第144話 近況報告
討伐はトラブルなく終わった。
確かにモンスターの数が減っている。
前は死骸を守るのが大変だった。
SLEにお邪魔した。
「先輩、久しぶりですね」
迎えてくれたのは、後輩である
「ああ、色々と忙しくてな。調子はどうだ」
「もう接待が凄くて」
「そうなのか」
「魔石コーティング事業が色々な分野から引きがあって、仕事の大半を断ってます。それで引きのある会社が接待してくれるので、これがもうなんというか」
「飲まれるなよ」
「僕は所詮、雇われですからね。やらかすと首を斬られます。自分の実力は分かってます。社長の器じゃないってね」
「それが分かっていれば良い」
クレームがついた包丁は作ってないらしい。
「包丁ですか? あれは仕事としては美味しくないです。なんといっても美味しいのは公共事業ですね。橋の橋脚とか魔石コーティングしてます。錆や腐食に強いらしいです」
「公共事業か。賄賂は贈るなよ。捕まっても弁護しないぞ」
「法律を破るようなことはしません」
「思考入力OSはどうだ」
「試作品なら出来てます」
「そうか。OSで天下を取れるなんてな。夢のようだ」
「まだ天下を取れるとは限りません」
「そうだな油断は禁物だ」
SLEは問題ないな。
パラダイスサイバーの被害者に賠償金を払ってもお釣りが出るどころか、その何十倍も稼いでる。
続いてウルトラソフトウェアにお邪魔した。
「思考入力の関連機器は売れてます。ところでSLEとの合併話はほんとうですか?」
「そんな話はなかったが」
「まだ噂なんで、水面下で動いているのかも知れません」
じゃあ、そのうち打診がくるな。
SLEの名前はパラダイスサイバーで最悪になったから、名前を変えるのも良いかも知れない。
「パワードスーツと魔道具はどうなっている?」
「パワードスーツは駄目ですね。しょせんロマン武器です。工事現場とか肉体労働の現場にはぼちぼちと売れています。魔道具は魔力銀行の仕様変更が大変で、そっちに掛かり切りになってます。魔力銀行は大得意様なんで断れません」
まあ、そうなるよな。
思ってた通りだ。
次に魔力銀行に行った。
「魔力を1億円分買いたい」
「えっ、確認を取って参ります」
しばらく待たされて、偉そうな人が出て来た。
「
「売ってもらえるんだよな」
「それはもう」
祈りの像に魔力を移す。
女子銀行員の目が点になっていたのは面白い。
1億ぐらい、べつに珍しくないだろ。
だが、売る方はともかく買う方は珍しいのかなとも思った。
魔力を移すだけで大変だ。
だが、何かのために魔力は必要だ。
こういう機会をこれからは定期的に設けたい。
あと行く所は、
「どうだ?」
「何がどうだのだか、さっぱり分かりません」
「調子は?」
「報告書を上げてるよね。見てないの」
「見てるけど」
「忙しいのよ」
「ファンドのセールスは終わったのだろう」
「各方面から第2期の募集はまだかと矢の催促。こんな所で油を売っている暇があるなら、早く第3階層を解放して欲しいわ」
「ペースがあるんだ。命がけの仕事だから、ペースは崩したくない」
「でいつ頃から可能?」
「約40日後からかな」
「遅い!」
「いや、今が売り時ってのは分かるけど、焦るな。まだ第3階層だぞ。少なくても10階層まではやるつもりだ」
「仕方ないわね。別の手を考えましょう。ダンジョン産の素材の商品相場の開設よ」
「それは大ごとだな。魔力銀行並みに大変だと思う。
「人を使えばいいじゃない。ヘッドハンティングよ」
「じゃあ、ファンドの利益の何パーセントかはそっちの事業に出資しろよ。潰れても出資なら紙屑になって損するだけだ」
「火は被らない方向でということね。分かったわ」
ダンジョン産素材の商品相場ねぇ。
きっと冒険者協会が噛ませろと言って来るに違いない。
綱引きみたいな交渉が始まるんだろうな。
そんな仕事は御免だ。
そういうのは出来る人に任せよう。
ダンジョン素材が穀物並みになるとはな。
もっとも市場規模からすればあってもいい規模だ。
ただ、採れる素材がダンジョンやモンスターによって違う。
それに肉は貯蓄できないから商品相場には向かない。
毛皮とかになるんだろうな。
いや、最初は魔石からか。
これは共通規格みたいな物が簡単に作れる。
大きさで等級を区切ったりできる。
何にせよ、俺は一切関与しない。
好きにやるといいさ。
潰れてもファンドの業績はそんなに変わらないはずだ。
責任は
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