第2話 話す猫の正体

 ばあちゃんのお話を聞いた後、部屋に戻った僕は宿題をやろうと机に向かうも冒険の書が気になって見ていた。

 気になるよね? 冒険の書だよ。

 開くとまずは、僕の情報が書かれていた。


 ―――

 カタル 10歳 LV1 相棒:なし 累計経験値:1


 初めて倒したモンスターは、ブルーボールスライム。

 その時に、冒険者へと覚醒した。

 ―――


 どうやら僕は、モンスターを倒した事により冒険者に覚醒したみたい。という事は、あの場面に出くわさなければ覚醒しなかったのか。

 ペラっとめくって次のページを見てみると、ルールが書いてある。


 ―――

 〇経験値をスキルツリーに振り分け、能力や魔法を取得する事。

 〇その世界の人を殺せば、冒険の書は消滅し、取得した能力も消滅する。

 ―――


 「魔法が使えるんだ!! よし! スキルツリーは?」


 次のページをめくると、スキルツリーのページだった。


 □言語理解【-1】


 一番最初は、これしかない。たぶん、経験値を1消費するって事だと思うけど。

 それよりも次に選べるのが三つ。灰色で表示されているけど、これって……。


 □<水魔法>水分補給【-2】

 □<火魔法>火起こし【-2】

 □<光魔法>照らす【-2】


 なんというか、いわゆる生活魔法みたいな感じ?

 この先の表示はない。覚えると次のが表示されるようだ。


 「あって便利なのって照らすなのかな? なんで攻撃魔法じゃないんだろう」

 『あ、それはですね。一応、武器を持って世界へ旅立つので攻撃系は最初は必要ないんです。食料は持って来てはいますが、現地で手入れなくてはいけないからです。飲める水が手に入るかわからないので、水分補給の魔法は必須なんでよ』

 「……そうなんだ」


 僕の独り言に、キラが答えてくれた。でも、この世界に住む僕には必要がない魔法だ。


 「あのさ、キラ。魔法の覚え方わかる?」

 『取得したい能力名を取得と言えばいいはずです』

 「ありがとう」


 お礼を言うと、キラはうんうんと頷いた。


 「言語理解を取得」


 うーん。何か変わった感じもしない。

 そういえば、相棒ってどうやってなるんだろう。この世界に精霊っているのかな?


 「ねえ、キラ。この世界で精霊って見た事ある?」

 『精霊ですか? 私の様な形をした精霊はおりませんが、動物の様な姿の精霊ならいるようですね。基本的に世界には、人間や動物、魔物モンスター、精霊と三種いると言われています』

 「へぇ。そうなんだ。じゃ、僕も相棒をゲットできるかもしれないね!」

 『そうですね。言語理解を覚えたのなら、この世界の精霊とも会話できるようになったはずです。まずは、相棒になってくれる精霊を探しましょう』

 「うん!」


 わくわくするなぁ。フェンリルみたいのいないかな……。いや見た事ないか。話せないけど、きっと見えてはいたと思うから。気が付いてちょっとがっかりしちゃった。


 ガサ。

 ベッドの方から音が聞こえたと振り向けば、猫が立ち上がりこっちを見ている。

 ベッドに横たえて、タオルを掛けて寝かせていたんだ。


 「よかった。起きたんだ」

 『冒険者……様』

 「え! しゃべったぁ!?」

 『やっと出会えました!』

 「やっと? 僕を探していたの? って、そんなわけないか」

 『いえ、探しておりました。まさか冒険者がこんなに少ないとは思わなく……』

 『ちょっと待って。あなた、もしかして冒険者にお願いをしに来た者なの?』

 『はい』

 「へ? どういう事?」


 冒険者なんてこの世界にはいない。いや、僕は冒険者になったけど、それってを助けたからであって……。


 『あなた、来る世界を間違えているわ』

 『え? ですが……』

 「世界!?」


 二人の会話を聞いて驚いた。目の前の助けた猫は異世界から来たという事だから。ただの猫ではなかったんだ。


 『お願いがあります。どうか、私の世界をお救い下さい!』

 「え? 救う?」


 そうか。それで冒険者を探しに来たんだ。


 『ですから、来た世界を間違え……』

 「わかった。僕でいいなら」

 『カタル様! そう易々とお受けするのではありません』

 「でも、異世界に助けを求めるぐらい困っているんだよね」

 『だとしてもです。いいですか、私はリナ様の相棒なのですから異世界にはいけませんよ。一人で何ができますか』

 「う……」


 否定できない。こういう時は……。


 「ばあちゃんに相談しよう!」

 『そうですね。それがいいでしょう』

 「そういう事だから、行こうか。えーと、名前はなんて言うの? 僕はカタル。こっちは、精霊のキラ」

 『はい。ルシラと申します。よろしくお願いします』

 「よろしくね、ルシラ」


 僕は、ルシラを抱き上げた。一瞬ビクッとするも抵抗しないので、そのままばあちゃんの元へ急いだ。

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