第136話 移り行く日々

 今日の討伐は休み。

 拝島はいじまさんの戦車も壊れたからちょうど良い。


 ○○水産からジェットツナの刺身が届いた。

 ジェットツナはマグロのモンスターで、マグロの体にジェット水流を出す器官がある。

 そのスピードは200キロを超える。

 それが魔石コーティングされた船体にぶち当たり気絶して浮かび上がる。

 船がいるだけでマグロが手に入る漁法。

 なんて効率のいい漁法なんだ。

 魔石コーティングされてない船だと、たぶん海のもくずなのだろうな。


 ジェットツナは油がのっていて旨い。

 とろけるようだ。


 クロマグロより美味いかも知れん。

 もっともクロマグロは海にダンジョンができてからは口に入ることはなかったが。

 子供の頃、味わっただけだ。

 美化された昔の味より美味いと感じるのだから、ジョットツナは凄いな。


 街は選挙期間。

 相変わらず選挙カーが走り回っている。

 なんとなく時代の移り変わりを感じるよ。


 さて、今日はダンジョンのリフォームに他所のダンジョンに行くとするか。


「ようこそ」

「まずはダンジョンコアのリフォームからですね」


「お願いします。Fランクダンジョンなんて儲かりませんから、儲からないので後継ぎが誰もいなくて」

「ダンジョンをリフォームすると利点が5つあります。まずスタンピードが起こりません。そしてパラダイスサイバーの監視システムが出来て一定額が警察から貰えます。ポーションと魔力と転移罠が金を無限に生みます」

「分かってます。紹介してくれた人からどれだけ儲かるのか聞いてます」

「それではしばらくお待ち下さい」


 モンスターがあらかた討伐されたダンジョンを戦車でいく。

 こんなことができるようになったのは魔石コーティング弾が大きい。

 銃火器がモンスターに通用すればこんなもんだ。


 このダンジョンは主に爬虫類だな。

 トカゲみたいなのしか出て来ない。

 硬いウロコなんだが、魔石コーティング弾の敵じゃない。


 ラスボスまでは簡単に行けた。

 ラスボスはドラゴンみたいなトカゲだった。

 火を吹いても所詮はトカゲ。

 銃弾を浴びせたら簡単に討伐できた。


 ダンジョンコアをリフォームして作り変える。

 殺処分ロッカーの設置は追々だ。


 トカゲ肉はあまり人気がないそうだが、飼料とか、肥料とかとにかく使えるだろう。

 赤字にはならないはずだ。


「お疲れ様です。冷えたビールとつまみを用意しました」

「では頂きます」


 出された焼肉は知らない肉だった。


「鶏肉、あっ、トカゲ肉ですね」

「うちのダンジョンで採れた肉です」


 鶏肉みたいで美味いな。


「アピール次第では需要があるかもしれないですね」

「ええ、でも敬遠する人も多くて」

「宣伝するしかないですね」

「そうなんです。宣伝してブランド化を狙ってます。ブランド化するには宣伝が必要なので今までは手をこまねいてましたけど、これからは違います」

「有名になればいいですね」


 いい気分で、帰り道に就いた。

 特急の指定席に座り、ダンジョンで良い仕事をしたと嬉しくなる。

 突如、ナイフが俺の服に当たって火花を立てた。

 くそっ、こんな所で襲ってくるなよ。


 俺の服は魔石を織り込んである。

 特別製の服で良かったぜ。


 刺客は投げナイフを構えてる。

 ナイフが光を纏った。

 必殺技かな。

 服がない場所を狙われたら一大事だ。


「【リフォーム】、盾」


 電車の床が盾となる。

 念のために魔石コーティングも施す。

 投げナイフが盾に刺さった。


 くっ、魔石コーティングしてるんだぞ。

 あのナイフに纏った光が曲者なんだろうな。

 きっと、切れ味を強化しているに違いない。


「【リフォーム】、拘束」


 電車の床が変形して刺客を捕える。

 刺客はそれをナイフで切り刻んだ。

 やっぱりね。

 凄い切れ味だ。


「【リフォーム】、魔石パイルバンカー」


 アイテム鞄から魔石100個を取り出し、変形させて刺客まで伸ばす。

 刺客はその攻撃に当たり跳ね飛ばされた。

 どうやら気絶したようだ。

 魔石を変形させた糸で縛り、次の駅で警察に引き渡す。

 油断も隙もないな。


 ところで俺の行動がなんでばれた。

 ダンジョンのオーナーが漏らしたとは考えたくない。

 追跡系のスキルかな。

 それとも神託系とか。

 たぶんそんなところだろう。


 これからは襲われることを前提に考えないといけないな。

 仕事終わりにビールを飲んでいい気分になったのが台無しだ。


 帰ったらお土産のトカゲ肉で飲み直したいが、油断大敵だ。

 食うだけで我慢するか。

 祝杯を上げるのは寒川さむかわが失脚してからだ。

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