですよ!

私だって一応女神なんですから!考えるくらいします!」


「一応ってつけるあたり、女神らしからぬ事は自覚あったのか?」


「……アマノ様…女神っぽくないと思っていたのですか…。

まぁ、いいですけど…。


えっと、私達の力…自分達で用途とか役割を決めるのはどうでしょうか。


容量が少ないから最終的には一人では難しい事でも、三人で力を合わせていくとか…

えっと…三人寄れば文殊の知恵…みたいな!!」


「(サザンカちゃんたら…また言葉を作って…。

いえ、地球の言葉かしら?まぁ、今はどちらでもいいわね。)


そうねぇ…。


アマノんもこれ以上はエネルギーを渡す事も出来ないみたいだしねぇ~。

マツリカちゃんはどう思う?」


「私も特に異論はありませんわ。

自分達で役割を決めるなんて面白そうだもの。」


「姉様達は賛成って事で!

アマノ様はどう思いますか?」


「よいと思うぞ。


扱いに気を付ける事を条件なら、大方は何でもできるであろう。」


「扱いに気を付けるなんて当り前よ!


アマノんは心配性ねぇ。


それじゃ、ことわりを決めつつ、各々の力の用途も決めていきましょう。」


「「「おーー!!」」」


「(自由な女神達だな…。)」


こうして受け取ったまだ「力」だけのエネルギーの用途を決める会議が、女神達だけで始まった。


女神達が話し合いをしている中、アマノミコトは少し退屈にしていた為、自身の創造の力で何もない空間にテーブルやお茶の入った湯呑ゆのみを出して、お茶を飲みながら女神達の会議に耳を傾けた。


そんなアマノミコトのくつろいでいる姿が、会議中の女神達の視界の端に入り、一気に視線を集めた。


「アマノんだけズルいわよ!

創造の力、私達も使えるようにしましょ!」


「そうですわね、創造は必要ですわ。」


「創造があればいろんな物が作れるし、便利になるし、私達の快適な生活の第一歩ですね!!」


「…おぬし達の会議の内容…もはやそれは魔の法…というものだろうな…。」


「「「それよ!」」」


「魔の法!!いいわね、それ!!!」


「魔法…スキル…とでも名付けましょうか。」


「さすが、マツリカお姉様!その呼び名しっくりきますね!!」


「私達の力、『魔法』と『スキル』と名付けていろいろ出来るようにしましょうよ!!

この神界ももっと賑やかにしたいし、やる事が本当にいっぱいね!!」


ベロニカは勢いよく立ち上がり、拳をグッと握り意気込んだ。

マツリカやサザンカもベロニカの後に続いて立ち上がり、同じように拳に力を入れ、意気込む。


その三人の様子をお茶を飲みながら見ていたアマノミコト。


「……おぬし達…意気込むのは良いが、話し合いは終わったのか?」


「「「………まだ途中です…。」」」


アマノミコトの言葉に、三人はハッとし、顔を赤らめながらしずしずと座り直した。


座り直した女神三人は、再び力の使い方について話し合いを始めたのだった。

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