第18話 姉さんにロリコンだと思われました
女子中学生が恋人だってことを言い淀んでいると、桜さんが不満そうに頬を膨らませている。
「私のこと、言ってくれないんですか?」
うるうるした瞳でみつめてくるものだから、私はため息をはいてつげた。
「えーっと。私の恋人ね、中学生の女の子でさ」
「……えっ!?」
姉さんは目を見開いて、私をみつめている。
「とっても可愛いくてね。しかも私のこと大好きみたいで……」
桜さんはうんうんと大げさに頷いていた。
「しかも料理だってできるんだ。美味しいんだよ」
「えっ。料理までさせてるんだ……。それもう通い妻じゃん」
桜さんは顔を真っ赤にして、ぽこぽこと私を叩いてきた。なんで私を叩くの……? まぁ可愛い照れ隠しだから気にはしないけれど。
でも姉さんは乗り出していた体を引っ込めて、少し引き気味な態度で笑っていた。
「そ、それにしても千鶴がロリコンだったとはね……。で、でもお姉ちゃん全然気にしないからね? ちゃんと相手の子が合意してるのなら付き合うこと自体はいいと思うし……。あ、でもそういう行為はしちゃだめだよ?」
「……分かってます」
どうしてか桜さんはじとーっとした目で私をみつめてきている。そんなに信用ないかなぁ……。まぁ確かにお酒飲んだ時は結構やばいかもだけど。ちゅーねだるくらいだしね……。
できるだけお酒は飲まないようにしないとだ。警察に捕まらない為にも。
「ま、でもそれなりに人生楽しんでるみたいで良かったよ。それじゃ、そろそろ私は舞台の準備に行くから。じゃあね、千鶴」
「うん。じゃあね。姉さん」
姉さんが支払いを済ませて喫茶店を出ていくと、桜さんが物欲しそうな顔で飲みかけのオレンジジュースをみつめてきた。だから私は「飲む?」と問いかける。
すると桜さんは「飲みたいです」と顔を赤らめながら口にしていた。よほど喉が渇いていたのか、ごくごくと一瞬で飲んでしまう。飲み終わるとコップを凝視して、かと思うと自分の唇に触れていた。
「どうしたの?」
「……ロリコンさんの癖に気にしないんですね」
「ん?」
「……なんでもないです」
桜さんは肩を落とすと「ちょっとくらいは気にして欲しかったです」と意味深なことをつげていた。もしかして、間接キスとか気にしてるの……? 可愛い。やっぱりそういうところは中学生なんだなって思う。
「ふふっ。桜さん、可愛いね」
「い、いきなりなんですかっ……」
可愛いって言われるだけで、顔が真っ赤になるの、本当に可愛い。桜さんに恋をしているとは言えない私だけれど、正直結構ときめく。
だからこそ、魔法少女をやめて幸せになって欲しいなってなおさら思うんだけれど、願いが一つしか叶えられないのはあまりにももどかしい。何か手段があればいいんだけれど、私の頭では思い浮かばなかった。
お母さんの命を取るか、自分の幸せを取るか。そんな二者択一を桜さんは近い将来迫られることになる。簡単には答えの出せない難題だ。不安ではあるけれど、でもとりあえず今は、桜さんの彼女として楽しいデートをすることだけ考えよう。
「そろそろ喫茶店は出て、夕方になるまで街でぱーっとあそぼっか」
「そうですね。私、母子家庭だったのであまり遊べなくて。だから嬉しいです」
「カラオケでも行く?」
「はい!」
私はニコニコする桜さんと恋人つなぎをして喫茶店を出た。
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