第16話 餃子といえば

 最近、地域別お金をかけているもの、というランキングが発表された。

 (多分)総務省による家計調査によると、今現在最新の一世帯(二人以上)当たりの餃子の年間支出額の一位は、静岡県浜松市である。



「一位! つまり富士山のてんこちょ! それは俺様だ! 崇め讃えろ! あーはっはっはっ!」

「ウザっ」

 てんこちょ、とは静岡弁で頂上という意味らしい。その日、静岡県はお祝いと称して餃子パーティーを開いたのだ。大喜びしている静岡に、一緒に餃子を食べている山梨はそう呟いた。ちなみに長野と、山梨が連れてきた新潟も一緒にいる。

「まあ、一位はよかったね。おめでとう」

「ありがとう!」

 控えめにお祝いの言葉を言う新潟の皿に、静岡はどんどん餃子を追加していった。

「俺なんかがここに来て良かったのか……? 静岡と山梨の間に俺と長野がいてもいいのか……?」

「別に私たち付き合ってるわけじゃねえよ? 富士山を巡って永遠のライバルなだけじゃん」

「おい待て新潟はともかく何で俺も除け者にされるんだ」

 長野が新潟の髪の毛を引っ張った。新潟はびくともしないが、落ち込んではいるようだった。そんな新潟に、あまり関わりのない静岡は言った。


「餃子がうまいとお米も食べたくなる! 浜松餃子に新潟の米は最強だ!」

「静岡……!」

 自分が育てた米を褒められた新潟は嬉しそうであった。


 ここで浜松餃子について少し説明をしよう。基本的にはキャベツ、ニラ、玉ねぎ、豚肉でつくられたタネを皮で包んだもので、野菜が多めであっさりとした味わいだ。とりあえず野菜が多いため、臭みがなく野菜の甘みが際立つ優しい味がする。付けあわせとして茹でもやしが出てくるが、これはフライパンに餃子を円にして並べた時、真ん中の空いたスペースが寂しいのでその中に茹でもやしを入れたためであるらしい。

参考↓

https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/miryoku/hakken/tokusan/hamamatsugyoza.html

浜松に行った時、みなさんぜひ食べましょう。




 ところで、餃子といえば他にどの市が思いつくだろうか。浜松餃子が出てくるのなら、宇都宮餃子も思いつくはずだろう。

 今回宇都宮市は一位ではなかった。

 栃木は北関東三人で集まって、反省会をしていた。

「やっぱり、あの日神奈川くんちに言ってカレーを食べたのが間違いだったんだ。あの日も餃子にすべきだったよ……」

「ここまでくるとお前の健康が不安だわ。病院行け」

 茨城がそう栃木に進めた。群馬は無言で餃子を食べた続ける。

「なんか毎年宇都宮と浜松が争ってるイメージあるけど、この様子じゃ二位か? 惜しかったな」

「違うよ! 茨城くんのおバカ!」

「お、おバカ……」

「茨城、ランキング見てなかったのかよ」

 群馬が五皿目を完食して、新しい餃子のお皿を取りながら言った。

「今の栃木にそれを言うのはあり得ねえ」

「はあ? 宇都宮と浜松以外に餃子有名な市ってあんの?」

 茨城は栃木から新しい餃子をもらいながら言った。群馬は茨城にスマホの画面を見せた。


「見ろ、一位は浜松、二位は宮崎市、三位に宇都宮だ」

「え、宮崎? 宮崎って餃子有名だっけ……?」


 このランキングはマジである。

 ここで宇都宮餃子についても説明しよう。他の地域の餃子と比べると、白菜やキャベツといった野菜が多めに使われている。にんにくもあまり使わない。先ほど説明した浜松餃子も野菜メインだったが、浜松餃子はキャベツと玉ねぎ、宇都宮餃子は白菜メインだそうだ。

 参考↓

https://www.karittogyoza-kogane.com/blog/wp/2022/01/18/02/

宇都宮に行った時、みなさんぜひ食べましょう。




 先ほどのランキングの通り、二位は宮崎市であった。てっきり宇都宮と浜松がいい勝負をすると思っていた人も多いだろう。

 しかし、二位は宮崎市である。


「兄貴ー! 俺二位やったー!」

「はいはいおめでとう」

「お祝いとして今日は一緒に餃子食べようよ、兄貴!」

 大分も一緒、と宮崎は寝ている鹿児島に軽くチョップを何回かした。ちなみに宮崎の家集合である。大分は風呂に入ってから来るそうだ。

「お前餃子有名だったか……?」

「なんか知らんけんど、一位になったこともあるんちゃ!」

「は?」

「まあそん時はコロナ禍やったし、元々宮崎に餃子んお持ち帰り文化があったかい、一位になれたっちゃがねー!」

「ああ、そういうこと」

「でも今回宇都宮に勝ったってことは、日本三大餃子に宮崎餃子が選ばるる可能性もある……!」

「三大餃子なんてあるのか」

 ちなみに三大餃子は、栃木県の宇都宮餃子、静岡県の浜松餃子、そして福岡県の八幡餃子といわれている。ここに宮崎はない。福岡ならある。


「ぎょうさん餃子用意する! あ、兄貴は餃子嫌か?」

「嫌じゃねえから寄越せ」

「はーい! でも大分はとり天食ぶるって言いよったちゃ!」

「マイペースだなあいつ。そこは餃子食べてやれよ」


 ここで宮崎餃子について説明しよう。大きな特徴はラードで焼くこと。皮に仕入れた新鮮な野菜と宮崎のブランド豚を包み込み、素材を惜しみなく使い丁寧に焼き上げる。九州は畜産が有名なイメージがあるが、宮崎はブロイラーが全国一位、豚が全国二位、肉用牛が全国三位である。

 参考↓

https://yataibone.co.jp/menu/miyazakigyoza/

宮崎に行った時、みなさんぜひ食べましょう。


 そして先ほど三大餃子で出てきた福岡の八幡餃子についても説明しよう。八幡餃子には大きく四種類の系統があり、鉄なべ系、中国本土系、ラーメン系、お母さん系がある。ちなみに薬味は柚子胡椒である。

 参考↓

https://yahatagyouza.net/

福岡に行った時、みなさんぜひ食べましょう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る