第14話 魅力度ランキング

 今年の都道府県魅力度ランキングを発表された。一位から五位までの都道府県は前年と変わらず、北海道が不動の一位となっていた。

 三位、沖縄は北海道を祝おうと、森の中にある北海道の自宅まで向かった。ちなみに、手土産に海ブドウを持ってきている。

「はいさい! 北海道さん、おめでとうございます!」

「あ、沖縄。来てくれたんだね」

 沖縄は庭でフキを取っている北海道を見つけ、声をかけた。

「今年も一位ですよ! やっぱりすごいですね……」

「沖縄も三位でしょ? 十分すごいよ。俺たち毎年このランキング見ると、自然豊かっでよかったって思うよねー」

「そうですね! ホテルとかたくさん建ってますけど、自然はやっぱり大事です!」

 そう二人で楽しそうに話していると、いきなり空間が裂け、東北のメンツがやってきた。


「えっ!?」

「あ、青森達来てくれたんだね!」

 驚く沖縄。北海道は腰のあたりにある亜空間を見下ろし、各県に挨拶した。

「久しぶりだね」

「北海道さん! こんにちはー!」

「こら岩手! あんまりはしゃぐな!」

 走り出そうとする岩手を、宮城が急いでつかんだ。

「うぐっ」

「……私も走りたい」

「ほら、山形真似したぐなっちまったべ!」

「ちょっと、子ども扱いしないでよ! お酒も飲めるもん!」

 頬を膨らませる山形の隣に、秋田が立った。

「わり宮城、私も走りでゃ」

「はぁ!?」

「だって犬だんて」

「うん、走ってていいよ! けど、庭の中でね。そこからそこまで、全部庭だから」

 北海道が三人を優しく見下ろしながらそう伝えた。三人はすぐに笑顔になり、北海道にお礼を言った。

「ありがとう! 作物踏まないように気を付けるね!」

「うん、お願いね」

「どうも北海道、私も走るね」

「じゃあ僕も!」

 三人はすぐに走りに行った。秋田がダントツで速い。宮城は岩手を連れ戻そうとしたが、諦めた。子供の体力には勝てる気がしないのだ。

「あいづ、関西ど中国四国ど九州も迎えにえぐっつってだのに……しかだねぁー、千葉さ頼むが」

 宮城は怒られることを覚悟して千葉に連絡を入れた。


 沖縄は不思議に思っていた。

「……今日ってみんな集まるの?」

「あれ、知らなかったの? 魅力度ランキングについて話し合おうってことになったから、魅力度一位の俺の家にみんなが来ることになったんだよ」

「そう言えば、そんな連絡きていたような……」

 その後、千葉がその他地域の化身たちを飛行機で連れてきて、全員が北海道の家にお邪魔することになった。



 北海道は自分の椅子に座り、他の都府県は持参したパイプ椅子に座った。全員位置に着いたことを確認した四位、東京が話を進める。

「今回の都道府県化身会議は、魅力度ランキングについて」

「あ、北海道おめでとうネ!」

 七位、神奈川がそう祝いの言葉を述べると、他の県たちも同じような言葉を繰り返した。

「みんなありがとうねー!」

「次こそは……」

 二位、京都が悔しそうにハンカチを嚙んでいた。

「まず、トップ五は変化なし」

「毎年同じような結果だし、ちょっと僕飽きたかも」

 沖縄は特に周りの目を気にしないでそう発言した。途端に鋭い視線がいくつか刺さっているのだが、本人は気にしていない様子だ。


「で、相変わらずの茨城に佐賀……」

「おい東京! そんな目で俺を見るなよ!!」

 最下位、茨城が叫んでいた。鋭い視線を向けていた一人である。

「けどお前の最下位ネタはもうさんざんだろ。もう枠の一部としてしか見られてねぇんじゃね?」

 十二位、千葉が容赦なく傷口をえぐった。

「生徒たちからも言われたよ……『先生、今の気持ちは?』『魅力がねえのが魅力』『最下位上等。上がる気はねえよな』とか、さんざんだよクソ!!」

「お前って魅力の発信が下手なんだよ。鹿島神宮もあるだろ。あとなんか今コキアがいっぱいあるところ」

「お前褒めるか貶すかどっちかにしろよ……俺が悲しいだろ」

 ここで鹿島神宮について説明しよう。鹿島神宮は全国にたくさんある鹿島神社の総本社であり、日本三大神社・神宮にあげられる神社の一つだ。日本三大神社・神宮と言えば、千葉にも香取神宮がある。

 ちなみに『今コキアがいっぱいあるところ』とは、ひたち海浜公園である。


 落ち込んだり喜んだり怒ったりと感情が激しい茨城から、東京は泣いている佐賀へと目を向けた。

「ああ、佐賀さん泣かないでくださいよ。泥だらけになりますよ?」

 十位、長崎がそう声をかける。

「佐賀には魅力がなかとか……悲しか事ばい……どうすっぎー長崎んごと魅力ん上がるとばい……」

 四十六位、佐賀が細々とした声で言った。

「佐賀さん、元気だしてくれちゃ!」

「そうやわあ、宮崎もこう言うんやし」

 二十三位、宮崎と二十五位、大分がそう励ます。

「佐賀、こいつよりはましばい」

「この女よりましだと思うぞ」

 十八位、熊本と十九位、鹿児島がお互いを貶しながらそう言う。

「……佐賀、頑張ってちょうだい。あなたは魅力のある県なのよ」

「じゃあ佐賀県の好きなところ言うてみんしゃい!」

 励ました東京に、佐賀が泣きながら訴えた。東京は微妙な顔をして、苦笑いを見せた。

「やっぱりいかんのや……」

「そげんランキングん順位上げたかなら、福岡県になる?」

 六位、福岡が佐賀の後ろに立ち、頭を軽くつかんだ。佐賀が小さく悲鳴を上げた。

「ひえっ」

「福岡さん、本気ですか?」

「冗談」

「ならいいです。佐賀さんももっと魅力をPRしてくださいね」

「うん……」

 ちなみに作者の佐賀のおすすめのものはブラックモンブランというアイスである。


「茨城、佐賀ときたら……」

「僕ですよね! 知ってますよ!」

 四十五位埼玉は、そっぽを向いてそう強めの口調で言った。

「僕だって他のどの都道府県よりも魅力ありますよ! さいたま新都心だって、超都会ですし!」

「都会都会言ったって、秩父は田舎だろ。あとお前海ないだろ」

「千葉さん、あなたより人口多いんですからね!? 房総半島だって田舎ですよ!」

「空港もないだろ。それと言った代表的なイメージもない」

「に、日本一長いサイクリングロードがあります! 雛人形だって、鯉のぼりだって!」

 千葉と埼玉はしばらく言い合いを続けていた。


「……あんなに魅力がぱっぱと出てくんのに、なんであいつ四十五位なんだろ」

 茨城がそう呟いた。

「……俺も頑張んねえと」

「そうだね……北関東のイメージを上げないと」

 四十四位群馬、三十九位栃木がそう呟いた。

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