第5話 冒険の始まり

 眩しさが収まって目を開けるとそこには、大草原が広がっていた。


 「本当に異世界に来たんだ……」

 『カタルさん、ありがとう』

 「あ、うん。これからだけどね」


 ルシラは、安堵した様子だ。

 そうだ。靴を履かないと。


 靴を履きながら辺りを見渡すと、ずっと向こう側に黒い霧が見える。きっとあそこに瘴気が出ている扉があるに違いない。


 「ねえ、あそこがそうなの?」

 『はい。たぶん。今は、瘴気の周りを結界で覆っています。瘴気を含んでいるモンスターも結界からこちら側にはこれないようです』

 「そうだんだ」


 という事は、あの中に入るとモンスターがうじゃうじゃって事だよね。

 わくわくもするけど、ちょっぴり怖い。


 「よし、行こう」

 『はい』


 僕達は、一直線に瘴気を目指す。

 結界があると言っていたけど、僕にはわからないな。

 けど何となく、薄暗くなった。たぶんもう、瘴気がある場所なんだ。


 『う……』

 「ルシラ、大丈夫?」

 『はい。少しだるくなっただけです』

 「そう。抱っこしようか?」

 『いえ。大丈夫です』

 「わかった。無理しないでね」


 僕は平気だから冒険者は瘴気に強いのかも。

 ころころころ。

 うん? あれは! ボールスライム!

 よし、魔法で……って、僕まだ魔法を覚えていないじゃないか。

 仕方がない。


 「えい」


 ぼこ。

 凄い。杖で叩いたら一発でボールスライムが消滅した。

 確かボールスライムは、経験値が1だったよね。もう一体倒さないと、魔法を覚えられないかな。

 いた!


 「えい」


 ぼこ。

 ふう。これで魔法が覚えられる。光魔法系のを覚えろって言われたっけ。

 じゃ『照らす』かな。


 「照らすを取得。よし。次は……」


 □<光魔法>ライトボール【-5】


 ライトボールこれかな。攻撃魔法だよね。

 なので僕は、ボールスライムを杖で叩いて倒しながら進んだ。


 「ライトボールを取得。やったぁ。とうとう攻撃魔法をゲットした!」

 『おめでとうございます』

 「うん。あ、いたいた。ライトボール」


 目の前に現れたボールスライムに杖を向け唱えると、杖の先から光の玉が発射され、ボールスライムに命中。倒す事が出来た。

 うーん。でもあれだな。叩いて倒せるなら魔法を使う事もないのかな?

 でも遠くから攻撃できるのは便利。


 □<光魔法>浄化【-10】


 次に覚える光魔法は、浄化かぁ。もしかして、ここら辺一体浄化出来ちゃうのかな? よしモンスターはどこだ。

 って、出てくるのはなぜかボールスライムばかり。

 まあ倒せないモンスターが出てくるよりはいいけどさ。




 「浄化を取得。ふう」


 どさ。

 え! 足元を見れば、ルシラが倒れている!


 「ルシラ!」


 僕は、ルシラを抱き上げた。

 もしかして、瘴気がここら辺って濃い?

 そうだ。浄化を使ってみよう。


 「浄化!」


 杖を掲げ唱えた。

 杖から光が広がり降り注ぐ。辺りが明るくなった。瘴気の霧が消えたみたい。


 「ルシラ。しっかりして!」

 『………』


 起きないんだけど、どうしたら。そうだ。水を飲ませよう。

 まずはモンスターを倒して……。


 「ライトボール。ライトボール」


 それで水分補給を覚えて、飲ませる。


 「水分補給を取得」


 ルシラを地面に横たえ、杖を向けた。


 「水分補給」


 ジャバー。


 「うわぁ」


 思ったより、勢いよく出たんだけど。


 『う~ん。カタル……さん』

 「大丈夫? 無理しないでって言ったのに」

 『ごめんなさい。足手まといになりたくなくて。でも結局……』

 「足手まといだなんて。一緒にいるだけで、勇気をもらっているよ。そうだ! 僕、やってみたいことあるんだけどお願いできる?」

 『はい。私にできる事でしたら』


 ルシラは、起き上がると体を振った。

 うわぁ。冷たい。

 よかった。元気になったみたい。


 「じゃ肩に乗ってもらえる」

 『え!?』


 やってみたかったんだよね。猫を肩に乗せて歩くの冒険


 『重くはありませんか?』

 「うん。平気。えへへ。ありがとうね。なんだか、勇者になった気分だよ」

 『勇者ですか。冒険者とは違うのですか?』

 「うーん。悪い奴を倒すのが勇者かな?」

 『では、カタルさんは勇者でもありますね』

 「そうなるのかな?」


 こうして歩きながらたまに浄化を行いつつ進む。たまに現れるボールスライムを倒すのも忘れない。

 何となく、ボールスライムが大きくなっているような気がするけど、一発で倒せるから問題ないかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る