第4話 旅たち

 「いいかい結琉。冒険者が旅立つには条件が必要で、クリア出来たら元の世界へと戻れる仕組みなのだ。つまりは、瘴気が出ている扉を閉める事が条件になるだろう。魔素を集めるのではない。それでも行くか?」


 僕は、うんと力強く頷いた。

 これって運命だよね。


 「さすが私の孫だ。冒険者がワープするのにはもう一つ条件がある。それは、相棒がいる事だ」

 「え? そこからしないといけないの?」

 「相棒を経て、やっと半人前なのだ」

 『え! では、私は帰れないのですか……』

 「だったらルシラを相棒にすればいいんじゃない。できるよね? ばあちゃん」


 ルシラは精霊ではないけど、相棒は精霊でなくてもいいならできるはず。


 「あぁ、問題ない」

 『ありがとうございます!』

 「光魔法系を覚えていくと良い。それと、これをあげよう」


 ばあちゃんは立ち上がると、タンスから何やら出してきて僕にくれた。


 「懐中時計?」

 「いや、羅針盤だ。と言っても、ワープして降り立った場所を示すモノだ。出発点に戻れるって事だな」

 「ありがとう。けどこれより武器とかがいいな……」


 あの時は、蹴っていや払って倒せたけど、そうはいかないよね。


 「仕方がない。ほら」

 「それって、ばあちゃん自慢の杖!」


 この世界の杖と言えば、歩く為の補助。だからファンタジーの様な先がクルっとなっているものなんて使いづらいはずなのに、ばあちゃんが愛用しているのはずばり、魔法使いが持っているような杖!


 「いいの?」

 「あぁ。それは自動的に魔素を吸収する杖だ。魔法を覚えさえすれば、かざして唱えるだけで発動する」

 「ありがとう」


 ちょっと嬉しいかも。使ってみたかったんだよね。


 『そんなものまで渡して。本当に甘いのですから。ルシラ様。私から一言あります。相棒になったからには、カタル様をお守りください。相棒になれば、回復魔法が備わります』

 『はい!』


 ルシラは、凄く元気になった。

 うん。がんばろう。


 「では、額と額を合わせ、相手の名を言って相棒になる宣言をするとよい」


 僕らは頷き、額をくっつけた。


 「僕は、ルシラを相棒にします」

 『カタルさんと相棒になります』


 一瞬僕とルシラの体が輝く。


 「さてと、どうせならこれで倒したモンスターを浄化して魔素を持って帰って来い」


 そう言って、青い腕輪を僕の左腕にはめた。


 「倒せば勝手に浄化し魔素を吸収するから、結琉は倒すだけでよい」

 「倒すだけって……」


 それが一番難しいんじゃないだろうか。


 「ここからワープするといいだろう。そうそう、冒険の書に手を添えて、条件を記載すればワープできる。帰りは、ワープした地点に戻って来る事になるからな。無事に戻って来るのだぞ」

 「うん」


 なんだか緊張するなぁ。

 まずは、冒険の書に条件を書かなくちゃ。


 「ニャエルトに行って、瘴気が出ている扉を閉じる事」


 一瞬、冒険の書が光り、パラパラとページが勝手にめくられる。開かれたページに条件が書かれていた。


 「それでは行っておいで。ワープするのも冒険の書に手をかざし、行き先を言えばいい。帰りも条件を満たせばこっちへ帰れる。ただし、ワープしてついた着地地点の付近からでないと飛べないからそれだけは覚えておくといい」

 「うん! じゃ行ってきます。ルシラ行こう」

 『はい! ありがとうございました。カタルさんをお借りします』

 「あぁ。相棒として宜しく頼む」


 僕は、一度深呼吸して「ニャエルトへ」と口にする。


 『カタル様、靴~!!』


 ポイっとキラが投げてよこした。僕がそれをキャッチするのと同時に、周りが眩しくなり目をギュッとつぶるのだった。

 さすがキラ。すっかり靴の事なんて忘れていたよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る