三女神
アマノミコトが世界を創造して数日が経った頃。
創造の途中でアマノミコトは、新たな悩みを抱えていた。
それは、創造神として見守る事を決めたのはいいが、あまりにも広すぎる世界の為、自分一人では世の
自分と同じ神を作ろうか、寿命を終えた魂が神界に来るのを待ち、その魂を神として受け入れようか様々な事を考えた。
だが、頭をよぎる考えはどれも納得がいかず、考え、悩み過ぎたアマノミコトは一度思考をやめて、ひと休みする事にした。
そんな中、疲れから生じる生あくびを数回したアマノミコトは生理的な涙を浮かべた。
その目に溜まった涙が、瞬きをした事によって一滴、二滴、三滴と頬を伝い、アマノミコトの足元まで落ちた。
すると、雫だったものが突如光を帯び、人の形に成し始めた。
一滴目の雫は、金の長髪に端正な顔立ちの男性の姿を現し、二滴目の雫は赤い長髪に端正な顔立ちの女性、三滴目は桃色の長髪に端正な顔立ちを持ちながらも少し幼さが残る女性の姿を成した。
「……。
(これは…我の涙が、周りのエネルギーを吸収して人の形を成した…という事か…。
それとも、エネルギーを持つ我の涙故に……どちらにしても奇跡…とでも言おう。
姿形は我に似ており、衣服も我がまとっている物と同じ…。
この者達を神とするのはどうだろうか…本人達の考えも聞かなくてはならぬが…。
それにしても…この世界や我のエネルギー……望めば何でも生み出せ、時には予期せぬ間に生み出す…本当に…不思議なエネルギーだ。
これは…使い方を考えねば…。)」
アマノミコトが目の前の光景を見つめながら考え事をしていると、形成が終わったようで、三人をまとっていた光が落ち着いた。
三人は閉じていた目を開き、アマノミコトの姿を視界に入れ、それぞれ言葉を発した。
「私達を生んだのは、あなたですわね。
父なる神…初めまして。」
「?!…う、うむ…よろしく頼む…。(一滴目から生まれたこの者…声や見た目は男…なはずなのに、口調が思っていたのと違う…。
男神と思っていたが…女神…なのか?)」
「創造神様、はじめまして。
この世に生を与えてくださり、感謝します。
よろしくお願いしますね。」
「うむ、よろしく頼む。(この者は二滴目の雫から生まれた者か…知的そうだな。)」
「初めまして、創造神様!
私達はどうして生を受けたのでしょうか!
何をすればいいですか?!
この世界の
創造神様のお名前は?!
すごくカッコイイお姿ですが、創造神様は男ですか!女ですか!どちらでもないのですか!
この世界に満ちているモノは何ですか?!
それらについて話し合いが必要ですよね!!
一刻も早く話し合いを始めましょう!!!」
「………おぬし…距離が近いぞ…。
あと、あまり
順番というものがあろう…。
(三滴目の雫から生まれた者…核心をついてはいるが…落ち着きのないように見える…。
それに…前の二人とは違い、神っぽさが少し欠けている気が…。)」
一滴目、二滴目の雫から生まれた者達は落ち着いた様子でいるが、三滴目に生まれた者は少し落ち着きのない様子で、目を輝かせながらアマノミコトに質問攻めをする形で距離を詰めた。
アマノミコトの言葉に三滴目に生まれた者はハッとし、顔を赤らめながらしずしずと詰めていた距離を離す。
「オホン…あー…落ち着きを戻したところで、先ほど話に出たように今後の事を話していきたい。
まだこの神界に何もない状態だが、座って話をするとしよう。」
そう言ったアマノミコトは何もない空間に腰を下ろした。
雫から生まれた者達も、アマノミコトが腰を下ろしたのを確認した後に同じようにその場に腰を下ろした。
「……では…まずは自己紹介だな。
我はアマノミコト…呼び名は任せる。
知っての通り、そなた達は我の涙から生まれた。
一応、男神…と言う分類だと思う。
自分では特に性別を気にした事がなかったのでな。
それから、この世界についてだが――。」
アマノミコトはこの星の誕生や自分の誕生、地球の事、この星に満ちているエネルギーの事をありのまま話した。
「――と言う訳で、悩んでいた所にそなた達が生まれた。」
「そうだったのですわね。」
「なんだか面白そうね。」
「私達もこの世界の管理とか創造、協力します!!」
「うむ…ならば、我と同じ力をそなた達に与えよう。
それと、名も必要だな。
どんな名にしようか…。」
アマノミコトが眉間にしわを寄せ、三人の名前をどうしようか小さくうなりながら考えだした。
そんなアマノミコトの傍らで、三人も自分の名前を何がいいか考えだす。
「生まれた順番で言うと、私が長女よね。
何がいいかしら~。」
「…
「いいえ、そこは
たしかに体の成り立ちは男神だけど、心や思考は女なのよ。
すなわち、女神よ。」
「はい、はーい!私は三女になるのよね!
「人の話聞いていたかしら?
ね、え、さ、ま…よ?」
「は…はい…
(にぃ…いや、
三人は自分の名前を考えていたはずだが、少しだけ話が脱線し始めた。
その様子をアマノミコトは呆れたように見ていた。
「…おぬし達…話が
このままでは
「「「えーーーー。」」」
「異論は認めん。
神さまの言うとおり…だ。」
「横暴だわ。」
「職権乱用ですわ。」
「パワハラー!」
「…ぬしら…おかしな言葉を作るでない…。
オホン…まず、先に生まれたそなた…ベロニカ。
次にマツリカ、そして最後…サザンカ……どうだろうか。」
「ベロニカ…いいわね!私にぴったり!
なぁんだ、センスバリバリあるじゃない、アマノん!」
「…だから、おかしな言葉を…まぁ、気に入ったのならよい。
……マツリカにサザンカはどうだ。」
「悪くないですわ。
ありがとうございます。」
「私もすっごく気に入りました!
ありがとうございます、アマノ様!」
三人の名も無事に決まった所で、次の話題に入っていく事にした。
四人が神として本格的に動くのはもう少し時間がかかりそうだ。
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