第145話 コンサートデート

 今日の討伐は休み。

 藤沢ふじさわとコンサートデート。

 サイボカロ歌手のコンサートだ。

 サイボカロとは思考入力で発声して、意思疎通とか歌ったりする。


 コンサートは普通の歌手のと変わりない。

 ただ、サイボカロは音域や声量、ビブラートなどどれも人間が出せるとは思えない領域だ。


 けっこう楽しめた。


「満足気ですね」

「うん、自分が作った製品がこうやって使われているのを見るとなんだが嬉しい」


 ペンライトも進化してる。

 思考入力で好きな色に光が出せる。

 こんな製品が出てるのだな。


 観客席が、歌のメロディに合わせて変わっていくのが面白い。

 盛り上がると真っ赤に染まったりする。

 バラードとかだと青に。

 でも違う感情を持つ人も一定数いて、ぽつぽつと違う色が混ざる。


 感情ペンライト。

 なかなか良い製品だ。


 さてと、息抜きは終りだ。

 寒川さむかわへの攻撃を考えよう。

 資料にあった汚職議員は5人。

 みんな大臣だ。


 よくもこういう人材が集まったなという感じだ。

 きっと寒川さむかわへ服従して甘い汁を吸っているに違いない。

 とりあえず、方針としては、賄賂を贈った側。

 企業の方をなんとかしないといけない。

 軍畑いくさばた区長から聞いた情報だと、どの企業もそんな資料は捏造だと言っているらしい。

 オリジナルを出しても、手書きのメモとかいつどこで会ったとかそういう資料が多い。

 賄賂の領収書などというものはないし、密約のメモも死んだ門沢かどさわさん物がほとんどだ。

 ただ、料亭の領収書とかは証拠になる。

 でもそれは会合があったというだけで賄賂の証拠にはならない。


 身隠しのマントも万能じゃない。

 忍び込むと言っても議員は用心しているだろうし、企業側も同じだ。

 どうやって突破口を開こう。


「先輩、スマイルですよ」

「悪い、コンサートが終わって良い気分だったのにな」

「ですよ」

「でも寒川さむかわは許せない」

「私だってそう思います。刺客がきて死にかけたんですから。あっちがそうならこっちも法すれすれを狙うべきです」


 そうだな。

 あっちは既に一線を踏み越えている。

 こっちだって。

 身隠しのマントを使って、盗聴器を仕掛けまくろう。

 きっと誰かがボロを出すに決まっている。


 盗聴器は法に違反してるがな。

 もっとも身隠しのマントで不法侵入しているから今更か。


 分からない盗聴器が必要だな。

 魔力駆動の魔道具だ。

 魔力を飛ばす設計なら、電波探知機には掛からない。

 ばれる危険性がぐっと減る。


 俺のネットワークライイングを組み合わせれば出来るはずだ。

 拾った魔力はサイボカロの技術で音声化する。


 いけそうだ。

 俺はウルトラソフトウェア社の開発担当者と会った。


「音声を拾って魔力を発信する魔道具を作れないか」

「魔道具に触ったかどうかの魔力回路は分析が終わってます。圧力を感知しているわけですから、感度を全開にすれば音も拾えるはずです。魔力として発信するのは簡単な回路です」

「よし、作ってくれ」

「ちなみに何に使うんですか?」

「政治家の汚職を暴く」

「おー、スパイ道具ですね。ロマンです」

「だが、今の話は忘れてくれ。迷惑が掛かると困るからな。俺は障害者ようの機器を注文したということにしておいてくれ」

「分かりました。この話は自動的に消滅するですね」


 1時間ほどで魔力駆動の盗聴器が100個完成した。

 さあ、忙しいぞ。


 軍畑いくさばた区長から貰った情報を元に、企業側の担当者の机や自宅に盗聴器を仕込む。


「【ネットワークライイング】」

『あー、君。この件はどうだったかな』


 サイボカロが盗聴された音声を流す。

 100の盗聴を全て録音するように機械をセットした。


 録音された盗聴データを全て解析するのは大変だな。

 うーん、そうだこうするか。

 会議の会話だと言って文字に起こしてもらう。

 こういうサービスをする会社はたくさんある。


 文字データになりさえすれば、検索掛けたり色々と出来る。

 金は上手く使わないとな。

 何も自分の手だけでやるのが正解じゃない。


 どうせならAIも使うか。

 違法性のある会話の箇所をAIに指摘して貰おう。

 賄賂のことでなくても良い。

 別件で逮捕できたら突破口になったりもするだろう。


 サイボカロのコンサートを見に行ったおかげで、魔力駆動の盗聴器が完成した。

 息抜きもたまには良いもんだ。

 別の視点が持てる。

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