女子大学生は間違える

第37話 幸せになれない桜さん

 リビングでテレビをみていると、桜さんに問いかけられる。


「千鶴さんって最近、お酒飲みませんよね。どうしてですか?」

「私がお酒を飲んでいたのは、不安とか苦しみから逃げるためだったんだよね。あと、桜さんにお酒で酔った勢いでえっちなことをしないため」

「そ、そうなんですねっ。やっぱり千鶴さんはロリコンさんです。理性で押しとどめないといけないほどに、本能が中学生の私を求めているんですねっ」


 桜さんは恥ずかしそうにもじもじしている。太ももの間に手を挟んでる仕草が、なんだかえっちだ。って、さっきから私の頭の中はえっちなことばかりだ。そんな私の考えを読んだのか、桜さんはつげる。


「あ、あの、ベッド行きませんかっ? 千鶴さんも私と、その、したいんですよね?」


 桜さんが艶っぽい視線を私に向けてくる。まだ幼い顔つきなのにいやらしく感じてしまうのは、きっと私が桜さんに恋をしているからなのだろう。お風呂を上がってから、桜さんをみるたび体が疼いてしかたない。


 桜さん専用のロリコンになってしまった私に、拒めるはずもなかった。


「そうだね。いこっか」

「は、はいっ……」


 私たちはテレビを消して、恋人つなぎで寝室に向かった。

 

 私には聞かなければならないことがある。本当に桜さんが罪悪感を感じていないのか、知らなければならないのだ。さもなくば、桜さんは一人で傷つくことになる。


 桜さんの不幸の上に成り立つ幸せなんて、求めていない。そんなことをするくらいなら、もういっそ二人で不幸になったほうが幸せだ。 


 でも桜さんの本心を聞きだす方法も分からなかった。


 それを後回しにするわけにはいかないって分かってる。でも今だけは桜さんとの時間に幸せだけを感じていたかった。だって、一度は離れ離れになってしまったのだ。心が張り裂けんばかりの苦しみを味わったのだ。


 せめて今だけは幸せに逃げてしまいたいと思ってしまう。


 とはいえ薄暗い寝室のベッドの上に横たわった桜さんは小柄で幼くて、どうしても罪悪感のようなものを感じてしまう。本当に大学生の私が汚していいのか、分からなくなってしまう。それが私の頭の中に根付いた常識という名の壁だった。


 これからする行為はキスとは次元が違うのだ。


「……千鶴さん?」


 桜さんはうるうるする瞳で私を見上げていた。


「やっぱり私とじゃ、無理ですか……?」


 桜さんは悲しそうにしている。やっと幸せになれるかもしれないのに、こんなところで嫌われてしまうのは嫌だ。私は服を脱がせようと、ボタンを外していく。


 その間中、桜さんは恥ずかしそうに口元に手を当てて、私の手をみつめていた。やがて私はボタンを全て外し終えて、桜さんの上半身を露わにする。ピンクのブラとぷにぷになお腹がみえた。


「……あっ」


 お風呂で裸はさんざんみたはずなのに、桜さんの顔は真っ赤だ。私だって、顔が信じられないほど熱くなっている。


 というか、えっちするときってどんな手順なんだっけ!? やばい。全然分かんないよ。とりあえず全部脱がせるのかな? それとも着せたまま? 桜さんは当然そんなこと知らないはずだし、どうしよ……。


 と、とりあえずキス。キスをしよう……!


 私は桜さんの上に覆いかぶさるような形で、そっと唇を触れ合わせる。すると桜さんは当然のように舌を入れてきた。えっ。なんか桜さん、積極的すぎない!?


「千鶴さんっ。ここ、触ってくれませんかっ?」


 唇を離すと甘い声で桜さんがズボンを引っ張って、ピンク色のじっとり湿ったショーツをみせつけてきた。こ、ここを触れと、そういうことですか!?


「わ、分かった……」


 私は優しく桜さんのを触る。すると桜さんはびくびく震えていた。


「んっ……」


 可愛い。可愛いけれど……。


 どうして、泣いているんだろう。桜さんの頬を涙が伝っている。


「ど、どうしたのっ? 痛かった?」

「違います。これは、その……」


 桜さんはますますたくさんの涙を流していた。ぐすぐすと嗚咽を漏らしている。かと思うと、突然ベッドから起き上がって私に背中を向けた。


「……私、やっぱり千鶴さんとは、えっちできないですっ。ごめんなさいっ」


 それだけ告げて、はだけた服のまま寝室を出ていった。お風呂場に向かったようで、シャワーの音が聞こえてくる。私はどうすればいいのかもわからず、立ち尽くしたまま動けなかった。


〇 〇 〇 〇


 お母さん。ごめんなさい。ごめんなさい。幸せになってごめんなさい。私もう幸せになりません。絶対に幸せになりません。だから許してください。許してください。


 私はシャワーを浴びながら、涙を流します。シャワーの音が嗚咽を隠してくれるのは幸いでした。ですが千鶴さんは何かを察してしまったことでしょう。きっと私を幸せにしようとするはずです。それでも私は幸せになってはいけないのです。


 もしも千鶴さんと身も心も交われば、きっと私は心から幸せになってしまいます。それだけはだめなんです。お母さんのために、私は不幸でなければならないのです。


「ごめんなさい。お母さん。ごめんなさい。千鶴さん」


 本当に、ごめんなさい。

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