第7話 新しい仲間

 『いつの間にか、夕方ですね』

 「うん。綺麗だね」


 後は、ワープして地球に帰るだけ。

 僕は疲れたと、地べたに座って休んでいた。

 そして、ある事に気が付いた。帰る為には、ルシラを連れて行かなくてはならない。目的がなければ、もうここに来る事もない。困った。


 『カタルさん。いえ、カタル。私を本当の相棒にして下さい』

 「え? いいの? もしかしたらもうここには戻ってこれないかもしれないよ」

 『いいんです。実は私、ダメダメで。ここでは、役に立てない。でもカタルの傍なら私、役に立てますよね? お母さんとお父さんもモンスターにやられちゃったんです。なので、モンスターは敵です。違う世界のも倒して、倒しまくるお手伝いをします!』


 そうだったんだ。ここにても独りぼっちだって言うのなら、仲間として連れて行こう。


 「ぜひ、お願いします。相棒!」

 『はい!』


 僕がパーで右手を出せば、そこにちょこんとルシラの手が。あぁ、肉球だぁ。ハイタッチならぬ、ロータッチ。


 「とは言え、誰にも言わないで行っていいの?」

 『構いません。きっと、会えば私ではなく、カタルが引き止められると思うし』

 「なるほど」


 ここでは、僕は勇者なのかも。


 『わかったとは思いますが、誰一人ここに近づいていないでしょう? 本当に平和で戦えないんです。だから見つかる前に戻らないと、戻れなくなると思います』

 「うん。わかった。じゃ戻ろうか」

 『はい』

 「地球へ」


 冒険の書に手をかざし言えば、来た時同様にまばゆい光に包まれた。


 「おかえり結琉」


 あぁ、ちょっとの間のはずなのに、懐かしく聞こえるばあちゃんの声。


 『おかえりなさいませ。カタル様、ルシラ様』

 「ただいま!」

 『ただいまです』

 「上手くいったようだな」

 「うん。この杖のおかげだよ」

 『まったくもう。最初からズルさせるのですから』

 「予想外の事だったからな。ほれ、それらは返しなさい」

 「え! くれるんじゃないの?」

 「貸したのだ」

 「え~」

 『うふふふ。大丈夫ですよ。魔法も覚えたのですし』


 ルシラが笑ってそう言った。

 よかった。元気だ。


 『まあ、杖がなければ絶対に行かせなかったと思いますけどね』

 「え? そんなに凄いの?」

 「魔法を覚えたとして、杖なしで使えたか?」


 そういえば、僕のMPってどれくらいなんだろう?

 あんな凄い魔法を覚えたのに、僕のレベル9なんだけど。これだともしかして、封印の光なんて使えないんじゃないだろうか。


 「使えてない? というか、僕のMPってどれくらいなの?」

 「冒険者は一律、レベルの10倍だ」

 「え! じゃ僕は、最大90しかないの? それじゃ全然戦えないよ」

 「当たり前だ。だからこういうので補う。錬金みたいのも出来る様になるから作るといいだろう」

 「え? 本当? 楽しみ」

 「で、ルシラはここで生活する事にしたのかな?」

 『はい。お世話になります』

 「決断してくれてありがとう」


 ばあちゃんは、まだ瘴気が出始めたばかりだから、ニャエルトのモンスターは弱いと踏んでいたみたい。その上で、杖を貸し魔法を自由に使える様にしてくれた。

 さすが、ばあちゃんだ!


 今日は、ばあちゃんの部屋で、ルシラの歓迎会と僕の初冒険のお祝いをする事になった。

 ルシラは、両親にも見えないようだから、猫なんて飼えませんって言われずにすんだ。そして、ルシラは僕の部屋で寝泊まりする事になったんだけど、いいのかな? 女の子みたいだけど。

 僕としては、普通に猫としかみてないからいいんだけどさ。


 ばあちゃんの部屋から持ってきた座布団を床に置いて、タオルも用意。

 冒険の事を誰にも言えないのが残念だけど、これからが楽しみ。

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転生しなくても冒険者になっちゃった☆ すみ 小桜 @sumitan

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