圧勝

「ふははっ!さあどうした!反撃しろよ!」


右から攻撃が来ると思ったら、急に縮んで左に飛んできたり。面倒くさい。

俺はそれを適当にあしらいながら準備を続ける。


「リコールをON。コード『イスラ』」


“認証”“現在

限界線リミットボーダー』6%”




俺はそれを聞き、吐き捨てるように告げる。


『リミットアウト』


その言葉に反応し、解釈を応答する。


“認証”“『限界線リミットボーダー』”


“100%”


「いつも丁寧にありがとな、相棒。」


気まぐれに吐いた機械に対する感謝に、自分で恥ずかしくなりつつ、さっきまで切っていた音声を外に繋げる。


「あーラート先輩聞こえますかね?」


俺は攻撃を受け流しながら話しかける。


「うるさい!さっきから受け流すばっかりで勝つ気あるのかお前は!」

「それ決闘してる本人がいいます?」


敵に塩を送るとはこのことだが、黙っておこう。


「もちろん勝つ気です。なので」

「はっ?なのでなんだ?受け流すばかりしか脳のない雑魚が。」


俺はニコッと微笑んだ。


「降参するなら早くしてくださいね。」


「は?それはどうゆういっっっ!!?!」


驚愕の表情が目に浮かぶな。そりゃ驚くのも無理は無い。


『おーっとここで何故か一瞬で五月選手がラート選手の後ろに回っているぅう!見間違えでしょうか!』


見間違いでは無いだろ。後ろいるんだから。

実況に呆れつつ思い切り相手のコックピットに近い部分を殴る。


「貴様!!」


どうやら1発ヒットしたくらいでプッツン来たらしい。戦いは冷静が基本なのにな。

冷静じゃない人間の攻撃は単調すぎてあくびが出る。


「もったいないな」


俺は誰に言うわけでもなく呟く。

黄色おうしょく機体の長所は伸縮することによる不規則な攻撃のリズムである。

かなり厄介だ。


それだけ厄介な能力なだけに、扱いが難しい。操縦者が選ばれる有色機体、その中でも難しいとされている黄色を冷静じゃない人間が完全にコントロールするなんて無理な話だ。

もう終わらせよう。


「さあ。クライマックスですよラート先輩。」


俺は決闘の序盤のように先輩の腕を掴む。


『おーっと!また同じ体制に入ったぁ!効かないって分かってるだろうバカァ!!』


「バカは言い過ぎだろ!!」


あっ、危ない。冷静冷静。もうやることは決まってるんだから。


「おい貴様!実況の言う通りだぞ!投げは我の機体にはきかない!」

「だれがなげるっていいました?」


先輩の機体の腕を掴んだまま思いっきり飛び上がる。50メートルくらい飛んだかな?


もちろん伸ばした腕はゴムのように今にもちぎれそうである。


『どっっどういうことでしょう!むっ無色機体が、、とっ飛んだぁぁ!』


騒然としている会場を横目に俺は先輩に警告する。


「せんぱーいそろそろちぎれるんで早く戻した方がいいですよ〜!」

「わっ分かっておるわ!!なめるな!」


先輩は馬鹿正直に戻そうとした。


それが俺の狙いだとも知らずに。


戻した先輩は震えた声をこぼす。


「なぜ浮いて、、?」


簡単に言えばゴムなんですよ、黄色機体の性能って。説明はめんどくさいからいいでしょ?


「俺が強く引っ張ってましたからね。」

「なっそんなことがただの無色機体に出来るわけないだろう!!」

「そうですね。難しいですよね。だけどできるんです。これは事実です。」


まあ俺はちょっと特殊だけどな。

だけど無色機体の可能性は無限だ。


俺はそれを証明するためにこの学園に来た。


「もう終わらせましょう」

「まっ!まて!」


先輩の反応なんて見てられるか!

機体の振り下ろすための足を目一杯天に掲げる。


俺は!俺は、、、!


「早く会長とイチャイチャしてぇんだよ!!!」


バギュンと鉱物がひしゃげる音が会場を包んだ。






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