勝利(1)

紹介が終わり、会場の人間ははいまかいまかと決闘の開始の合図を待っていた。


『さあ皆さん!待ちきれないって顔してますねぇ!いい!凄くいい!』


まったく、盛り上げ方は流石と言わざるおえないが、こちらとしても早くしてほしい。

終わらせて会長と一緒に帰りたいのだ。


『ではまあちゃっちゃと始めちゃいましょう!!』


やっと始まる。さあっ!万が一もあるし、きっちり頑張りますか!


今回は特に、あいつが見てるんだしな。


『では!皆さんご一緒に!レディ!!!』


【レディィィ!】


『ファーーーイトォ!』


【ファイトぉぉぉお!】


「なあ、貴様、、、!?」


初めに少し雑談くらい許されるだろうと、、、


思ったか馬鹿め!


『おーっと!五月選手!オーディエンスのために少し雑談を挟もうとしたラート選手に思いっきりつかみかかった!!』


「もうゴングはなってるんですよ先輩さんよぉ!」


俺は掴んだラート先輩手を思っきり引っ張り

壁に投げつけた、はずだった。

何故だ?まったく大きなものを投げた感触がしない。


伸びていたのだ。掴んでいた腕が。


少し驚きを隠せない俺の耳に、高笑いが響いてきた。


「ふふふふっははっはぁ!」


そんなに笑うことないじゃん、、、とは思うが黙っておく。


「まさか、、黄色おうしょく機体に対して、、投げようとするやつがいるなんて!!」


先輩は決めゼリフのように囁く。


「この勝負。もらったな。」


【キャーーー!】


・・・何だこの茶番。俺の黙った時間を返して欲しい。

それにしてもダサいとこ見せちゃったなぁ。

会長が忙しくて見に来てないのが救いだなぁ。

あれぇ?なんか会長に似た人影がみえるなぁ。


てかあれ会長、、、!?


えっうそ?!なんで?忙しいって言ってたのに!!見に来てくれたの!!嬉しい!!

超嬉しいよ!!


でもダサいとこ見せちゃったな。幻滅されちゃったかも?

俺は会長の顔色を遠くから伺ってみる。

するとその表情は俺が思っていた嘲笑や侮蔑ではなく。


不安や心配の表情だった。


思わず笑ってしまう。

俺はなんて勘違いをしていたんだろう。

今好きな者のためにできる1番のことは勝つことだと思っていた。

だけどちがった。本当にしなければならないのは、、、


「圧勝だ。」







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