転生しなくても冒険者になっちゃった☆
すみ 小桜
第1話 覚醒
「フミャ~」
あ! 猫が襲われている! しかも青いサッカーボールに。
それは、猫を確実に追いかけていた。だって、坂を駆け上がる猫を追いかけているのだから。
「助けなきゃ」
『あれはスライムですね』
「スライム!?」
僕が知っているスライムって、水滴な様な形なんだけど。あれってどう見てもボール。
って、結構早い。そりゃそうか。猫が走るスピードだもんね。
でも止まった。正確には、ボールが猫にアタックしたんだ。
「やめろ! えい!」
プニ。
追いついた僕は、ボール……じゃなかったスライムを蹴った。けど、足がスライムに突っ込んだ。
「うわぁ」
慌てて足を振り回す。
ひんやりと冷たいゼリーに足を突っ込んだみたいな感覚。
スライムがやっと僕の足から離れた。その拍子に電柱柱にぶつかって、そのまま消えちゃった。
「ふう……びっくりした」
ぼと。
「あ、いて」
安堵していたら頭の上に何かが落ちて来た。それは、そのまま僕の手の上に落ちてくる。
何だろうと見ればスマホぐらいの大きさの青い手帳? 本?
『まあ! 冒険者に覚醒されたのですね! カタル様』
「へ? 冒険者?」
マジか~!
転生しなくても冒険者になっちゃった☆
僕は、
けど、他の人とはちょっと違って、人でないモノが見える。幽霊とかではなくて、さっきの様なモンスター的な?
今までは、見えていても無視していたんだ。今回は、緊急事態だったから。
見えるのには理由があって、僕のばあちゃんがなんと異世界人! あ、今笑ったな。本当なんだ。証拠にほら、この子。キラって言うんだけど、ばあちゃんと一緒に異世界から来た精霊。
パッチリとした緑の瞳に晴れ空の様な真っ青な長い髪。そして、緑色の透明な羽。大きさは、僕の手ほどの大きさで小さい。それが、僕の周りをフワフワと浮いている。
キラが見えるのは、僕とばあちゃんだけなんだ。だからこの事は内緒ね。
『猫様は、気を失っているようですよ。どういたします?』
「うん。連れて帰ろう。助けたのにこのまま放置なんてかわいそうだよ」
けどお母さんがいいって言うかな。
僕の両親は、子供は外で遊びなさいって言って、ゲームを買ってくれないんだ。だから友達と遊んでいても、個々のゲーム機で遊び出したらつまらないからいつもキラと外で遊んでいる。
猫の事も冒険者の事も、ばあちゃんに聞いてみようっと。
「ただいま~。ばあちゃ~ん」
僕は、いわゆるばあちゃんっ子だ。
両親が共働きだし、秘密を共有しているからそうなるよね。
「おかえり。今日はもう外遊びはいいのかい?」
「うん。あのね、この子を助けたんだ」
抱きかかえている猫を見せた。
真っ黒い猫。そう思っていたけど、足の先だけ白い。
「おや、まあ」
「それとね……」
いつもこうやって、今日の出来事をばあちゃんに話しているんだ。
で、今回もさっきあった事を話した。
ばあちゃんは、うんうんと頷き聞いてくれている。
「そうか。おめでとう。まさか、向こうでの能力が結琉に出るとはね」
そう言って、ばあちゃんは僕の頭を撫でた。
ばあちゃんからは、自身はキラを連れて異世界から来たとしか聞いていなかったけど、今回の事があって色々と話してくれた。
ばあちゃんが生まれ育った世界は、10歳ぐらいになると冒険者として覚醒する。覚醒すると『冒険の書』というのが出現して、それに自身の冒険などが記されるらしい。
そして、冒険者になった者達は、
ばあちゃんが言うには、地球の様に魔法がない世界には、モンスターがいっぱいいて悪さをする。けど、そこに住んでいる人にはそれらが見えない。
なので、冒険者となった人達は、異世界でモンスター退治をしてくれている。
「そこで、
『正確には、
「ハテンコウって?」
『簡単に言うと、他の人がしないような事をするでしょうか。ヒロシ様にも私やモンスターは見えませんから』
「もうキラったら。結局爺様に私の素性は言えなかった」
そう言ってばあちゃんは、少し寂しそうな顔つきになった。
「結琉にキラが見えるとわかって、もしかしてとは思っていたが。これからは一緒に冒険が出来るね」
「え……」
知らなかったけど、今もモンスター退治をしていたみたい。ばあちゃんって、パワフルだ。
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