君は一体(2)
五月はもう腹を括ったのか流暢に喋りだした。
「まず最初に聞きますが、会長は宇宙での戦争に行ったことはありますか?」
突然何を言っているんだと思った。そんなの、、、
「言ったことないに決まっているだろう。」
いつか行かなきゃならないが、まだ私は学生の身であり、私がいくら強くてもまだ宇宙での戦争なんて出られるわけが無い。
私じゃなくてもだ。
「あるんですよ。俺はすごく前、というか最初から」
正直、言っている意味が分からなかった。
「最初から」とはどういうことだろうか?
「すまない。最初からとはどういう意味なんだ?」
この学校に入ってからの最初だろうか?
「もちろん。生まれてからです。」
何を言っているんだろう。真実を聞いたはずなのに、思考が追いついていない。
「本当に再度すまない。本当に詳細にお願いする。」
「そうですね、、、まず言っとかなきゃいけないことは、実は今の俺の母は義母なんですよ。」
(?!)
ありきたりだが電撃が走ったような衝撃が全身を駆け巡った。
あの人が義母?あんなに普通の親子していたのに?
「驚かせちゃってすいません。でも事実です。それはもちろん。母さんだって知ってます。」
こっちから聞くのは悪いと思ったが聞かずには居られなかった。
「本当の両親は、どうなっているんだ?」
本当に自分が情けなくなるほどデリカシーに欠ける。
そんな質問に五月は少し微笑みながら答えをくれる。
「・・・死にましたよ。昔俺が物心着いてすぐくらいに。」
分かってはいたが、本人がこんなに辛さを隠すような笑顔をするということはハッキリ思い出せるのだろう。
両親の死に様を。
「そこから、どうしたんだ、というか宇宙のどこにいたんだお前は!」
「それは、、わかんないんですよ、、ただ、凄く地球から遠いのを覚えてるんです。そしてただ生き延びてた。」
両親が死んで、一人で宇宙に取り残さるのはどんなに寂しく厳しいだろうか?私にはとても、想像さえつかない。
「どうやってそこから地球に来たんだ?」
次に気になるのは地球に至るまでの経緯だ。
「それは簡単です。助けてもらったんです。一人の女の子に。」
「誰なんだそれは?」
「
「は?」
どういうことだ?なぜ今出てくる、人でありながらあまりの強さと残虐さにより災害とまで呼ばれた女が。
そんな私の考えを他所に五月は続ける。私の思考を読み取ったかのように。
「会長が言いたいことは分かります。なぜ彼女がそこにいたかですよね?」
「・・・」
もはや言うことは無いのでもう聞くだけにするとしよう。
私は問いかけに対してゆっくり頷いた。
「彼女曰く、「面白そうな人間の匂いがした」らしいです。」
「はあ?」
理由になってないだろうそれは。
「俺だって分かりませんよ!本人がそういうのでそうなんです!」
「なるほど?」
どうやら天災の言うことは理解できないらしいので仕方なく思考を切り替える。
「で、まあ面白くもなんともない話なんですけど、毎日地獄みたいな場所で母と父が残した無色機体を使って生き延びてて。」
何歳なんだその時お前はとは思うが。あまり突っかかりすぎると進まないので出かかった言葉を飲み込む。
「そこで4年くらいだった頃、出会ったんですよ。周りに星が全くない。戦争場所の基本である無星空間で。」
無星空間は戦争の基本。周りに何も無く、実力勝負に持ち込めるからな。
「出会うとはどういうことだ?」
「そのままです。出会ったんですよ。もちろん初めは敵として。」
あの災害と敵として出会った?そんなことをして生き延びることが可能なのか?
九王波瑠華の伝説は多岐にわたる。一体VS1国の戦争を制したとか、ブラックホールを持ってきて地球を壊しかけたとか。
当たり前のようにいい噂は無いが、どの文献を見ても最も強い人間だと書かれている。
そんな人間と出会って生きて帰れたのか?
理解しようとする度に遠くなっていく五月という存在に少し儚さを覚えながら彼の話を聞く。
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