第134話 狙撃

『2時の方向にオーク型。4時の方向にウルフ型』」

「ひきつけて撃て」

『了解』


 手慣れた討伐風景だ。

 モンスターは銃弾の前に倒れた。


「死骸を砦まで運ぼう」


 俺は無線でそう声を掛けた。

 砦まで死骸を戦車でけん引する。

 砦の前に死骸を積み上げた。


「どう?」


 俺はバジャーのメンバーに話し掛けた。


「今のところモンスターは現れないですね」

「死骸があるからこれからわんさか来るぞ」

「気を引き締めます」


 砦から離れた。

 砦の様子はカメラ映像で監視してる。


 やっぱりモンスターが寄って来た。

 バジャーのメンバーが砦からライフルを撃ちまくる。

 今のところ平気だな。


 カメラにオーガが映った。


『オーガ来たぞ』

『これって平気なのか』

『とにかく撃ちまくれ』


 念の為、砦まで戦車を走らせる。

 砦に到着した時にはオーガは討伐されていた。

 まあ、オーガはでかい的だからな。

 撃ちまくれば大丈夫だ。

 ライフルなら100丁ほど弾を込めて砦の中に置いてある。

 撃つだけなら短い時間で発射できる。


「お疲れ。オーガ、どうだった?」

「思ったほど強敵じゃないですね。カイザーウルフの方が強敵かも」


 パーティメンバーは冷蔵庫から、ジュースを出して飲んでいた。

 こういう事が出来るだけでも砦はいいな。


「よし、10分後に討伐再開」


 おうと声が上がる。

 砦があると効率が違うな。

 モンスターも砦の死骸に引き寄せられるし。


 ライフルの装填も後方支援の人達がやってくれる。


 討伐が終わり、後方支援してるバジャーに話を聞く。


「1日やってみてどうだった?」

「オーガが来た時は焦りましたが、魔石弾のおかげで、なんとかなりました」

「どう出来そう?」

「なんとかなると思います」

「じゃあこれからもよろしく」

「ええ」


 重さ付与の依頼料が掛からなくなったのは良い。

 もっとも主に使っているのは魔石コーティング弾だがな。


 バジャーのメンバーにはフォークリフトの運転を追々頼むつもりだ。


 討伐が終わったので、事務所で事務仕事。

 そして、気分転換に街に繰り出した。


 発砲音がして、体が焼きごてを当てられたように熱くなった。

 くそっ、狙撃された。

 物陰に隠れて上級ポーションを飲む。

 弾丸が傷口から出てくる。

 それを見ると魔石コーティング弾だった。


 恨まれる心当たりならたくさんある。

 いままで敵対していた人にも家族はいる。

 逆恨みされている可能性もある。

 パラダイスサイバーの健康被害家族になるとその数は膨大だ。

 俺が平和ボケしていたということだろう。


藤沢ふじさわ、狙撃された。パーティメンバーに装備を着けるように言ってここまで来てくれ」


 俺達が装備してる物は全て魔石コーティングしてある。

 魔石コーティング弾も通らないだろう。


 ほどなくしてパーティメンバーが到着した。


「先輩を狙撃するなんて許せません。【マッピング】、いました。あのビルの屋上です」


「俺に任せてくれ」


 そう言って番田ばんださんが駆け出していった。

 狙撃は続く。

 だが、魔石コーティングされた装備は貫通しなかった。

 スマホが鳴る。


 番田ばんださんからだ。

 無事犯人を取り押さえたと言っている。


 俺達もそのビルの屋上に上がった。

 犯人は手足を折られてた。

 うおっ、番田ばんださんやり過ぎだ。


「何の恨みがあって俺を狙う」

寒川さむかわからの警告だ。俺は暗夜十人衆のうちのひとり。安心して暮らせると思うなよ」


 殺し屋は逮捕された。

 どうせ取り調べでは寒川さむかわの名前は出て来ないのだろうな。

 さっきのやり取りはとうぜん動画に撮った。

 だが、殺し屋が一人有罪になっても痛くも痒くもないのだろうな。


軍畑いくさばたさん、狙撃されました。脅しらしいですよ。あなたの所にも殺し屋が行くかも知れません」


 区長に電話で報告した。


『殺し屋の脅しに屈するぐらいなら、政治家はやってない。気をつけるがな。もっとも私が殺されても党は止まらない。弔い合戦なら選挙は楽勝だ。はっはっは』


 この事態を笑い飛ばせる胆力は見習いたい。


「選挙はどうですか?」

『第三セクターの大黒字が追い風になっている。ああいうのは大抵赤字になるものだからな』

「実績があると違いますね」

『雇用も1000人ほど増えた』


 選挙は大丈夫なようだ。

 もっとも過半数を握れなくても問題はない。

 区長さえいれば第三セクターは運用されていく。

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