ロンドン

あやめっちはロンドンで生まれた。


家の近くに、さよりちゃんっていう3つ年上の女の子、住んでる。


さよりちゃんは、あやめっちのこと大好きで、毎日、あやめっちに会いに家に来ている。


「あやめっちー!」

って言って、さよりちゃんは、あやめっちを優しくギュッと抱きしめている。


あやめっちも3つになって、さよりちゃんは小学1年生。あやめっちのお姉ちゃんの楓ちゃんは小学3年生。3人でお散歩に出かけるようになって、テムズ川沿いを歩いている。

さよりちゃんは、あやめっちの手をギュッと握って、引っ張っていってくれる。


あやめっちは空を飛んでるトリさんを見るの大好き。

トリさんたちは2羽で仲良く飛んでいたり、数羽できれいに列をなして飛んでいる。


さよりちゃんは、ちょっと歩くと、すぐ

「あやめっちー!」

って言って、あやめっちを抱きしめる。


あやめっちはパリに引っ越すことになった。

さよりちゃんは毎日、家に来て、あやめっちのことをずーっと抱きしめている。


あやめっちのママは、パリに引っ越す日のことをさよりちゃんに教えずに、当日朝にロンドンの空港に行った。そして、あやめっち家族は飛行機に乗ってパリに向かった。

さよりちゃんに教えると、きっと、いつまでも、あやめっちのことを抱きしめて離れないだろうなって思ったから。


あやめっちはパリで幼稚園に入った。

マーリアちゃんっていう女の子と仲良くなった。

マーリアちゃんはフランス人と日本人のハーフ。ママは日本人で、マーリアちゃんも日本語をしゃべる。


ある日、幼稚園で、あやめっちはマーリアちゃんに

「あやめっちの後ろに、いつも女の子いるよー」

って言われた。

「えっ?女の子?」

あやめっちは後ろを振り返ったけど、あやめっちには誰も見えない。


「あやめっちのことをいつも見つめてるよ」

「えー?ほんとー?」

「うんっ!なんだか、さびしそうにしてる」

「えー?どんな子?」

「日本人の小学3年生くらい...あっ、さよりちゃんだって...」

「えー?さよりちゃんなのー?」

「知ってる子?」

「ロンドンで、いつもいっしょにいてくれてた女の子...うわーん、さよりちゃん、ごめんねー」

「なんで?」

「パリに来る日を言わないで来ちゃったから...さよりちゃん、ごめんねー」

「さよりちゃん、いいよって言ってる」

「ほんと?」

「うん!大丈夫だって...これで、もうロンドンに帰るって」

「えー?さよりちゃん、ロンドンに帰っちゃうの?」

「さよりちゃん、あやめっちに手をふってるよ」

「えー?ほんと?」

あやめっちも後ろを向いて、さよりちゃんに手をふった。

「ちょっとちがう方向だけど、さよりちゃん笑ってる...バイバイ、あやめっちーって」









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